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Desire Game -2nd players-  作者: ユーキ生物
復讐の章
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第五話 私はアナタを死なせない

第五話


「あの獣は危険だわ。これからのゲーム、アイツに怯えて動くより、先に討伐しましょう。」


 唯のミッションである宝を探しながら進んでいる時に、直志・・・直子はそう言い出した。


「ん、OK。これで二階の宝が登録されたわ。」


 この部屋には一階の様に大きな銅像が置いてあった。・・・そう、8頭身のクマ、腹筋バキバキに割れた細マッチョ、顔の骨格も、もはや人間・・・どちらかと言えばクマのボディペインティングした人間かもしれない。ソイツが両手を上げて「ガオー」なんて感じのポーズをとっていた。もう不気味過ぎて言葉が出てこない。その肩にメモリーカードが乗っていた。


「それで、獣退治だっけ?」

「えっ!?獣ってこの像のことじゃないの!?」

「悠里は黙ってて。・・・ったく・・・あたしたちを襲った獣に決まってるでしょ・・・」

「あ、唯ちゃん・・・ちゃんと聞いてたのね。」


 唯はメモリーチップと抜き出して直子に向き合う。


「あの獣・・・そもそも何だったのかしら・・・」


 ちなみに俺と唯は宝探しの途中にあった服に着替え、靴まで新しいものを履いている。サイズがぴったりのあたりに作為的なものしか感じないが・・・しかも俺の衣類は全て綿100%。チノパンもTシャツも、パーカーまでもが綿でできている。俺は溶接工かよ!ってツッコミをしたが解説なしでは唯ですらわかってはくれなかった。・・・そう、綿は化学繊維に比べて燃えにくい。そんな素材を選ぶとか気の回し方がおかしい。

 加えて、途中で手錠を外したらどうなるかの実験もした。でないと着替えられなかったから・・・結果はタイマーアプリでミッションのカウントを見たら外している間だけカウントが止まるだけだった。唯とはいくら知り合いとは言え着替えとかまで一緒って訳にはいかないからこの情報は収穫だった。

 それは置いておいて、今は獣のことだったよな・・・


「あの獣だけど、俺の炎に一切怯まずに襲い掛かって来た。あれはただの獣じゃない。」

「ふむ、獣を操るスキル、獣になるスキル・・・そんな感じのがありそうってことね。」

「あれ・・・サーベルタイガーじゃないかと···」

「サーベルタイガー・・・あぁ!確かに異様に犬歯大きかったわよね。命さんの言う通りかも知れない。」

「唯・・・犬歯って・・・」

「何よ悠里。」

「いや、別に。」


 これ以上喰いつくと唯の機嫌を損ねそうなので、ここは退いておく。


「・・・サーベルタイガーは太古の生物・・・もう絶滅している筈です。」

「炎の件、と絶滅生物の件・・・人の手が介入しているのは間違いなさそうね。ねぇ、直子さん。」

「そうね。だとすると、罠なんて設置してもかからないわよね。」

「・・・カメラで獣に何かする瞬間を探すなんて無理ですし・・・」

「まぁ、動きが速くて力が強い人間として対処すればいいだけよ。」

「唯さんの言う通りよ。そう考えると人と違って銃器を扱わない分楽よね。」

「何が相手でも、もう慈悲は与えない。俺が獣自体を焼き払う。」

「まぁ、そうよね。あたしのスキルじゃアリすら殺せないもの。」

「アリならスキルを使わないで踏んだ方が確実かと」

「悠里・・・そういうのいいから。」


 俺の横槍はウザったそうに捌かれる・・・それはさておき、唯の回復スキルじゃ、そうなるわな。


「ところで、直子さんと命さん、二人のスキルは?」

「私は、『延命』よ。致命傷とかを受けても死ぬことを先延ばしにできるわ。」

「えっと、わ、私は・・・『包囲』・・・って言っても、対象の相手を一定距離以上遠くに行かせないってだけで・・・」


 スキルは願いにリンクすると思ったんだけど・・・直子のスキルはあまり願いとリンクしてないのか・・・?それとも、失われた生命を助けたかった、ってことなのかな?一応医者だし。


「討伐って言っても攻撃手段が悠里の発火しかないんじゃ・・・」


 唯が困ったように唸る。


「スキル的にはそうだけど、それだけが攻撃の手段ではないでしょう。」


 ニヤリと直子が微笑む・・・その手には俺達を助けた時の麻酔銃が握られていた――――






「いました!この部屋から右手に進んで十字路三つ目を左に行った地点です!!」


 命さんがカメラを見て獣の姿を捉える――――


「行くぞ!!」

「OK!!」


 俺と直子が部屋を飛び出す―――その後ろを唯と命さんが続く―――

 さすがに運動性能が必要になると踏んで唯との手錠は外している。その分動きは格段に良くなる気がする(当社比)。


 俺の役割は簡単だ。獣への攻撃ポーズと唯と命さんの護衛。ただそれだけだった。なんせこの討伐作戦の要はこの二人のスキルなんだから―――――


「いた―――悠里!!」


 直子が獣を視界に捉え、俺に合図を送る――――


 俺は手を獣へ向ける――――


 ――――ゴウッ!!


 獣の周囲に炎を上げる――――!!


 これはただの攻撃のポーズ。直子の頼みで俺は獣に攻撃を加えない決まりになっていた――――


「ガゴォッ!!」


 獣が吠える――――!!


 ――――ダッ!!


 俺・唯・命さんは左へ、直子は右へ飛ぶ――――


 ――――バッ!!


 唯と命さんが俺の後ろにいることを確認し、俺は両手を広げる―――――


 ―――――ボッ―――ゴオオオオオオッ!!


 さっきのポーズとは段違いの火力で俺と二人を護るべく炎の壁を創る――――

 俺達に近付くと火達磨だ。ここから獣が取れる行動は二つ、逃亡するか、直子に攻撃するか――――

 逃亡を選択するなら命さんのスキルの出番だ。もし後者を選択するなら――――


「ガアッ!!」


 ――――獣は後者を選んだ。逃亡を選ばなければそうするしかないだろう。そりゃそうだ、片や炎の壁を越えた先の複数人、片やむき出しの女性・・・あからさまな誘導だったけど、誘導通りに獣は直子へ向かって走り出す――――


「ふっ―――!!」


 直子は獣の目の前に自らの左腕を差し出す――――以前俺が咄嗟に取った行動だ――――


 ―――――ミシミシィッ!!


「ぐっ!!」


 直子の骨が軋む音が響くが――――


 ――――パンッ!!パンッ!!パンッ!!パンッ!!


 直子は右腕で持っていた麻酔銃を獣に打ち込む――――俺達を助けてくれた時以上の弾数をその腹部に向けて――――――


「キャヒィィンッ!!」


 これには堅牢な皮膚を持つ獣も怯む――――

 このタイミングで俺は炎の壁を消す――――


「お願い!!唯―――!!」

「――――わかった!!」


 直子は噛まれた腕を唯に差し出し、唯はその腕を回復させる――――

 この間にも命さんは獣が逃げないようにスキルを発動させている―――――


「―――ふぅ!!ありがと、唯。もう大丈夫。」


 直子は回復した腕に――――杭を持つ―――


「麻酔は獣にも効くみたいね・・・」


 直子の足元には麻酔で自由が身体の自由が利かない獣が這っていた―――


 ――――ゴッ!!ゴッ!!


 その四肢を直子は杭で打ち付ける――――


「――――うっ!!」

「――――ひっ!!」


 痛々しい姿に唯と命さんは思わず顔を背けてしまう――――その時


「―――ッ――――がぁっ!!痛ぇ!!」


 獣が人間の男に変わっていた―――

 ずっと疑問だった獣の出所は人が変身した姿だったって訳か。


「アナタ、名前は?」


 直子が冷たい声で男に問いかける。


「ぐううううっ!!痛ぇ!!くそっ!!くそぉ!!」


 男は直子の声が聞こえていないみたいだ――――





「私の復讐ねがいのために、協力して頂戴。」


 獣を仕留める作戦を考えている時に、直子はそう俺たちに告げた。


「協力って・・・?」

「私は獅子座の男を探してるの。だから、闇雲に殺さないで、私の麻酔銃で行動不能にさせて欲しいの。」

「直子さん、そうは言っても攻撃手段のない私とか命さんに攻撃されたら・・・」

「だから、悠里は全力で二人を護って。それで、命さんは獣が逃げないようにして・・・」

「・・・でも獣に麻酔銃って効くのかしら?」

「多少は効くはずよ。そうしたら、私がこの杭で獣を打ち付けるわ」

「杭―――!?」

「そう、私のポイントで交換したの」

「何でそんなもの―――」


 このゲームで勝ち残るために必要とは思えない鉄の塊を見て皆が同じことを思い、唯がその疑問を口にする―――


「そんなの、願いのために決まってるじゃない」


 ――――即答。そうか、この人はそこまで・・・





 それを思い出した俺はようやく直子のスキルに合点がいった。


 ーーー『延命』のスキルは決して人を死から救うモノじゃないーーー


「直子さん。この人は話していた···獅子座の稲葉空海です!!」


 命さんが直子にそう告げるーーーー

 命さんは近くにいるプレイヤーのスマホ画面を盗み見、操作できるアプリを持っていた。定点カメラといいこの人は情報系のアプリに長けていた。


「そうか···覚悟しろよ。稲葉ぁ!!」

「痛ぇ!!な、なんなんだよぉ!!」


 直子は直志を隠さずに、怒りを顕にし―――その手にはワイヤーが握られていた――――


「――――ふっ―――」


 そのワイヤーを稲葉の首に巻き付け――――力いっぱいに締める―――直志の手からワイヤーを引いた際の血が出ようとお構いなしに締める―――


「―――っ!!―――っがぁっ!!」


 稲葉はもがくことしかできない――――手は杭で動かず、窒息に抗うことはできない。


「とりあえず黙ったか・・・だが、まだだ・・・まだ死なせない。」


 直志はワイヤーを縛る―――そして離されたその手には――――ナイフが握られていた――――


「――――っ!!?―――っ!!?」


 稲葉は声を出せずに直志の手に持つナイフを怯えた様に見つめる―――


「ーーーお前が犯した罪を悔いるといいーーー強姦殺人狂!!」


 ―――ドスッ!!


 ナイフの切っ先が稲葉の胸に突き刺さる――――致命傷なんてことは誰が見てもわかる刺し方・・・


「―――ぐっ!!ぐううううっ!!」


 稲葉の激痛に耐える声がコンクリートに反響する――――


「安心しろ、私のスキルは『延命』だ・・・致命傷を受けても死にはしない・・・いや、私がスキルを解除するまで死ねないと言った方がいいだろうか・・・」


 ―――――ズズズズズッ!!


 倒れた稲葉に馬乗りになった直志は、胸に突き刺したナイフをゆっくりと捻じりながら引く――――


「――――ぁっ!!――――ひっ!!?」

「―――――――私は、アナタを死なせない、死なせてなんかやるもんか・・・たっぷりと後悔させる時間と苦痛を与えてやる。」


 血塗れの二人―――直志は右手にナイフを持ち――――左手には血の塊を持っていた――――


「―――どうだい?自分の心臓を見た気分は?ーーー汚いだろう。」


 冷たく直志は問う――――


「―――――――――っ」


 稲葉の目には――――いや、全身から絶望が伝わる――――それもそのはず、自らの心臓が切り取られているのに、それを見ることができるのだから――――生きているのに、その鼓動は失われているのだから――――


「お前が与えた恐怖、屈辱、そして奪った生命いのち・・・これは、その、報いだ!!」


 直志は稲葉の臓器を取り出していく―――――


「――――お前の空いた体内には何を積めようか・・・そうだ、童話でも悪い狼は腹に石を詰められるじゃないか・・・石を積めようか・・・」

「や・・・やめっ・・・」


 そこから数時間、直志は稲葉の腕を、脚を切り取り、内臓の代わりに詰め、顔の肉を削ぎ、各部の骨を抜き、滅茶苦茶にした―――――

 ―――――そして俺はそれを見て、俺もいずれそれ以上の報いをヤツに与えてやろうと興奮で沸き立っていた。

 俺の手を唯が握っていたことにも気付かずに――――





Another view

泉 命


 ――――ズンッ!!ズンッ!!


「――――――っ!!―――――っ!!」


 声にならない叫びが響く―――――これが宮内さんの復讐・・・私にはその憎悪は理解できません・・・あまりの悍ましさに私は目を背け――――その場をひとまず立ち去ってしまいました。


「・・・・・・。」


 ―――――ガチャ、バタン。


 復讐現場から少し離れた小部屋に一人になる――――危険とも思っいましたが、惨殺現場を見たショックがあり、何も言わずに私は部屋へ入って行きました。


「・・・・・・ふぅ・・・。」


 少し落ち着いた私のスマホの画面が点灯している。何だろうか・・・


 ――――――『周囲に誰もいなければ「応答」のボタンを押すこと』


 ・・・どういうことでしょうか・・・よくはわかりませんが、誰もいないので画面下にあった「応答」のボタンを押してみます。

 ボタンを押すと画面にはスピーカーのマークが表示され何者かの声が発されました。どうやら通話が繋がったみたいですね。


 ――――――「泉命君・・・ボクはゲームのプレイヤーの一人、射手座の岩畑という者です。」


 岩畑・・・確か黒川さんが探している人・・・


 ――――――「そう警戒しないで下さい、ボクはアナタに害を与えるつもりななんてありません。」


 黒川さんが酷い人だと言っていた割には誠実というか、幼さの残る話し方をするんですね・・・


「・・・で、では、何のために・・・?」

「簡単です。ボクはアナタに協力を求めて連絡させてもらってます。」

「・・・き、協力、ですか・・・?」

「別に断ったところで恨んだりはしません。ただのプレイヤー同士に戻るだけです・・・ただ・・・」

「・・・ただ?」

「協力してもらえるのでしたら、アナタの夫、泉刻さんの情報をお教えしますよ・・・そうそう、泉刻さんはこのゲームに山羊座として参加してますよ。」

「――――!?」

「さらに、アナタのミッション、それをクリアすることも、きっとできるハズです。・・・重複星座・・・ココにいますよ。」


 刻が―――!?


「彼の行方とかもろもろを知りたければこれから送るメールのデータを受信して下さい。地図と来て欲しい場所を表示しますから・・・」

「待って――――刻は無事なの――――!?」


 ――――ブツッ!!


 肝心なことは訊けずに通話が切れてしまった・・・これは知りたければ来いということなんでしょうか・・・・・・仕方がない、それで皆さんが納得してくれるとは思いませんが、私は刻が―――――夫が何よりも優先すべきことだから――――ミッションとか、そんなことはもうどうでもいい――――そう思い、スマホを確認して部屋を出る――――




 ――――ギィ・・・


 三階に上がり、スマホに記されていた部屋の扉を開ける――――


「やぁ、待ってたよ。泉命さん。」


 中は照明のついていない暗い部屋でした・・・そこにはこの建物を映したモニターが並べてあり、その灯りがモニターの乗っている机に座る男を逆光の形で照らしています――――


「さて、ここに来たということは、余程知りたいんでしょうね。刻さんのことが。」

「・・・その通り、です。だから、刻に合わせて――――」

「そう焦らないでください。誰も合わせるとは言ってませんよ。」

「それじゃあ――――」


 まさか、騙された――――!?


「まぁ、まずはボクの話を聞いてください。」


 岩畑は私をなだめる・・・少しカッとなっていたかもしれない・・・


「ボクのスキルは『創造』のスキル。色々と条件はありますが、何でも作ることができます。例えば、このモニターとか、机とか、ね。それで、これはこの施設の定点カメラの記録を探ってみることができる装置、そしてこっちがプレイヤーの・・・正確にはスマホの位置を測位して記録する動線監視の記録・・・これを使えば刻さんがどこで、何をしていたか・・・が簡単に見ることができます。」


 部屋の中を動いて機材の説明をする岩畑さん・・・その手が無造作に散らばっているキーボードの一つを叩く――――するとモニターの一つの画面が変わり―――――刻と黒川さんの姿が映し出されていた――――




・・・あぁ、そうか・・・・・・今なら宮内さんの憎悪が・・・復讐心がわかった気がします・・・


「―――――――。」


 岩畑さんが私に協力して欲しいことを告げてきました。私はその依頼内容を聴いて――――首を縦に振りました。



どーも、ユーキ生物です。


「頑張って次回は1週間で投稿できるように」とかぬかしてましたが、先程この第五話ができて、こうして後書きを書いているのが投稿前日とか言う現状です。次回もたぶん二週間後かと思われます。申し訳ない。


さて、「本当は怖いイソップ童話」みたいなことになってましたね。プロットの時にはそこまで考えてませんでしたけど、グロを書くことなんてあんまりないからという理由でかなり時間をかけて書きました。私的にはこの作品はジャンル的にスプラッタのつもりはなかったのですが···人間の願いとか境遇への反発とか、そういったヒューマンドラマのつもりです。


そんな感じでいよいよクライマックスって感じになってきましたね。今後ともお願い致します。


次回は12月22日投稿予定です。

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