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虚構の守り手 〜二つの日本の物語〜  作者: 扶桑かつみ


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二つの日本以外の国々

■中華人民共和国


 中華人民共和国は、大陸日本(大東亜人民共和国または東亜連邦共和国)を承認しない国家で、日本帝国の軍国主義者に不法占領された地域と定義し続けている。

 大陸日本も、中華民国を正統な中華国家と認め、中華人民共和国を認めていない。


 当然だが、両国はいまだに互いの主権を認めていないし、正式な国交も開いていない。

 交流も、冷戦時代初期の頃のように一時期以外は最悪の状態が続いている。

 大規模、小規模な武力衝突も頻発した。

 国境となる万里の長城辺りの境界線には、いまだに冷戦時代に匹敵する軍隊を並べあっている。


 同様に台湾(中華民国)も国家承認しておらず、東トルキスタン、チベットについても冷戦時代初期にソ連に言われて渋々認めただけで、事実上の対立状態が続いている。

 21世紀に入ってからは、「一つの中華」をスローガンにして旧清朝領域の統合という名の征服を目指している。


 近隣の日本やロシア(ソ連)など近隣諸国との関係も悪い事が非常に多く、近隣諸国の全てが敵という状態が常に続いている。

 2010年代半ば以後、近隣諸国との関係をさらに悪化させており、緊張状態が高まりつつある。



 国内の発展は、平穏だった場合よりも大きく遅れているとされる事が多いが、理由は以下の通りとされる。


 中華人民共和国は、建国時から旧日本により工業化や経済的発展の進んだ満州、台湾を持たないため、国内資産が少なく工業化も大きく遅れた状態でのスタートとなった。

 満州で資本主義を学んだ人材がいない点も大きなマイナスとなっている。

 また東トルキスタン(ウイグル)も建国時に援助の見返りにソ連に譲り、チベットも動乱中に国連が入り込み(緩衝地帯を欲した英国、インドの影響)、清国の時代に比べると国土面積は半分近くになっている。

 当然そこから得られた筈の地下資源もなくなり、国内資源の少なさは発展の足かせとなった。


 そして大陸日本との対立状態も、政治、軍事だけでなく様々な面でマイナスに働いた。


 また、1950年代の終わり頃からソ連と関係の悪い一党独裁の共産主義国として世界中から孤立・冷遇され、人材も亡命という形で一部が満州地域に流出している。


 「大躍進」では、史実以上に資金も技術もないのに無茶な工業化と産業転換を行おうとして、対外的に約一千万人、実数約五千万人とされる餓死者を出している。「文化大革命(文革)」においても推定約二千万人が粛正され、国内の文化財が多く破壊され国際非難を受ける。

 この情報のかなりが、大陸日本に命からがら亡命した共産中華国内の亡命者がもたらした。


 また文革時に、東側諸国とも完全に断交。

 国際的な孤立を深くしている。


 ソ連と対立が深くなると1970年代から西側寄りの姿勢を強め、頑迷だった毛沢東死去後には市場経済面でのみ改革解放路線に入る事でようやく経済、工業の発展が行われるようになった。



 経済開放後は、巨大な人口につられた欧米の資本進出が始まるが、近隣との不安定な状況もあるため、進出は共産中華側の思ったほど進まなかった。

 周恩来が訪問したほど一番期待した列島日本も、大陸日本の牽制はしたいが、感情的に共産中華に大陸日本が飲み込まれたくもないため、交流や投資が低調な状態が続いた。

 列島日本が大陸日本を庇うような行動に出たのは、「同じ日本人」という同族意識が強く働いた為、共産中華の働きかけは無駄だった。


 そして、1989年に発生した天安門事件で、列島日本などの冷淡な対応の長期化とその後の冷戦崩壊により国際的孤立状態が長引く。

 列島日本の投資と進出も、冷戦崩壊後は大陸日本に向くばかりとなった。

 先進各国の投資も、まずは投資し易い大陸日本や他のアジアに向かい、21世紀に入ってようやく共産中華への進出が本格化した。


 しかも国内では、陸で境界線を接する大陸日本との水面下での交流、謀略放送、宣伝工作などにより、共産党政権への疑問が華北地方を中心に根強く、内政の安定が低くなった事も海外の投資を遅らせた原因となっている。

 天安門事件はその象徴とされている。


 そして様々な理由により、共産中華政府は大陸日本を非常に憎んでいる。

 この事も、結果として国際評価を下げて海外からの投資を減少される要因の一つとなった。



 また、中華共産党自身も資金繰りに苦心し、建国後ずっと地方軍閥の勢力が大きいまま推移している。

 当然だが中央統制は独裁というには少し弱く、軍事力を楯にした地方(軍閥)の権力が強い。

 しかも地方では、この地域特有の極度の腐敗官僚と腐敗軍人が蔓延り、中央政府の足を引っ張る状況が建国後ずっと続いている。

 また政府や党はともかく、官僚は人民解放軍の統制ができておらず、政治と軍事が噛み合わない事も多々見られる。


 列島日本との関係は、1970〜80年代の十数年間を除いて希薄なまま推移している。

 列島日本は、大陸日本が自らの投資で発展して以後は、東南アジアやインドに生産拠点を求める。

 欧米資本の動きは日本よりましだが、経済原則に従い概ね列島日本と似た動きをとっている。


(※神の視点より:経済発展は史実の半分程度のペース。)


 21世紀初頭の中華人民共和国の総人口は11億人程度。

 21世紀に発展が約束されていると言われるも、発展が本格化するのは、2005年時点で最低で十年、最大で四半世紀は先と見られていた。

 その上、1970年代からの強引な人口抑止政策もあって、2012年には労働人口がピークを過ぎ、発展できないまま人口減少に傾く傾向を強く見せている。

 このため発展できないまま少子高齢化する最初の国になると言われている。


 しかも経済的にはインドに先を越されつつあり、ブラジル、メキシコなど他の途上国の台頭も始まって、近隣諸国との歴史的な根深い対立を考えると前途は明るいとは言えない。


 また、自らの中華第一主義(「一つの中国」主義)のため、満州、内蒙古東部を有する大陸日本(東亜連邦)と台湾にいる中華民国、東トルキスタンやチベットとの外交関係が極度に悪く、これも海外からの評価を低くさせる大きな要因となっている。




■中華民国


 中華民国(台湾)は、国共内戦に敗北した1950年以後は、連合軍が日本から取り上げた形の台湾島に本拠を置く。

 建国当初は、海峡が辛うじて自主独立を存在を維持させるだけの弱小国だった。


 共産中国の外交、内政の失敗と、大陸日本の存在により存続が続いたと言われる。

 だが、アメリカを中心とする西側全てが、長らく中華民国こそ唯一の中国としていた事が存続の最大の要因となった。


 特に西側の多くが、共産中国の核開発まで正統な中国として見る向きが強く、冷戦崩壊後は共産中国との関係から大陸日本(東亜連邦)と協調。「一つの中国」を国是にする共産中国と強く対立している。

 諸外国も、完全な自由主義国家となった大陸日本の存在もあって、共産中国との関係が微妙な国が多い。

 特に旧東側諸国は、冷戦崩壊後も共産中国に対して冷淡で、台湾との関係を結んでいる国もある。

 大陸日本と連携する事も非常に多い。


 列島日本と台湾の関係は、1970年代までは東側陣営の包囲という目的により親密だった。

 だが、結局はアメリカに追従した日本の共産中国承認と共に、国家間としての関係はほぼ断絶。

 逆に大陸日本と台湾の関係は、共産中国の国際承認以後大きく進み、現在でも共産中国への対抗上のため強く維持されている。



 台湾自身は、1980年代に自ら民主化。

 工業化と経済発展にも成功して、自力でも四半世紀先までは共産中国と対抗できている状況が続くとされている。

 大陸日本や東トルキスタンなどと合わせれば、共産中国が台湾島を軍靴で踏みつけることは事実上不可能というのが、国際的に一般的な見解となっている。


 現在では、国民の間でも中華民国ではなく「台湾国」として独立する方向が強くなっており、国際社会が「独立」を認めるのも時間の問題と見られている。




■朝鮮半島情勢


 日本人勢力分断の折りに、旧日本勢力側、いわゆる大陸日本の領土として取り込まれる。


 東亜動乱で朝鮮半島は大陸日本の出撃拠点、兵站拠点とされるも、主に朝鮮半島南部が米軍の爆撃で壊滅。

 都市は破壊され、社会インフラの多くも失われた。

 この時、米軍により、釜山が港湾部を中心にして原爆の洗礼を受けている。


 東亜動乱後の政治的副産物として、半島南部に大韓人民共和国(人民韓国)が成立。

 北部は朝鮮半島の民意としてそのまま大陸日本の領土として保持され、日本語圏への残留を望む朝鮮民族の民族自治国(高麗王国)とされた。


 建国後の共産韓国は、冷戦中は西側との緩衝地帯として大陸日本とソ連が相応の援助をするも、労働党による一党独裁、金一族による強権支配、軍部優先の軍国主義という歪んだ政府が全期間にわたり存続したため、国家として健全な発展ができなかった。


 それでも冷戦中は、主に大陸日本駐留軍が落とす駐留費と、大陸日本向けの米の輸出、そして大陸日本とソ連から同盟国価格で輸入される各種資源、東側各国からの援助・支援により国内経済と最低限の発展は保たれていた。


 ただしナショナリズムに少し走りすぎ、高麗王国では維持された漢字を自ら棄ててしまうなど、教育や発展に弊害となる政策も多く実施された。



 冷戦崩壊後は、いち早く民主化した大陸日本との関係を自ら絶ち、誰からの援助も受けないまま遅れた農業国として世界から取り残される。

 しかし、二つの日本に挟まれた地理条件のため地理的に完全に孤立しており、軍備増強に走るもそれが経済状態を日増しに悪化させる。


 1997年に発生した大規模な飢饉を契機として、ついに軍事クーデターという形で政変が発生。

 国を牛耳っていた金一族は国外に逃亡し、以前より少しばかり民主的な国家として再出発が始まっている。

 ただし、国連や近隣諸国からの援助機運は様々な要因により数年で霧散し、経済の停滞によるさらなる政変、軍国主義化が懸念されている。

 宗主国となる大陸日本からの支援は継続しているが、声が大きくなる一方の援助要請に大陸日本が辟易とするのが常となっている。


 また、冷戦崩壊後から大陸日本の民族自治国(高麗王国)との民族統合に向けての話し合いが継続されているが、今だ具体的な話にはなっていない。

 経済格差が大きすぎる事と、大陸日本側のコリアが大陸日本人化し過ぎているため、民意において別民族と言える状態になっているのが大きな原因とされる。

 また、大陸日本側の高麗王国では伝統階級が復活して、政治的に相容れにくいという要因も大きい。

 現時点では、最終的に高麗王国も完全独立して二つの国家になる可能性が高いと言われている。


 なお大韓民国(人民韓国)は世界で唯一の被爆国であり、その点での国際的知名度が冷戦時代から高く、東側によるアメリカ非難の宣伝材料とされ続けた。

 民主化後は、自ら国際宣伝を積極的に行い、原爆投下の日は国を挙げての祭りの様相を示し、主にアメリカとの賠償問題が日常化している。

 また二つの日本に対しても、戦災賠償を言い立てる事が、同じように日常化している。



(※共産韓国は、日本が全く支援しない韓国を金一族と労働党が支配しているような状態。)


 ちなみに、アメリカ主導の朝鮮民族による民主主義政府による仮政府は、1940年代後半に済州島に暫定政権を作ろうとした。

 しかし、二つの日本の分立と東亜動乱でうやむやとなり、戦争中の米ソの取引により立ち消えている。

 済州島は冷戦中はアメリカの国連委任統治領として軍事拠点化し、その後大韓民国に返還しようとしたが、自殺者すら出た住民の猛烈な反対運動があったため、米委任統治領のまま維持されている。

 連合軍から指導者として担ぎ上げられたイ・スンマンなどは、あまりにも現実と乖離した事しか言わない為、アメリカが政治的に排除する結果に終わった。





■第二次世界大戦後の欧州情勢

 (※我々の世界の視点から見ていく。)


 西側中欧・東欧諸国/

ドイツ(※統合ドイツと同規模)、オーストリア、「チェコ」、ギリシャ


 東側中欧・東欧諸国/

ポーランド、ハンガリー、「スロヴァキア」、ルーマニア、ブルガリア、(ユーゴスラヴィア、アルバニア)


 ドイツ(ドイツ連邦共和国)は、史実の東西統合後の国土を最初から保持。

 東西分裂はなく、東ドイツの辺りが西側の最前線となる。

 首都もベルリンのままで、冷戦時代は実質的にソ連にとって最も邪魔な存在となる。

 ただし、史実でポーランドなどの領土となった東プロイセンやシュレジェンは、完全に喪失している。


 チェコスロヴァキアは、米ソの政治的取引の結果民族自決という表面上のお題目のもとで、チェコとスロヴァキアに最初から分裂。

 それぞれ東西陣営に属する。

 分割線などは冷戦崩壊後のチェコとスロバキアに準じる。


 ドイツとチェコスロバキアの状況の変化によって東西分割ラインは大きく東進し、その分ソ連の防衛ラインが史実よりも数百キロメートルも後退している。

 結果として、極東(東アジア)に大きく食い込んでいる大陸日本を政治的に重視するようになる。


 また、ドイツ(東ドイツ)、チェコは東欧の工業力の要だったため、その分東側の工業力、技術力も低下している。

 しかし、人口、生産力の面では大陸日本が肩代わりしている。


 ただし大陸日本は質の面で東ドイツ、チェコを完全にカバー出来ないため、東側陣営の工業は史実より規模は少し大きいが質の面で少し劣っている。



 一方では、ドイツのオーデル・ナイセのラインと、チェコ、スロヴァキア国境が西側の最前線となるため、NATO(北大西洋条約機構)の欧州駐留軍もその地域に集中。

 自然、ドイツの役割が強まる。

  

 駐留するNATO軍も、史実のライン川駐留軍ではなくエルベ川駐留軍になる。

 駐留するのは、ドイツ以外だとアメリカ、イギリスのみ。

 ベネルクスやフランスは、コスト問題もあって本国待機。

 この辺りは史実と同じ。


 当然、欧州西側陣営の戦力は史実より大きく、西側に取られた分東側は戦力を都合2倍も失っている事になる。

 これによる戦力格差は、東ドイツ、チェコ合計で3個軍団に相当し、東側は差し引き6個軍団の戦力と数百キロメートルの縦深を失っている事になる。

 当然、ソ連国境に近づく。


 このため、ソ連は欧州正面で史実よりも守勢傾向が強くなり、ソ連極東の安全も保障する満州を得た東側で積極的な動きを取り、さらには列島日本の軍拡傾向が強まっている。

 逆に東欧駐留軍が減っているので、若干だが軍事費が削減できる。


 またドイツは、最初から統合された状態で戦後復興に入るので、その分国力も大きく国内的混乱も少ない。

 長い間西側第二位の大国として位置づけられる。

 日本に抜かれるのは、ニクソン・ショック以後になる。


 しかし、近隣諸国のドイツに対する警戒感は強まり、国力が大きくなったからと言って国際的地位に大きな変化はない。

 ドイツ自身もナチス時代はトラウマであり、自ら強く出ることはない。

 あくまでソ連の矢面に立つ国としてのスタンスを維持する。


 中欧、東欧情勢で史実との変化が強くなるのは冷戦崩壊後のことになる。


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