異世界桃太郎 その7
眠っていても優しい光を感じ、朝が来たと知らせてくれる。
そして、頬を滑るように流れるそよ風、どこか懐かしさを思わせる草と土の香り。
まだ寝ていたい所だが、何かがおかしい。
そう、僕がいる所はおそらく外だ。そして体がまったくもって動かない。
仕方なく目を開けると、そこは雪国だった。もとい、土国だった。
そして僕はというと、顔から下は土の中だった。
普通なら気が動転して慌てる所だろうが、僕は大丈夫。そう、2度目だからね。
桃に閉じ込められた時に比べれば、顔は出てるし、周りも認識できる。
周りを見渡してふと思った。ポチがいない。
もし、ポチが一緒に埋まっていたら、ゴブリンの説得に失敗をしたと予想は出来る。
でも、ポチの姿はない。
もしかして真後ろにいるのかもしれないと思い、
「ポチ、ポチいるか?」
少し待つが返事はない、ただの屍のようだ。・・・もしかして死んでる?
えっっ~、やばいよ、この状況やばいよ。早くここから出ないと次は僕の番だ。
そう思い、必死に体を動かしたり、よじったりして、抜け出そうと頑張っている。
すろと、後ろから軽やかな足音と共に、ポチが僕を呼ぶ声がする。
「ボビィー」
ポチと呼んだ時に後頭部に衝撃が走った。理由は簡単、ポチに蹴られた。
蹴られたショックでポチと呼んだつもりがボビィーになった。どこぞの外タレを呼んでしまった。
「ダレ、オレノコトヨンダ?」
空からそんな声が聞こえたような気がした。
「あまり暴れないで下さい。半日かけてゴブリンに埋めさせたのに、抜け出されたら始めからやり直しになります。しばらくこのままでいて下さい」
この状況を作ったのはポチだと判明した。
なんとなく思っていたが、ポチは僕のこと主と言いながら、非道い扱いをする。
使えない上司にも敬意は払うが、見えないとこで攻撃するタイプみたいだ。
まあ、見えるとこでも攻撃してきたけどね。
とりあえず、この状況を説明してもらおうと思う。