第三話 目覚める悪魔
第三話
目覚める悪魔
―――――ザバ・・・ザバ・・・ザバ・・・
―――――リーン・・・リーン・・・
膝位まで上がった水位の中を私と智己君、そして智己君2.0は歩く・・・
「あ・・・あったぞ。階段だ。」
先頭を行く2.0から声がかかる。
「結構な水位だし、一度階段を上がって、休めるところで射手座を待とうか。」
「・・・そうですね。」
智己君から提案されましたが、正直水の中を歩くのは想像以上に体力を取られてしまい、智己君が言わなければ私から提案してました。
「・・・待て・・・階段の上から・・・血だなこれは・・・」
2.0が私達を手で制します。その先にある階段の上から赤い液体が落ちてきていました。
「・・・他のプレイヤーも考えることは一緒なわけか。」
「智己君のアプリで見た情報だと、階段はフロアに一つですから、人と遭遇しなくてはいけないプレイヤーがそのアプリを持っていれば・・・いえ、持っていなくても、ここで待ち伏せるのは効率を考えれば当然かと思います。」
恐らくはこの上に誰かが臨戦態勢で待っているのでしょう。私たちの間に緊張が走ります。
「おい、ポンコツ、さっきポイントが増えただろ、あれで武器を交換しろ。」
「お、おう・・・」
「・・・ナイフでいい。あんまり重いとオレの速度が活きねえ」
智己君がスマホを操作しナイフを呼び出します。どういう理屈で出現しているのかはわかりませんが、出てきたナイフを2.0に渡します。
「一番の負け筋としては、階段を上がった直後の狙撃だ。階段はポンコツが先頭で楯を使うぞ。」
「・・・ま、任せとけ。」
「上の地形がわからんからゆっくりだ。敵を確認し次第オレが楯の護衛範囲から抜けるから、お前は護りに徹していればいい。」
2.0が指示を出します・・・この人・・・生後数時間のくせに傲慢不遜というか・・・いえ、生後数時間だからこそ、なんですかね・・・
――――リーン・・・リーン・・・
歩くたびに私の髪留めに付いている鈴が鳴ります。さすがにこういった場面では外すべきなんでしょうか・・・
―――――そうか・・・やってみよう。
私はそれを思いつき階段を歩く中・・・スキルを人知れず発動させました。
まだ得体の知れないスキルですけど・・・「次元移動」・・・恐らく・・・
ピチャ・・・ピチャ・・・
ピチャ・・・ピチャ・・・
水に濡れた足音は二人分・・・それでも人影は三人分で階段を登ります。
「ググググ・・・」
階段の上には背の低い塊が蠢いていて・・・その足元には血の塊・・・髪の長さから辛うじて女性だったと推測できる死体が落ちていました。
「狙撃じゃなくて良かったとは思うが・・・これはこれで予想外だ。」
2.0がニヤリと不敵に笑います。
「いや、愛子さんのアプリで獣になるスキルがあることはわかってたはず・・・」
智己君が冷静に補足をします。
「・・・・・・。」
当然、私の声は彼らには聞こえないので何も言いません。
―――――次元移動
このスキルは相互的に干渉をできなくするスキルなのでしょう。三次元―――その存在・姿は残しつつも他のすべては違う次元に移動させる、それが今の状態。智己君達からは私は姿は見えても、お互いに触れることもできませんし、私の音を届けない様にもできます。つまりは何も影響を受けない存在になっているはずです。・・・そして、恐らくその視覚的存在も他次元に移動させることができるはずです。「そこにいるのに、それを証明できない」というスキルなのでしょう。これは私が望んだそのもののスキル。
「グゴゴゴゴゴ・・・」
外部の音は取り入れるようにスキルを発動させているので獣の声は聞こえます。でも獣は私に触れることすらできないでしょう。何というか、これはかなり便利なスキルですね。
「ゴガァ!!」
獣が走り出し楯を構える智己君へ飛び掛かります。
「くぅっ!!」
「ナイスだ、ポンコツ!!」
獣の体重を智己君が受け、一瞬の硬直が生まれたと思ったら、既に2.0の姿は消えていました。
なんというか、こうして別次元で見ているのは安心感もありますが、何というか疎外感というか・・・なんとも言えない感じがありますね・・・
「・・・死ね。」
獣の背後に移動していた2.0は先ほど手に入れたナイフで、そのノドを切り裂きました。
一瞬の攻防・・・2.0の身のこなしは鮮やかの一言しか出てこない動きでした。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・オレでも・・・やれた・・・」
智己君が獣の攻撃を防いだ楯を見つめ、何かを呟いています。
「・・・・・・。」
私は安全を確認して元の次元に戻ります。
「うわっ!!ふ、深堀さんっ!?」
「きゃっ・・・!!」
―――――コンッ!!・・・コン、コン・・・
「あっ!!・・・スマホが・・・」
急に存在感が増したからでしょうか、智己君が驚いて私の手に持っていたスマホを叩いてしまい、スマホが階段の下まで落ちてしまいました・・・
「深堀さん、ごめん、大丈夫だった?」
「あ、うん。私は平気です・・・でもスマホが・・・」
「ポンコツはホントにポンコツだな。・・・まぁ、スマホの方はどうせ防水とかの仕様になってるだろうから問題ないだろ。待ってっから、さっさと取ってきな。」
2.0がぶっきらぼうに言うので私はスマホを取りに登ってきた階段を降ります。
―――ザバ・・・ザバ・・・
――――リーン・・・リーン・・・
下の階は水位がかなり上がっていて腰に届くか、という水位の高さで相変わらず歩きいです。そんな中、私はスマホを探します。少し赤みがかってますが、水がほとんど透き通っているのが救いと言えば救いですね・・・
「・・・あ、ありました。」
階段を降りた突き当りの廊下の少し奥。曲がり角の部屋の前に私のスマホと思われる物体が沈んでいました。水の中というのに、随分遠くまで転がって行ったものです。
―――――?
スマホを手に取ると、少し先の部屋から人の気配がする気がしました。誰かいるのでしょうか・・・?
「・・・・・・。」
私はスキルで存在を消して、その部屋に入ります。・・・存在を消すと言っても別に透明人間になって壁を無視できるわけではなく、ただ存在する次元を変えただけなので、今、私がいる次元では当然水びたしですし、水圧で思い扉を開ける必要があるのですが。
―――――キィ
扉を開け、元の次元の視覚情報のみを干渉できるようにスキルを調整します。すると・・・
「・・・さて、どうしようか・・・」
中には机に乗っている二人の人が・・・一人は先ほどの言葉の主、30才くらいでしょうか、体格はそこそこの知的な雰囲気の男性、そしてもう一人はその人の視線の先で、寝ている男性、こちらは先ほどの男性よりやや若い・・・20代半ばから後半くらいの方。・・・これはどういった状況なんでしょうか。
「おや?君はいつ入ってきたのですか?」
私の視覚情報は元の次元にいるので気配はせずともその姿、影はあります。それに気付いたのか知的な男性は話しかけます。ここで無言なのもどうかと思うので、すぐに別次元に逃げる警戒はしつつ全ての存在を元の次元に戻します。
「あの・・・あなた方は・・・?」
「・・・このゲームで無闇に名乗ったりすると思うかい?」
「そうでしたね・・・。私は魚座の深堀といいます。射手座のプレイヤーを探しています。お二人が射手座と関係がないようでしたら私はただ去るだけにします。・・・射手座のプレイヤーにお心当たりはないですか?」
この人には下手な嘘は通じないことを直感で何となく察したので、直球で会話を進めるべきでしょう。
「射手座・・・この方のことですか。」
「・・・・・・。」
そう言ってこの方は寝ている方の男性を見ます。
まさかこの方が・・・
「・・・・・・どうしてこの人は寝ているんですか?」
「武装したこの方と鉢合わせたので、麻酔で寝ていただきました。」
「・・・殺さずに、寝かせたんですか。」
「まぁ、私はこれでも医師なんで、例え命懸けのゲームでも、無闇に人を殺めることは避けています。まぁ、不殺の誓いをしてる訳ではないですけどね。」
・・・この人のスキルは「延命」・・・そう考えると辻褄が合いますね・・・
―――――――「延命」・・・どうやったら殺せると思う?
―――――スゥ
私は息をする様に存在を別次元へと移動させ―――――
――――――ギュッ
男性の持っていたロープを手に取りこちらの次元へ引き込みます。
―――――リーン・・・リーン―――――
「―――――!?」
私の存在が突如として消えたからか、その手のロープが消えたからかはわかりかねますが、医師の男性は辺りを見回し警戒します。
まぁ、どれだけ警戒しようとも私を・・・いえ、この鈴の音すらも認識することはできないのですが。
もちろん認識できない訳ですから、ゆっくりと縄を首に巻き付けても気付きはしません。
「・・・いち、にーの、さんっ!!」
特に意味もなく合図をかけ―――――首に巻いた縄を引き絞るのと同時に存在を元の次元に戻す――――
――――――ギュッ!!
「――――っ!!?かっ――――!!?」
――――バタッ!!
男性は一切の防御行動を取ることができず首を勢いよく締め付けられ――――意識を失い、倒れてしましました。
締めるとは言ってもギリギリと締め付ける様にではなく、引き千切るように、瞬間的に、弾くように締めることで、非力な私でも意表を突くこともプラスして相手をショックで気絶させることはできます。
―――――意識がないんじゃスキルも使えないでしょう。
途中で起きられるのも厄介ですし、ここでトドメを刺しましょうか。
――――ゴソゴソ・・・
倒れた男性の懐を弄り何か武器はないか探すと――――
「ナイフ・・・まぁ、十分でしょう。」
見つけ出したのはナイフ・・・この人、殺さないとか言っておいて凶器を持っているのですから信用しない方がいいのでしょうね。
―――――ギュッ
何故でしょうか、この手に馴染む感じは・・・
――――――ドッ!!
体重を乗せてナイフを振り下ろすと――――――私は真っ赤に染まり―――――
――――――ドクンッ
あ・・・ヤバい・・・
Another View
岩畑 巧
「・・・・・・っ!!くっ・・・うううっっっ!!」
強烈な痛みで目が覚める――――
「あ、お目覚めですか?」
なんだコレ!?手!?手がメチャ痛い!!
「あああああああああっ!!」
余りの激痛にボクは手を確認すると―――――
「そんなに叫ばなくても・・・ほら、タコ・・・いえ、10本だからイカですか・・・イカなら水に落とされても大丈夫かもしれないじゃないですか・・・だから、アナタにも生きる可能性を残してみたんです。気に入ってもらえましたか?」
―――――その真っ赤に染まった手は、全ての指が縦に割られて10本の指の手になっていた。この悪魔の様に笑う女の言う様に、ボクの手はイカの様になってしまっていた。
「頑張ってイカの手に泳いで助けてもらってね。」
―――――リーン
―――――ドカッ!!・・・バシャンッ!!
鈴の音が響くとボクは悪魔に蹴り飛ばされ―――――水の中に落とされた。
―――――――痛い!!痛い!!痛い!!痛い!!痛い!!
手に更なる激痛が走る――――あまり水深は深くなく、すぐに底にぶつかる・・・足で立とうと思った時、ボクの脚が斬り落とされていることを知る―――――ご丁寧に止血処理までされていた。
「ガボボボボッ!!」
立てないので浮上しようと手でもがくが切り裂かれた指では水を掴むことができずに推進力を得ることができないだけでなく、その動作で更に手に激痛が走る―――――
「ゴッ・・・ゴボッ!!」
激痛で咽てしまい―――――ボクの意識は闇へと――――
どーも、ユーキ生物です。
この第三話、書いていてサブタイトルを「イカロス」にしようかと思いましたがさすがにネタ気味だったのでやめました。
存在の章は結構しっかりプロットが書いてあるので書くのにそこまで苦労しないかと踏んでいましたが、書きながら修正箇所というか、話の掘り方が甘いのが気になり軌道修正しながら書いているので結構ギリギリになってます。ちなみに後書きを書く前に本編のAnotherを書いていました。本日は4/5、投稿前日です。私生活も適度にワチャワチャしているのも相まってなかなか進みません。投稿ペースは2週間以上行かない様に頑張ります。また、きちんと軌道修正して書きたかった物語になるよう努めますので今後ともお願いします。
一応ですが頭の中の構成は毎日活発に考えてます。仕事中にも移動とかしてる時に今後の展開とか、ちょっとした企画とか。執筆の余裕ができたらお遊びイベントをやる予定です。ゴールデンウィークとかに投稿できたらいいかな、とか予定してます。
ちなみに、三話でミッションクリアする主人公は恐らくシリーズ最速ですよね。だからどうということはないのですが、最速記録には触れておこうと思います。中にはミッションクリアしない主人公もいるくらいですから結構すごいことですよね。まぁ、極端なこと言えば、私の匙加減なんですが。
次回は4月20日投稿予定です。




