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その1――勇者さん、逃げてください

乗りと勢いと柑橘の国からレモン参戦だ~



駄文ですがよろしくお願いします。

次話はすぐ投稿します。

「浩介、もっと急げっ!!」

「タイラ、耳元で大声出さないでくださいよ」


 俺、タイラこと、平野清人は今まさにピンチである。


 例えば、足元に落ちてるエロ本を素通りしなければならない程ピンチだ。つまり命が危ない。


「……待て」

「待てるかっ!」


 俺たちはゴスロリピンク髪縦ロールの自称魔法少女に追いかけられてる。

 ここは現代日本である。断じて剣と魔法のファンタジーの世界ではない。まだ彼女がお化けだったり口裂け女だったりした方が現実味があるくらいだ。


 しかし自称魔法少女の手のひらからはバレーボールサイズの火の玉が飛んでくる。それは怪奇現象、まさに魔法の様だった。


「応戦できないのか?」

「無理ですって」


 俺が比較的魔法少女の存在をあっさり受け入れつつあるのには理由がある。

 親友にして同じ高校2年生身長190センチでゴリマッチョ、そして今俺が背中にしがみついている町田浩介は元勇者だ。


 彼は3年前異世界に召喚され魔王を倒したらしい。

 現在は聖剣とやらとのリンクが切れているそうで魔法は使えない。ただ、その異様に発達した筋肉は異常とも言える運動能力を発揮していた。

 というよりそのお陰で今こうして鬼ごっこが成立している。浩介がいなければダブリー一発ツモ、即詰みだったことだろう。


「頑張れよ、元勇者」

「この3年間、宿題ぐらいとしか格闘してないんです!」

「あら、お上手やな」

「上手くなぁい!」


 この情況でマイペースなこと言うのは親友にしがみついた俺の肩に座ってるエロ本の妖精さん。その名はグリちゃん。彼女は紫色のドレスを着た北欧美人で見た目20歳前半のボンキュッボンである。20センチだけど。


「うちの封印解いてもええんやで。あんな小娘ごとき瞬殺や。なに、ちゃあんとあんたの魂は犯さんさかい」

「誰がその手に乗るかっ!」


 エセ関西弁を話す妖精さんの正体は、浩介が異世界から預かってきたランクSSSの魔石「グリード」。負の感情を吸収し無限の魔力を作るその石に発生した存在。溜め込んだ負の感情の集合体、具現化した悪意。それがグリちゃんだ。


 今は訳あって魔石ごと俺の中に封印され無害となった彼女だが、ことあるごとにこうして願わくば俺の肉体を乗っ取ろうとしてくる。



「マホ、そろそろ殺っちゃおうよ」

 自称魔法少女の頭に乗る兎のぬいぐるみが過激な事を口にする。

「…了解」

 ボソッと答える少女。


 次の瞬間、魔人○ウも真っ青な元気○級の火の玉、いや炎の塊が俺たち目掛けて発射された。





 この物語の主人公たる俺はあっさりと呆気なく死んだ。

 17歳、あまりにも若過ぎる最後だった。



 


お付き合い頂きありがとうございました。

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