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Desire Game -2nd players-  作者: ユーキ生物
獣の章
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第一話 ポイント探知アプリ

 ・・・これは、いつかの記憶だ・・・


 薄暗く狭い部屋、オレはロープを巻かれ椅子に座らされていた・・・目の前には高圧的な警官・・・オレの言葉が気に入らなかったのか、ソイツはオレとソイツの間にある机を叩き、怒鳴る・・・


「お前の仕出かした事は、人として許されないことだっ!!」


 ・・・・・・あーあ・・・人間なんて・・・・・・





Desire Game -2nd players-

獣の章


第一話

ポイント探知アプリ


―――――社会で、世界で、上手く生きられない人へ―――――




 ・・・・・・ん?オレァいつの間に寝ちまってたんだ?


「どこだぁここは?」


 妙に硬ぇ所に寝ていたと思い身体を起こしてみれば、一面コンクリートの部屋にオレは寝ていたようだ・・・オレはいつの間に鉄格子の牢屋から石のそれに移されたんだ?それに服装も・・・拘留中は上下灰色のスウェットだったはずなのに、黄土色のTシャツとジーンズに・・・


「んだコイツぁ?」


 その枕元にあった見慣れないスマホを手に取ってボタンを押す・・・


「あ?『プレイヤー』、『アプリ』、『ポイント交換』・・・んだぁこりゃ?」


 意味わかんねぇぞ・・・つっても他に今俺が置かれてる状況がわかるモンもねぇみてぇだし・・・

 オレは『プレイヤー』のボタンを押す――――


名前    :稲葉いなば空海くうかい

星座    :獅子座

願い    :脱人間

経歴    :妊婦強姦魔

スキル   :肉食獣への変身(70)

ミッション :ゴールアプリの取得(100)

残りポイント:30


 コイツぁオレん事か・・・つーことぁオレ、肉食獣になれんのか?

 よくはわかんねぇけど、とりあえず虎をイメージして四足歩行になるように手を床に付こうとする―――――


「・・・・・・ガァ?」


 なんか身体がズッシリと重くなった様な・・・うぉ!?手が完全に獣に・・・縞模様がない小麦色の手・・・これぁライオンか?にしてはたてがみ感がねぇな・・・鏡とかねぇのか・・・まぁ、この爪で引っかかれたら人間ならたまったモンじゃねぇはず・・・つーか、体当たりでも十分じゃねぇか?


 いいねぇ、コイツで気に入らねぇヤツを・・・


 まぁ、とりあえずはここがどこかわかんねぇことには何ともなんねぇんだ、ひとまず人に戻ろう・・・戻れるよな?


 オレは二足歩行をイメージして立ち上がる・・・おぉ!!人間の手だ。どうやら戻れるみてぇだ・・・


 服を着てたが、こいつらは獣になってる時はどうなってんだ?

 ・・・考えるだけ野暮ってもんか・・・


「次は・・・『アプリ』か・・・」


 ボタンを押すも画面には戻るボタンしか現れなかった・・・なんなんだホント・・・


「いい加減にしろよ・・・『ポイント交換』はちゃんとあんだろうな・・・」


 ポイント交換のボタンを押すとそこにはアプリと武器のタグでネット通販みてぇな画面が出てきた・・・その中には、100ポイントのゴールアプリも・・・そういうことか・・・何となく繋がった・・・オレはなんかのゲームに参加させられてんのか・・・んで、ポイントを集めてこのゴールアプリってのを手に入れると・・・へへへ、誰が送り込んだか知らねぇけど、感謝だな、牢屋よりも数倍いいじゃねぇか。


「となると、最初に持ってる30ポイントをどうすっかだよな・・・」


 独りちる・・・普通に考えれば何にも使わずあと70ポイントを集めるべきだよな・・・70ポイントつまりは獣になるスキル分・・・スキルを持たなければオレァ、ゲームクリアしてたんだよな・・・何も変わることなく・・・・・・そうだな、職場の・・・工場の、オレなんかよりも数段頭のいい大卒とかの偉いヤツらも『先行投資』とか言ってバカ高ぇ機械を買って、数年でその投資を回収してんだよな・・・ここは知的に『先行投資』してみようか。


「問題は、何に投資をするか、だ。」


 学のねぇオレが賢い選択ができるかが肝心だろう。ミッションってヤツをクリアしねぇといけねぇみてぇだし、ポイントってのが重要みてぇだから、それ関係か・・・というより、ポイントってどうやって集めんだ?


「・・・お、コイツなんていいんじゃねぇか?」


 スマホをいじるオレの視界に入ったのは「ポイント探知」のアプリ


「必要ポイントは10・・・悪くない。」


 武器のタグを見るとナイフ、刀なんかの刃物や拳銃、ライフルなんかの銃火器、他にはパイプとか棒とか、毒なんてのもあったが、獣になれるオレには不要なものだ。ここはアプリに投資をすべきだろう。


「なに?このアプリの使用には『地図』アプリが必須・・・だと?」


 んだよ、詐欺くせぇな・・・

 「地図」アプリを探す・・・20ポイントか・・・まぁ、ちょうど30だし「ポイント探知」と合わせて交換しようか。


 交換をネット通販みたいに済ませるとオレは早速アプリを起動する。


「お?・・・へぇ・・・コイツは便利だ。」


 スマホの画面には地図。それはオレを中心に展開されているようで、オレが今いる位置には35の数字があった。試しに立ち上がって部屋の隅まで歩くと35の数字も部屋の隅まで移動する。人の位置がわかるだけでもかなりの性能なんじゃねぇのか?

 どうやらオレの所持するポイントは35みてぇだ・・・ん?35?どういうことだ・・・?

 ポイント交換をしたからオレは今ポイントを持っていない、なのに35つーことは・・・


「獣化のスキルが70・・・そういうことか。」


 オレのすべきことが見えてきた。どうにかして他のプレイヤーからポイントを奪うんだ。んで、そのポイントはそのスキルを取得する時の半分を得ることができる。つまりは強いやつから奪った方が早いが、奪うのに苦労すると・・・んなとこだろう。


「まずはどうやってポイントを奪うかだよな・・・」


 こればっかりはやってみないことにはわからねぇみてぇだから・・・スマホにそれっぽい機能はなさそうだし、スマホを壊したり・・・プレイヤーを殺したら、なんてことも考えられる。武器が手に入るくれぇだ。これは仲良しごっこじゃねぇはずだ。

 オレはとりあえず地図を拡大する。するとオレのいる位置からさほど遠くない位置に二つ数字が並んでいた。


「お、ちょうどいい。こいつらには実験台になってもらうとするか。」


 いきなりポイントのでけぇヤツは危険だ。殺してからポイントの取得は生きてないとできません、なんてなったら目も当てられねぇ。その点こいつらは2ポイントと17ポイント、元は4か5ポイントと34か35ポイント、明らかにスキルで俺の方が上を行くことがわかる。危険も低そうだし、万が一失っても被害の少ないポイントだろう。

 オレは部屋の扉を開ける。扉の先もコンクリートの廊下が広がるだけだったが、そんなことはどうでもいい。地図を見てそいつらの位置を確認するとオレは手を地に着く――――


 ・・・ソイツらの場所へ向かいながら思い出す・・・


 ―――――どうしてオレばかり―――――


 オレァやり場のない憤りの解消方法を見つけられなかった・・・その結果が牢屋生活だ・・・世間はオレを悪だと指さす。じゃあ、どうしろってんだよ・・・


 ・・・被害に遭った憤りをぶつけたら悪だなんて、オレァ、こんな社会で生きなきゃなんねぇのかよ・・・


「グググググ・・・」


 低い唸りが口から洩れる・・・力を持ったからだろうか・・・この力で今まで感じてた憤りを晴らそうと、オレが呪った社会の、世界の人々を蹂躙してやろうと心が躍った・・・




「唯さん・・・なんか唸り声が・・・」

「・・・大丈夫、離れないでね、日輪ひのわちゃん。」

「やっぱり私も武器を・・・」

「大丈夫、日輪ちゃんみたいな子供が武器を持つのは大人として看過できないの。」


 ―――――いた。女性が二人・・・一人は小柄で身なりの良い二十代くらいのヤツ、もう一人はもっと小柄で幼い、十代前半にも見える少女、底層区画スラム出身か?・・・そう判断するほどに少女の方は薄汚れて、ボロボロの服を着ている・・・何よりやせ細り、栄養が足りていない様にも見えた。2ポイントと17ポイントはどっちかなんてわかんねぇ、なら、どっちもるまでだ・・・今までみたいにな。先に拳銃を持っている大人の女の方だ。


 重厚な筋肉の身体を縮め、筋肉のバネを最大限活かす―――――


 ―――――ダッ!!


「―――――――ゴガァ!!」


「ひっ――――!!?」


 ―――――メキメキメキィ!!


 女の首に噛みつく、噛み付いて気付く、オレには大きな牙があったことを―――――


「唯さんっ!!?」


 少女が叫ぶ―――――その手にはスマホが―――――まずい――――


「―――――グゴァ!!」


 女をすぐに放し、少女に飛び掛かる―――――


「うっ!!――――あ、しまっ――――」


 オレがぶつかった衝撃で少女はスマホを落とす――――


「ガァ!!」

「――――――っ!!」


 オレは爪で少女の喉を掻き切った――――


 人の姿に戻りオレはスマホを確認する。「プレイヤー」の画面、一度0になった残りポイントの欄、そこに19の数字があった。つまりは他のプレイヤーを殺すことでポイントを得ることができると・・・オレは殺しまくればいいのか。


「へ、へへへ・・・」


 単純でいい。


 さて、殺した二人だが、ここは強姦殺人犯らしく・・・


 ――――ピチャ


 女の元へ歩き出すと足元には薄く水が張っていた。


「んだこりゃ?」


 その周辺には水が噴き出す穴が・・・そういや、地図で見た時、この建物には階段があったな・・・水が下から迫り上がるから上へ行けってことだろうか・・・獣は姿勢が低い故、水が張る状況は歓迎しない。ここは早めに上の階に避難した方がよさそうだな。

 そうなりゃ女どもに構ってる場合じゃない。5ポイントのスキルは何を願って、どんなスキルを得たか気にはなったが、水没したスマホを見て興味は削がれた。やり残したことはないと、オレは踵を返し、階段へと向かった。


動物ゾオン系・・・


どーも、ユーキ生物です。なんか書きながらふと脳裏を過りました。この括りだと本シリーズは9割超人系なんで分類するだけ無駄かと。自然系とか一番いないですよね・・・前作の樹のスキル「電人化」は半分くらい自然系ですかね。

まぁ、スキルを考える時は大体の場合、願いが先行しますから。空海みたいな人外願望がないと難しいですよね。


さて、2ndの第二章は「獣の章」ということで、いきなり前回のヒロイン唯が殺されました。そういう別の結末って私好きなんですよね。子供の頃からアニメとかドラマとか映画とか見て、別の展開を想像しては胸を膨らませ、でも実在はしないのでヤキモキしてました。いわゆる“推しカプ”がカップル成立しないときとか・・・そういう意味ではアドベンチャーゲームは私の欲求をかなり満たしてくれます。それ以上に自分で物語書けば望み通りのシーンが見られる、というのが物語を書いてる理由の一つでもあります。実際書いてみると上手く書けなかったりしてやっぱりヤキモキするんですけどね。

そんなこんなでスポットライトが当たるキャラは「復讐の章」とはだいぶ違います。前回あっさり死んでた人が活躍したり、(なお日輪は・・・)もしかしたら悠里が登場しないなんてことも・・・!?

というより今回は空海視点が多い訳ですけど、空海かなりの外道ですよね。この章を最初に思い付いた時は読んでいて気分悪くなんないかとか心配して筆頭没候補でした。ただ、中身を考えてる内にかなり好みの内容になったので採用しました。嫌気がさしても、空海に感情移入できなくてもお付き合いいただけますとDesire Gameらしい展開というか話が見られるかと。「世界で、社会で、上手く生きられない人へ」ですし、ご期待ください。


次回は1月12日の投稿を目指します。

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