異世界桃太郎 その4
早速ゴブリン爺さんを起こして説明しよう。
「お爺さん、起きて下さい。村に着きましたよ。お爺さん」
優しく声をかけると、
「ええ夢見てるから、もう少し寝かせ~」
寝ぼけているのかそんな事を言ってきた。
「えーっと、村に着くんですよ。なので、いろいろ説明をしたいし、聞きたいので起きて下さい」
「モリンとこれからええ事するから(怒)終わるまで待たんか。・・・グフェフェ」
ドスッ
「グウェッ」「ワン~ッッッンッ」
怒りのあまり、ポチの上で寝ているジジィを殴ってしまった。
ジジィは地面に落ち口から泡を吹き、ポチは咳き込み始めた。
ポチの背中をさすりながら謝った。
「ごめんごめん、これから面倒な事がおきるのに、暢気に淫夢見てるからつい手が出てしまった」
「ごめんごめんじゃないですよ、殴りたくなる気持ちもわかりますが、大事な村人ですよ。グウで殴るのでなく、パーで頬を叩いて下さい。こんなふうに」
そう言って頬を叩いてきた。いや、正確には引っ掻いてきた。
肉球のおかげで衝撃はほとんどないが、引っ掻かれた所はヒリヒリしている。
「いやいやポチ君、今のは叩くじゃなく引っ掻くと言うんですよ。叩くとはこういう事ですよ」
思いっきりポチの頬を叩いた。でも手応えはなかった。
後ろに飛んで衝撃を逃がしたみたいだ。
「主、引っ掻いたつもりはないのですが、所詮犬なので爪が出るのはしょうがないではないですか。そして、引っ掻くとはこういう事を言うんですよ」
爪をむき出しにし襲い掛かってきた。
さすがにまともにくらうとやばいので、横に飛んでかわして間合いをとった。
それからにらみ合い、戦いが始まった。
神様から身体強化されたが、所詮は子供の体。ポチの方がスピードも力も上だった。
僕の体はかすり傷が増えていく。所々、傷が深い箇所があり血が流れていた。
このままではやばいが、ポチも疲れてきたのか息が荒くなっている。
「ハァハァ、主、もう我慢が出来ません」
その言葉と共に、今までにないスピードで突進してきた。
あまりの速さにかわすことも出来ず、腕を交差し防御する。
引っ掻かれると思ったが、体当たりされて押し倒された。
「主の血いい匂い、ハァハァ、いただきます」
そう言って、僕の血を舐め始める。
「ああ、又か・・・」
小さく呟き、オレンジ色の空に浮かぶ小さな雲を見つめる。
1日に2度も汚されるなんて、もう立ち直れないかもしれない。
放心状態になって舐め回されていたら、ポチの動きが止まった。
周りが騒がしいことに気づき、見渡すと数十人のゴブリンに囲まれていた。