第四話 初めての食事は至福です!
2017/5/7 本文と後書きのルビ、ステータスの一部項目の削除
彫像のように硬直したままの亜人をそのままに、転がっているフォレストウルフをインベントリへと収納していく。
通常の大きさの5体は無造作にインベントリへと収納したが、大型の個体は収納する前に鑑定を行う。
[名前]なし(Lv7)
[種族]魔物 狼獣種 《フォレストウルフマザー》
[性別]♀
[年齢]21歳
[状態]死亡
・・・ふむ、やはり通常のフォレストウルフとは違いましたか。上位種とでもいうのですかね?
生きていないと見える情報も減るようですし、失敗ですね・・・
その名前から別種である事と、先の戦闘状況から同一種からの進化もしくは突然変異での誕生ではないかと予想し、鑑定で得られる情報が今までよりも少ない事が、対象の状態によって変わると結論を出した。
「さて、片付けも終わりました。そろそろ武器を下して頂けませんか?色々とお話ししましょう!」
未だ彫像になっている2人へと振り向き、知っている限りの初めての笑顔を、敵意のない親しみを込めた声を上げる。
「にゃ!?そ、そうですね、ま、まずはお礼を。2人でも追い払うことは出来ましたが、結構な痛手を負う処でした。助太刀、感謝します。私は猫人族のマオと申します。こちらは…」
「ぼ、僕も同じく猫人族のナナキ、助けて頂き有難うございます。日も傾いてきていますので、話する前に野営の準備をしてしまいませんか?」
声を掛けられ時間を取り戻した2人が、戦闘態勢を解きお礼と名前を告げ、右手を体に添えて最敬礼の45度まで上体を倒し足は引かずに左手は体から少しだけ離す、変則的なボウ・アンド・スクレープの様なお辞儀をする。
「私はアリシア、おっしゃる通りまずは野営の準備が先ですね。ただわけあってこの身一つの旅ですのでお礼代わりと言っては何ですが、ご助力願えれば幸いです」
相手のお辞儀から和洋折衷であると判断し、変則的なボウ・アンド・スクレープを15度で返す。
本当ならば2人に対して鑑定を行いたいと思ったが、相手を鑑定する行為が失礼に当たったり、そもそも鑑定をされた側が、鑑定された事を察知される恐れがあるのかが分からないため、鑑定は行わない。
「もちろん、タダより高い物は無いですからね。ただフォレストウルフを一体下さい。素材はもちろんお返ししますが、せっかくの新鮮な肉を晩御飯にしたいと思います」
「それでしたら、水汲みや薪集めはこちらで行いますので、何体か解体して頂けませんか?必要ならば謝礼をといっても素材になってしまいますがお渡しします」
ナナキの申し出に、せっかくならばとアリシアが申し出る。
「それならば、解体は私が行おう。野営準備の間に、先の5体でいかが?。謝礼はもちろんいらぬ。アリシア殿は薪集めとかまどをお願いします。ナナキさ・・・ナナキはそのほかの準備と水を頼む」
「もう、また様をつけそうになったねマオ?最近はなれたと思ったけど、気を付けてよ!」
そのやり取りから訳在りだと察し、解体を頼むのは先のとは別の、初期の頃の損傷が激しい物をお願いし各自役割をこなす。
薪や柴を集め、周囲の野営跡から手頃な石を集めて簡単な石組のかまどを作る。火を起こすのに原始的なやり方をするか迷ったかが、『身体変更』のスキルで指を火打ちにして火を起こす。
ナナキは荷物から寝袋替わりの毛布や、かまどの天板となる金網、鍋などを取り出す。また取り出した木桶に何やら呪文を唱え水をためていく。魔法のようだ。
マオの方も解体を始め、血抜きや皮と肉を分けたり、肉と骨を分けたりしている。不要な内臓や血液は薪集めに出る前に、その身体能力を生かしアリシアが手早くほった30cmほどの深さの穴に捨てていく。またマオも要所で呪文を唱え魔法で水を発生させていく。
アリシアの作業が一番早く終わったため、ナイフを借りてマオに教わりながら解体を行い、解体の仕方を学んでいくが、元の世界の色々な知識をデータとして持っており亜人となった今でもほとんど失わない機械特有の精密な動きで失敗もなく解体しマオを驚かせる。
ナナキの方も捌き終わった肉を順次使い、串焼きと芋や野菜を使った簡単なスープを作り、残った肉や素材はアリシアがストレージに入れ、不要物を入れた穴を埋めて夕食にする。
「アリシア殿は解体は初めてと言いつつ、見ただけで完璧にこなしますね。それも私よりも早く一流の解体師のように正確に様は恐れ入りました」
「それは私の種族特有のなせる業ですよ。それにマオさんの解体が正確な事もありましたから」
「さっすが、その身一つでしかもこの森の中に入るだけはありますね。あ、スープもできましたし肉も焼けましよ、さっそく食べましょう」
最初は少々警戒というか怯えられていたような印象があったが、野営準備や解体作業を終えた頃にはすっかり打ち解けていた。
「はふ、はふ、ちょっと固いですが、美味しいですね。塩味だけでこれならちゃんとした調味料でかなりの味になるかと。スープの方も味付けは塩だけですが使われた素材が良いスパイスになって美味しいです」
データとしてうまみ成分の配合からの味の良し悪しは持っていたが、データではなく感覚として味に初めて触れ、アリシアの顔は見てるだけでも幸せを感じるほど至福の笑顔というか、性的な快楽を得た時のような顔になっていた。
「それはよかった、普段は値が張るからと塩はあまり使わないのですが、今回はお礼もかねて奮発したのでそこまで喜んでもらえてよかったです」
串焼きは軽く塩を振っただけで、肉質も固めではあるが、適した部位を選んで焼いているため中々の味である。
スープも野菜の味がよく絡み、筋張った肉を入れよく煮込んであるため軟らかく、こちらもかなり美味しく仕上がっている。
食べながらなので簡単な会話になったが、味付けの話により調味料は栽培地からの輸送コストなどもあり中世ヨーロッパほどではないが湖沼は高く、塩も一般的ではあるが旅路でならば使用を控えるほどには値が張るようだ。またフォレストウルフの肉についても、単体での強さもそこそこあり群での遭遇が多い事から普通ならば追い払うのが一般的で、そこそこの強さがあるパーティーでなければ旅路では狩らないためちょっとした贅沢品なのだそうだ。町などでは集団での狩などで普及されてはいるが、やはり一般的な肉よりかは少し高いらしい。日本でいえば輸入肉よりは気持ち高い程度の、高級でもないノーブランドの国産肉程度の位置づけらしい。
「ところでアリシア殿、貴方は渡り人ではありませんか?」
食べ終わった頃に、真剣な顔したマオがかなり確信したといった面持で聞いてくる。
ナナキも真剣な顔になり見つめてくる。
「ふむ?そう結論づけた理由を聞いてもよろしいですか?」
『渡り人』とは何かわからなかったが、何か特別な印象を受けてまずはなぜそう思い至ったかを問う。
[名前]アリシア(Lv6)
[性別]なし
[年齢]15歳
[種族]亜人種 機械生命体
[状態]健康
[能力値]
HP:■■■■■ MP:■□□□□
Str:Agi:Vit:Int:Dex:Luk:高い
[固定スキル]
・ステータス確認
・インベントリ(空間極大・状態保存・魂保存不可)
・自動翻訳
[スキル]
・鑑定
・解析
・並列思考
・探知
・探査
・自己修復
・身体変更
・魔力変換
・状態異常耐性
・状態異常無効
・物理耐性
・魔法属性耐性
・魔法属性無効
・聞き耳
・遠視
・格闘
・二段飛び
・三角跳び
・バックアタック
――New――
・解体