邪なる者の集まる川 序 六
いつものトリオで歩き出した
最終的にムフフとしか言わなくなってたし
巫女様は酔っ払いでもかなり楽な相手だと思う
「ナニをどれだけ呑んで昨日は
あんなになっちゃったんですか~?」
巫女様を煽っていこう
反省会に相棒は参加しないらしい
「……蒸留酒を土瓶で一本空けただけです」
味見したけど喉が焼けるほどでもないぞこれ……
「酒で煮立てた魚のスープには
土瓶で二本分入れました」
締めて三本分てことは相当な量だね…
うっわ…水じゃなく酒オンリーで煮たのかよ
二日酔いにはなってないけど
あーた、未だに酒臭いですよ…?
神官職が酒臭いと背徳的すぎる…
託宣とか頼まれたらどうすんのさ
酒の神絶対降りてきてろくなことにならん…
ちょっと見てみたいけど…
スープもぐいぐい飲んでたし
そりゃあそりゃあ…出来上がっちゃう訳です
「゛酒は呑んでも呑まれるな゛って
ありがたい異世界の言葉があるらしいんですよ
おねえさん…人前で酒飲んだこと
無かったみたいな感じだったからあんなに
なっちゃったんですかね?」
巫女様は真顔になる
まさか開き直るんじゃないだろうな…
「誰かと焚き火を囲んで飲む酒が
あんなに楽しいと思いませんでした
相手は呑めなくても自分は楽しかったです」
早く保護者のお兄さんに預けて
どこかに行きたい…
相手は一人でも楽しいって
言われちゃう相棒の対人能力を
ほめるべきなのか…
「ほら…ちょうど土瓶が空になって水筒が三人分は
増えたことだし良いじゃないか」
今の相棒のその言葉はなんか取って付けたようだし、予想の範囲内なんだよな……
「ムフフ…やっぱりあなたはわかっているねぇ…」
抱きつかれてるけどスッゲー
酒臭いし相棒は笑顔ひきつってるし…
……下世話かもしれんがお互いこんなのに
付き合わされてお嫁に行けるのカナー…
別れりゃ大丈夫か…うむ…別れたい…
ムフフってアブナイ笑いさえ無くなれば
引く手あまた なんじゃないかな
はぁ…これも下世話ってやつか…
こんなことを考えるようになったのも
やたら俗っぽくて変に強い巫女様のせいですね…
おう…?相棒は巫女様に抱きつかれた挙げ句
押し倒されてるじゃないか…
本当に二日酔いにはなってないんですよね?
参加したい…じゃない
まさか巫女様両方イケるってカミングアウト?
なんか寒気するしお互い目が
ヤバイからほっとこう…
俺は無言で歩き出した
しばらくして
振り返ると慌てて起き上がってついてきた
二人はお互い真っ赤だった
もらったお酒は申し訳無いけど
割ってもいいと思うぜ相棒…




