異世界桃太郎 その6
素直に死を受け入れようとした時、ポチが咆哮する。
「ワウォ~ン」
その咆哮とともにポチが輝き出す。
「控え、控え、控えワウォ~ン。ここに倒れているお方をどなたと心得る、桃の国の王子、桃田桃太郎にございますぞ。頭が高い、控え、控えワウォ~ン」
その言葉を聞くと周りは静かになる。
だるい体を起こして見渡すと、ゴブリン達が平伏し、地に額をこすりつけている。
きれいな土下座が並んでいる。
後から聞いた話だと、ポチの輝きは神の印籠『桃の御光』で、その光をみると畏れおののき、身動きができなくなるらしい。ちなみに、桃の国は存在せず、桃田桃太郎は神様がつけた名前だ。
安直な名前に少し不満を覚える。もう少しひねって、梅田桃太郎とか、蜜柑桃太郎とかるだろう。桃なのに梅って、蜜柑ってというツッコミができるくらいのユーモアを持って欲しかった。
まあ、実際そんな名前をつけられても文句を言っていただろうけど。
ポチの方を見るとアイコンタクトしてくる。
会って半日も立たない、ましてや引っかき傷をたくさん付けられてる犬っころにアイコンタクトされても何が言いたいかわからない。首をひねっているとポチが近づき、
「今のこの状況と今後どうするかの説明をして下さい。
「僕が?僕よりもポチが適任だろ。面倒だし、今後のプランはよくわからない。ポチは何か考えているみたいだから、任せるよ」
ポチはため息をついて了承してくれた。
僕は安心したのか、それとも疲れからなのか、眠気が襲ってきた。
後で後悔するとは知らず、ポチに全部任せてその場で眠りについた。