驚いて下さい。
昼寝から目が覚めて隣に君がいないことに気付く。とっさに手でベッドの上を探る。体重の軽い君がベッドにへこみを作らないことはわかってはいるがもう残っていない温もりを探す。そして、他の部屋を探してみても君はいない。当然のことながら玄関には僕の靴しかない。
君を探しに久しぶりの外へ出る。そして、君の居そうな場所を探す。いつもこういうときに君と過ごした時間を思い出す。普段は全然構ってくれない君が僕が仕事のしているときに限って顔を近づけてくること思い出す。
気付けば君が居るはずのない橋の上まで来ていた。遠くに見える着飾った街の明かりがかすかににじむ。そして、僕は部屋に帰る。
君が居ない部屋で僕はどこか知らない場所にいるような恥ずかしさを感じ何かすることが欲しくて仕事しようとした。手に着かないことはわかっている。そして、いつも鍵がしまっているドアから入ってくる音を思い浮かべる。そのうち現実の音かわからなくなってくる。
一つだけ本当の音がした。ドアの下に着いている四角の君専用のドアが開く。四足歩行の足音は独特だ。部屋に入ってきた君は仕事をしている僕に気付いた。
そして、いつものように僕の膝の上で「にゃー」と鳴いた。