第三話 繋がれた手で
第三話
繋がれた手で
―――バシャ!バシャ!
―――ザバッ!ザバッ!
水が足首ほどまで上がってきて走り辛い・・・まぁ、ハイヒールの唯に合わせる問題でそこまで速くはないのだけど・・・
「悠里!あれ!!階段があったわ!!」
片手にスマホを持って地図を見ながら進んでいた唯が俺に告げる。
手錠で繋がれていると走る際に巻き上げる水がお互いに跳ねて鬱陶しかったが、それもだいぶ慣れてきた・・・おそらく唯も同じ気持ちだろう。
階段に辿り着いたことは命の面でも確かに安心だが、それよりも歩き難さとかからの解放がいの一番に頭に浮ぶーーーはずだった。
「靴とか服の替えがあればいいんだけどな・・・」
「そうね・・・ヒールじゃ、こうも歩いて、走ってが続くと辛いわ・・・・・・え?」
階段の登り口に何かがある・・・
「おい・・・あれって・・・」
階段に近付くとその姿がはっきりし始める・・・そこには中学生くらいだろうか、幼さの残る小柄な少女が横たわっていた。
「・・・死んでる・・・」
少女に外傷はなく、死因を想像することすらできない。
「これが本当に命がけのゲームだってことだろう。」
少女の遺体を道の脇へ移動し、俺たちは階段を進む。
階段を数段のぼると・・・
「・・・悠里・・・これ・・・」
唯は足元を見て俺に訴えかける・・・
「血・・・!?上の階からか・・・!?」
階段を流れて来る赤黒い液体・・・立て続けに物騒なことが続くもんだ・・・いや、階段は参加者が必ず通る、人が集まるんだ、確かにこうなることは理解できる・・・
「・・・行くぞ、唯。階段は危険だから銃は一応手に持っておけ。無理して撃たなくていい。何かがあれば俺が燃やす。」
手錠に繋がれ、片手で銃を撃っても素人で非力な女性である唯じゃあ反動とかで当たりはしないだろうが・・・
唯は片手に銃を持つ、そして俺はいつでも炎を起こせるように繋がれていない片手を前に構えながらゆっくりと血の流れる階段をあがって行く・・・
―――カチャカチャ・・・
心なしか繋がれた手錠が震えていた。そりゃ死体を見て、すぐに血が流れているのを見てじゃあ精神的に参るだろう・・・俺だって結構キている・・・
俺はその震える唯の手を俺の手錠で繋がれた方の手で掴んだ。片手が手錠で繋がれていようとも何もできない訳じゃない。こうして精神的に強くすることは手錠で繋がれていようとできる。
「悠里・・・」
「悪ぃな。こうも命の危機が迫っていると思うと俺も心細くてな・・・」
そういう意味では手錠で繋がれる乙女座が勝手知ったる唯で良かったと言えるかもな。これが見ず知らずの人だと強がることしかできないから。
―――コッ・・・コッ・・・
唯のヒールが静かに歩こうとしても音を立ててしまう。靴を脱げというのも足元に何があるかわからないから危険だろう。ここは仕方がない。
そうして階段を上に進んで行くとその血の量が増えていく・・・そして階段の一番上に横たわる人の姿が・・・
「ひっ・・・!!」
高校生くらいだろうか・・・さっきの女の子ほどではないが、まだ若い青年がそこに横たわり、血を流していた。
「酷い・・・」
「・・・・・・。」
周囲には誰もいない・・・階段を見つけ油断しているところをって所だろうか・・・それにしても・・・
「ねぇ、悠里?この傷跡・・・」
唯も傷跡に疑問を持ったみたいだ。青年の身体、その腕や肩、足に渡って出血があるが、その形は刺し傷が半円を描いている・・・まるで獣に噛まれたかの様に・・・さらに腹部は完全に噛み切られていて半円状に肉が無くなっている・・・
「何かの動物がこの建物内にいるってことよね?」
「参加者の殺し合う姿がこのゲームの目的かと思ってたんだけどなぁ・・・」
そもそも、本当に動物の仕業だろうか・・・そうだとすると獣の目的は狩り・・・食事なはずだ・・・それにしてはこの遺体はおかしい。
「なぁ唯。もし本当に動物がいるとして。人を殺すことだけをする動物がいると思うか?」
「・・・そうよね。縄張りに踏み込んで攻撃してきたとしても、なんか変よね。」
「人間の肉が不味かったとか?」
「随分グルメな野獣だこと・・・またこの階段を登って来たすぐってところが人間臭いし・・・」
俺が発火の能力を持ってるんだ。獣を操ったりそれ系のスキルを持っているプレイヤーがいても不思議じゃない・・・
しかも、さっきの少女とは死に方が誰が見ても違う。少女は外傷が見当たらなかったが、この青年は外傷が多く失血死と言われても違和感がない・・・殺しまわっている人が複数いると考えるのが妥当だろう・・・まずいな・・・俺が岩畑を殺す前に誰かに殺されてしまうかもしれない・・・急がないと・・・
――――グルルルルルル・・・
議論を交わし、思考を回していると、その答えが低い声で威嚇をして、俺達にヒタヒタと近寄って来た・・・
「本当に獣がいるとは・・・だけど、好都合!!」
獣なら俺にとっては相性がいい!!そう思い俺は威嚇のために炎を出す――――相手が獣ならこれで怯むだろう――――
―――ダッ!!
獣は炎を躱し俺達へ向かって走り出す――――
「え―――!?」
予想と反した行動に俺は呆気に取られ―――――その牙が俺に迫る――――
Another View 稲葉 空海
“ゴールアプリの取得”それが俺に与えられたミッション・・・ゴールアプリは100ポイント。スキルが70ポイントだから俺の持ちポイントは30.残りの70ポイントを稼がなくちゃならねぇ・・・ポイントは他のプレイヤーを殺すと、ソイツが持ってたスキルのポイントの半分が自分のポイントに加算されるって話らしい。要は殺しまくりゃぁ俺ぁこのスキルを持ったまま元の・・・いや、自由の世界に行けるらしい。面白れぇじゃねぇか・・・。とはいえ俺だって何も考えねぇバカじゃねぇ。俺が人間離れしたスキルを持っているように、他のプレイヤーも持っている・・・なら、仕掛けるタイミングは選ばなきゃならねぇ・・・そう思い俺は階段の上がった場所近くに潜んだ。ここなら二階に上って安心しているところを仕留められるはず――――へっ!早速来たみてぇだな・・・俺はスキルで獣の姿になる―――
「・・・ふぅ!!とりあえず一安心かな・・・」
若ぇ兄ちゃんだな・・・
―――ダッ!!
獣は身体を低くして走り出す――――誰もこのゲームに四足歩行の獣がいるなんて予想できやしねぇんだ。目線は高く、一瞬俺を認識するのが遅れる。その一瞬で俺ぁソイツを殺す―――
「ゴガァッ!!」
「――――え」
完全に隙を突いた―――兄ちゃんが俺を認識する前に俺はソイツの首に噛みついたーーー
「―――――つ―――――!!」
俺ぁ兄ちゃんを確実に仕留めるべく肩や脚まで噛み付き失血まで追い込んだ―――恨むんじゃねぇぞ。こっちだって命がけなんだよぉ・・・
スマホを確認するために一度その場を離れる・・・そして人の姿に戻りスマホを確認する。いきなり大当たりだったみたいだ。俺の残りポイントは50ポイント加算されていた。
50ポイントの加算ってことはコイツのスキルは100ポイントってことだよな・・・70で獣化っていうなら100はどんなスキルだったのか・・・んでもって、あの兄ちゃんは何を願ってそんなスキルを得たんだろうか・・・まぁ、俺には関係ねぇが。
「何かの動物がこの建物内にいるってことよね?」
「参加者の殺し合う姿がこのゲームの目的かと思ってたんだけどなぁ・・・」
お?そんなことを考えてる場合じゃねぇな。新しいお客が来たみてぇだ。
俺は再び獣の姿になる―――
どーも、ユーキ生物です。
・・・短っ!!こんなに短くなるとは・・・プロットミスですね。・・・そう思いプロットを見返すと序盤(一章周辺)の雑さが目立ちますね。私はプロットは手書き派なのでルーズリーフに書いてるのですが。1章は表裏一枚で終わってるのに終盤は片面に1話分という温度差・・・ちなみにこの復讐の章、1話と2話は2~3行しかないです。ほぼアドリブで書きました。3話から行数が増え始めているのですが、その分自由度が減って端的になってしまいますね・・・要改善です。
さて、1話の後書きで思い出せなかったことなのですが、2ndは各章に“~な人へ”というテーマを決めてます。復讐の章はそれが壮大なネタバレになってしまうので隠してますが。2章以降は冒頭にそれを示していく予定です。
次回は11月24日㈮投稿予定です。少し書き溜めができたので一週間での投稿にします。