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義務

アルフォンスが国王に詳細を説明している間、エミリアは別室に通されディアンとナタリーと待っていた。エミリアは優しくしてくれたリーリアを思い出しながら、今までのそれに対する自分の行動を振り返っていた。


―もっとリーリア様と向き合えば良かった・・・。謝罪していれば何か変わったのかも・・・。―


王立学園在学中にリーリアの好意を受け取ることが出来なかったのには理由がある。ずっとエミリアはリーリアへ後ろめたさがあった。初めて出会ったあの日、リーリアはアルフォンスと結婚したいと言い、自分はそれを応援すると言ったのだ。エミリアは成長しても、リーリアとの約束を忘れることはなかった。だから、アルフォンスのことを好きになってはいけないと何度も胸に言い聞かせてきたのだ。


だがエミリアはアルフォンスの婚約者になり、好きという気持ちを止めることは出来なくなってしまった。リーリアが再度現れた時、約束を守れなかったことを詫びたいと思ったが、リーリアがアルフォンスのことをまだ好きなのかよく分からなかった。ただアルフォンスを奪われそうで怖かった。誕生日会を開いてくれても、一緒に登校してくれても、一緒に昼食を食べてくれても、その優しさを素直に受け取ることが出来なかった。


リーリアを狂わせてしまった原因が自分にある気がして、エミリアはただ後悔していた。


―コリン王国でのリーリア様の優しさは嘘じゃないわ・・・。―


そう考えれば考えるほど、エミリアの心に深い傷が刻まれた。そしてこの件に関わらずに逃げたかった。


「お兄様。」エミリアは隣に座るディアンに話しかける。


「うん?」ディアンが答える。


「私・・・。陛下と会うのよね?」


「そうだよ。辛いかもしれないが、思い出したことを話すんだ。」


「私、殿下に全部話したわ。私もう話す必要ないわ・・・。」


「エミリアの証言とリーリア王女の証言を、陛下は照らし合わせ判断しなければならない。その後、エミリアはアルフォンス殿下が捕まえた犯人たちとも会わなければならない。」


「犯人・・・。どうして?会いたくないわ・・・。」


「君は公爵令嬢だ。公爵令嬢を襲った犯人は間違いなく処刑される。もし、それに間違いがあっては大変だからだ。」


「処刑・・・。私、処刑は望んでない・・・。」


「エミリア。これが越えられない身分だ。貴族を平民が襲うことは、例え命令されても許されないことだ。」


「でも・・・。」


「身分の問題は必ず行き当たる問題だ。それでも民をまとめる王や貴族は必要なんだ。だからこそ俺らは間違えないように生きなければならない。民から血税を取りそれで贅沢をする代わりに、彼らの暮らしを保証出来るように勉学に励まなければならない。よく父上が言っていただろう?」


「うん・・・。」


エミリアが頷くと、ディアンは優しくエミリアの背中を叩いた。父と最後に会話したのもその話だった。晴れているのに、エミリアの耳には大雨の音が遠くで聞こえていた。

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