2、僕の憂鬱
行きたくもない学校。当然面白くもなく、一番後ろの席で居眠りばかりしている日々が続いている。
季節は急速に暑さを増し、鬱陶しい雨が、連日降っている。
重い足取りで校舎に向かう僕の横を、何故か当たり前のように星池は並んで歩いている。
一度、はっきりさせておかなければならない。
僕はそう思いながら、坂道を上って行く。
「お前さ、なんでいつも、僕のそばにいるわけ?」
「ええ。何でー? 一緒の学校通ってんだもん。こんなの普通でしょう」
「ちげーだろ。お前、確か文系だろ? 僕は理系。学ぶべきものが違うし、取っているコマだって全然違うだろ」
「そんなことないよー。だって落ち着いて勉強したいでしょ。家じゃ集中できないから、自習室使いたいって、誰でも考えるでしょ? ロクちゃんだって、やっているの見たよ」
それにしたって、偶然すぎないかって言いたかったけど、周囲の奴らに見られているような気がして僕はムッとしたまま、足を速めた。
高校のクラスメイトだったというだけで、慣れなしくしてくるんだよ。美人ならともかく、よりによって何でクラス一のブスなんだ? 冗談じゃない。
無性に腹が立った。
俺の心情を知らない星池は一人でバカみたいに、ニコニコとして一緒に歩いてくる。
それがまた、僕の苛立ちを煽った。
だから、こういうことをされると、当然、不機嫌な顔になってしまう。
これは必然だ。僕は悪くない。
「また、そんなの食べて」
僕は少し、遅めの昼食を摂っていた。
ハンバーガーをかぶりついている星池が現れ、さっと目の前にお弁当箱を広げだす。
「明日から、私が栄養を考えて作ってきてあげるわ。こう見えても栄養師を目指そうって考えている子だから、味には自信あるのよ」
栄養士って? やっぱこいつバカだ。もろ理系じゃねーか。冷ややかな目を向ける僕に、星池は嬉しそうに、食べて食べてと言う。
仕方なく僕は、揚げ物をを渋々口に放り込む。
美味い。
「こんな所で食っていたら、変な目で見られるだろう」
僕は弁当箱を、突っ返しきつく言う。
「あっそうか。ごめん。でも、明日からは絶対に持ってくるから、昼の心配はいらないからね」
「いらねーよ」
「そんなことを言わないでよー」
「うるさい。ブス」
僕の声が、フロアー中に響き、刺すような視線が集まる。
「あははは」
星池が、それ以上に大きな笑い声を立て始める。
「嫌だな、ロクちゃん声が大きすぎだよ。冗談きついんだから、周りの人が驚いちゃうでしょ?」
何だこいつ?
「じゃ、私行くね」
何もなかった様に立ち去る星池を見て、僕は無性に腹が立った。
だけど、僕は僕なりに気を使ってやった。
「お前さ、栄養士目指すなら理系じゃねぇ?」
「うんそうだよ」
何なんだその笑み?
「知っているなら、何でさっき言わなかったんだよ」
「ええだって―、高校時はガチガチに文系狙いだったし、それ、ロクちゃんが知っていてくれたのが嬉しかったんだもん。デヘヘヘ。ここにきて、栄養士も有かなって、路線変更させていただきました」
ウワ~止めてくれ。
僕は心から本気でそう思った。
「ブスが、敬礼なんかしてんじゃねーよ。バーカ」
ここまで言われても、星池は変な笑い方をして喜んだ。




