12月31日 プロローグ
12月31日午後23:30
少年は神社の境内にいた。
この少年は生きる事とこんなつまらない世界に絶望していた。
両親には常に暴力を振るわれ、少年の通っている学校ではクラスメート達に忌み嫌われ、散々な虐めを受けてきた。
もしかしたら俺は呪われた子なのかもしれない。誰にも愛されないという呪いをかけたのかもしれない。
神社の境内に来た理由も友達がいなくて、1人で新年を迎えるにはぴったりの場所かなと思ったからだ。
あと30分で新しい年が来る。
どうせ来年も今までと変わらないだろう。いつも通り平凡で刺激のないただただ退屈な1年になるのだろう。
でも、もしも神様がいるならこの平凡で退屈な世界を壊してもっと刺激のある世界にして欲しいなぁ…とか思ったりする自分もいた。
12月31日午後23:45
少年は絶望した。
俺を虐めていたクラスメート達が何故かここに来たからだ。
俺はそいつらを見つけたのですぐに近くの茂みに隠れたので多分見つかってはいないと思う。
しかし、1年の最後の日だというのに何故こんなことが起きるのだろうか?
散々な虐めを受けて来て、最後の日ぐらい1人でいたかったのに・・・ もし神様がいたらそいつを殴ってやりたい。
そんなことを思いながら俺は茂みの中にいた。
12月31日午後23:40
とある場所にて、
「異世界の存在を確認。あと20分で移行完了です。」
女がそう言うと見るからにして年老いた男が大声で、
「ついに、我が悲願が叶う!あと20分でほとんどの人類が死に絶え、ほんの一握りの選ばれし人間者共と特異点に行こうではないか。」
そう言うと男はニヤリと笑った。
12月31日午後23:55
ついにクラスメート達に見つかってしまった。
あと5分で年を越せたのに。本当についてない。
クラスメート達は面白おかしく俺のことを殴って来る。
まるでゲームだ。俺を殴って楽しんでやがる。
こいつらなんか死ねばいいのに。
「年変わる瞬間にこいつの髪の毛ライターで燃やしてやろうぜ」
1人がそんなことを言い始めた。
俺は髪の毛を強引に引っ張られ、火に近づけられた。
ついにその時が来た。年が変わるまであと10秒のカウントダウンが始まった。
新年を虐められて始まるのかと思ったら涙が出て来た。そんなことを思ってもその時間は無慈悲にもやってくる。
5.4.3.2.1.0
俺は諦めて目を閉じていた。しかし、0という声が聞こえても何もない。しかも髪の毛を引っ張られていたが、引っ張られている感触がない。
俺は恐る恐る閉じていた目を開けた。
そこには、神社の面影もなく、俺がいる場所は見たこともない場所だ。見渡しても広がるのは澄み切った空と大地だけだ。
ど、何処なんだここは?もしかして俺死んだのか?確か神社の境内でクラスメート達にボコボコにされて髪の毛に火をつけられたはずだが…
すると、頭の中に男の声が聞こえて来た。
「選ばれし者達よ!ここはお前達が言うところの異世界と呼ばれる場所だ。お前達はここで365日間で最後の1国になるまで殺し合いをして貰う。この世界には10の国があり、腕にどの国に所属しているか書いてある。そして、最後の1国の者達に願いを1つ叶えてやろう。以上。」
はあ?異世界?殺し合い?俺が選ばれし者?非現実的な事ばかり並べられても意味が分からない。腕を見ると7と数字が彫られている。もしかして俺が刺激のある世界にして欲しいとか望んだからこうなったのか?確かに非現実的で楽しそうだが。
俺は初めて神様の存在を認めた。
そして、俺は目の前に広がる草原を歩き始めた。