10、失望
朝、目が覚めると、横に裸のみのりが寝ていた。
「おはよう」
はにかむように、みのりが言う。
僕の記憶は曖昧で、どうしてこんな格好になっているのか分からずにいた。
躰を動かすと、頭が酷く痛んだ。
「シャワー浴びて来るね」
そう言ってみのりがバスルームに消えて行くと、僕は仰向けになって考えこむ。
秋川の顔がチラつく。
あいつが、あんなこと言うからいけないんだ。僕は悪くない。
シャワーを浴び終わったみのりが、心配そうに顔を覗き込む。
「大丈夫?」
大丈夫なわけないだろ。
言ってやりたいのを押さえて、僕は顔を顰めてみせる。
「ロクちゃん、そろそろここ出ないと。起き上れる?」
「無理」
「そんなこと言わないで、ほら頑張って。シャワーを浴びたらすっきりするんじゃない? 浴びてきなよ」
理性より先に躰が反応し始め、僕は力任せにみのりを押し倒し唇を重ね合わせる。
無我夢中だった。
実りの気持ちなど、二の次で、僕は感情のまま中へと入って行った。
みのりが着替えを済まし、髪を整えているのを、僕はベッドからじっと見ていた。
「ロクちゃんも早く着替えなよ。延長料金取られちゃうよ」
みのりが、やたら大人びて見えた。
煙草に火を点け、煙を天井に向けて吐き出す。
その自分の仕草が、少しだけ気を大きくさせる。
「お前さ、そんなに簡単に体を許してんじゃねーよ」
僕は、みのりの前では格好つけていたかったんだ。初めてなんて、絶対に思われたくないって。
「どうして……? どうしてそんなこと言うの?」
目にいっぱいの涙を溜めて、みのりが振り返る。
いつもなら、えへへと笑ってそうだよねと頷いてくれる。今日もそれを期待していた。
そしたら僕は、仕方がないから、付き合ってやるよと言うつもりだった。
「ブスが泣いてんじゃねーよ」
僕は、怒鳴っていた。
「ロクちゃんだからだよ。ロクちゃんだから許したんだよ。どうして、そんなのが分かんないの? ずっと、ずっと好きだったのに……。ロクちゃんのバカ」
みのりが部屋を飛び出して行き、僕のくだらないプライドがむき出しになる。
「お前みたいなブスは、一生こんなことないと思ったから、抱いてやったんだ。僕に感謝しろよ。一応、女扱いしてやったんだからな」
その言葉は、勢いよく閉まるドアに跳ね返された。
どこまでもサイテー男の陸朗です。




