に
宏は目覚めた。
どうやらアパートの一室のようだ。そこから1時間宏はしばらく部屋のものを物色した。そして、自分がその世界では一人暮らしをしている高校生であること、そしてシングルマザーの母が難病を負っていることを知った。宏は自分が泣いていることに驚いた。一度も会ったことがない母のために涙していたのだ。宏は目を力一杯こすってから、地図を片手に学校へ行った。
学校につき、恐る恐る教室に入るとクラスの女子がひろしに向かって一言、おはようと言った。
宏は嬉しさと驚きが混じって、まともに返せなかった。どうやらこの世界での自分はかなりクラスに馴染んでいたらしい。そう思うと、ニヤケが止まらなかった。その数秒後、宏は飛び上がった。とても仲の良かった、中学校の頃の親友2人がいるのである。宏は頭が真っ白になって、急いで2人に駆け寄った。「お、おはよう……」宏がそういうと2人は目を丸くして、「ヨコ!?ヨコも来たのかよ!えっ、死んだってこと!?マジで?」と喚いた。周りの不審そうな目を感じて三人は揃って教室を出た。そして宏は、2人が同じ電車に乗っていてその電車が脱線して死んだことを知った。そして2人もあの男に会い、双子の兄弟という設定で同じ家にいたのだという。1人は天パで眼鏡の宮城、もう1人はデブでかなり抜けてる朝ちゃんだ。2人とも中学の頃からいつも一緒にいて、高校で友達のできなかった宏は通う学校が離れてしまっても、よく遊んでもらっていた。3人は誰も知らない世界で信頼できる相手を見つけて安堵したり。そして教室に戻りホームルームを終えると授業が始まった。数学の教科書を開けて3人は顔を見合わせた。高校生のものにもかかわらず簡単に二桁の掛け算の問題の解き方が大真面目に書いているのである。その後の授業も全て小学校でやったような内容なのである。3人は帰り道、この世界について話し合った。「どうもこの世界の住人は、めっちゃくちゃ頭が悪いらしいな。朝ちゃんでも偏差値70とかいくんじゃないか?」宏がそういうと宮城が「朝ちゃんはここでもギリ平均点くらいだろ」と朝ちゃんをいじる。そんな頭悪くないわ!と朝ちゃんがいつものように返すと3人は生まれ変わっても変わってない関係性に思わず笑ってしまった。そして、また明日、といつも通りの別れの挨拶をして宏はアパートに帰っていった。