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ブルドン兄弟の昔話2~シャイル目線~

「そういえば、お前ら三人交換日記やってたよな。」オースティンが噴き出しながら言う。


「何で知ってるんだ!」思わぬ秘密がばれ、恥ずかしいあまりシャイルは叫んだ。


「お前の机に置いてあったから昔読んだんだよ。シャイルも意外にエミリアの質問に真剣に答えていたよな。はは。」


「頼むからそれ以上言わないでくれ・・・。」シャイルは羞恥心を紛らわすため、一気にワインを流し込む。


「はは。まぁ、エミリアは友達いなかったからな・・・。女友達と普通はすることを、お前らにしか頼めなかったんだろうな。」


「そうだな・・・。エミリア友達いないもんな・・・。」


「あの容姿で公爵令嬢って言うのもあるけど、あいつ悪意に疎いだろう?」


「うん。」


「あいつに最初に寄ってきたのは、甘い汁を吸おうとするやつらばかりだったんだよな。もちろん普通に仲良くなりたいやつらもいたけど。あいつ年上からも狙われててな。」


「年上?」


「まぁ将来に美人になるのが目に分かるだろう?だから下心で寄ってくる奴らあまりにも多くてな・・・。それでディアンがぼこぼこにしたんだ。それで、一目置かれるようになっちゃったってわけさ。」


「殿下のせいもあると思うぞ。」シャイルも首をすくめながら言う。


「まぁそうだな。殿下はあの頃からエミリアしか見えてなかったな。」オースティンが笑う。


「本当だよ。何が良くてあんなに執着してるんだか。」


「話変わるけどよ。あいつ、あの頃すげぇ食べたよな。俺より大食いじゃなかったか?」


「すげぇ食ってたな・・・。口にものいっぱい入れて食うから、兄貴が笑わすといつも噴き出すんだよ。それが大体俺か殿下に飛び散ってよ。最悪だったな・・・。」


「あの頃のエミリアは、食べ終わったら腹がいっつも出てた。今みたいにあんな細くなかったな・・・。俺好みの健康的な体型だった・・・。」


「信じられないくらい食べてた。俺もなんか負けたくなくて張り合った記憶があるわ。」


「そうだったな。お前がデブって言って、一週間口きいてもらえなかったこともあったな。はは。」


「やめろよ・・・。」シャイルが苦い顔をして言う。


「まぁ。お前とエミリアもよく喧嘩してたけど、殿下とエミリアもしょっちゅう喧嘩してたな。」


「今思えばくだらねぇことだよな。俺よりも殿下とエミリアの喧嘩の方が多かった気がする。」


「殿下もエミリアだけにはむきになったしな。なんて言うんだろう。今思えば、あの二人ってお互いの考えに何か少しでも違いが見つかるのが嫌だったんだろうな。大体口が達者な殿下が勝って、エミリアが不細工な顔して泣いて逃げ出すんだよな。」


「あいつ、泣き顔死ぬほど不細工だった。初めて見た時、俺女がこんな不細工に泣くのかってびっくりしたもん。」シャイルは昔のエミリアの泣き顔を思い出して笑いだす。


「大体どっかに泣きながら逃げてくエミリアをお前が探しに行くんだよな。殿下が一人取り残されて、すねながらも目に涙を溜めながら唇をかみしめてたわ・・・。かわいかったな・・・。」オースティンが懐かしそうに言う。


―かわいかったか?あいつ性格に難ありすぎなんだよ。―シャイルは何も言わずに肩をすくめる。


「何だろう。俺の中でエミリアはあの頃のまんまなんだよな。同僚たちにエミリアと話すのどきどきしないのか?とか聞かれるけど、確かにエミリアは美しく成長したけどあの頃の泣き顔がよぎって全くどきどきなんかしないんだよ俺は。だからお前と殿下が不思議でたまらない。お前、昔馬車で酔ったエミリアにゲロまでかけられてどうして好きでいられるんだ?なんて言うんだろう・・・。幼馴染ってあまりにも知りすぎてないか?」


「そうだな・・・。ゲロかけられたことあったな。臭かった・・・。」シャイルは声に出さず笑う。


「はは。殿下がもらいゲロしそうになりながらも、懸命にエミリアの背中をさすってたな。」


「懐かしいな。あの頃のエミリアに戻ってほしいな・・・。」


そのシャイルの言葉に、オースティンは悲しそうに笑った。



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