アルとクロ~エミリア5歳~
エミリアにとってクロのお世話は思いの外大変だった。まだ小さいので、成長するまでは家の中で飼うことにしたのだが、父以外の言うことは聞かないし、トイレを覚えさせるのに苦労した。一週間たちようやく落ち着いてきたところだ。
クロのお世話で忙しかったエミリアは、ようやく今日一週間ぶりにアルフォンスに会えることになった。最近、来年の初等部入学も控えていてますます忙しくなっていくアルフォンスに、エミリアが王宮を訪ねることが多かったのだが、今日はクロを見るのも兼ねてアルフォンスが遊びに来てくれるのだ。
「エム!やぁ!」
と笑顔でアルフォンスがやってきた。
「見てアル!クロよ!」
「かわいい!初めて見たよ!抱かせてもらってもいい?」
「もちろんよ!はい!」
と手渡すとアルフォンスも嬉しそうに抱く。クロは眠そうだ。
「でも、クロって名前見た目のまんまだね。」
「でしょ?しかもね女の子なのクロ。私は、チョコとかもっとかわいい名前にしたかったのに、ディアンお兄様が・・・。」
「ディアンが?それならば仕方ないね。良かったじゃないかエム。妹が出来たよ!」
「そうなの!とっても幸せよ。アルは弟みたいなものだけれど、本当は妹が欲しかったの!」
「ちょっと!僕が弟だって?僕のほうが年上だよ?」
「でも、私より小さいもの。泣き虫だし。」
「小さいのは関係ないだろう。それに、もう泣かなくなったよ。ひどいよエム。弟だなんて。」
すっかり拗ねてしまったアルフォンスに、エミリアは慌てて謝り二人は友達だと言うことで集結したのである。
「もうすぐ冬が来るわね。そしたらあっという間に春が来て、アルは初等部に入学するのね。」
「その一年後にはエムも入学するよ?」
「うん。でも一年間寂しいな。」
「どうして?」
「だってアルになかなか会えなくなるもの。」
「僕は変わらずに会いに来るよ?」
「本当に?」
「うん。はい約束。」
そう言って小指を差し出すアルフォンスにエミリアも小指を差し出す。
「絶対だからね。」
二人仲良く隣に座り、小指を絡ませ約束をする。いつの間にか、クロはアルフォンスの腕の中で眠ってしまったみたいだった。