祈り
エミリアがコリン王国に来て一年半が流れた。
来てからすぐにリベラルトが手続きをしてくれたコリン国立学園に編入すると、飛び級制度が充実している学園をわずか半年で卒業した。当初は苦労した。いくらコリン語が堪能なエミリアでも、文化の違いや些細な数式などの違いに中々順応出来なかったのだ。またコリン王国の王弟が突然連れてきた、謎の他国出身者のエミリアに誰も近寄っては来なかった。何度も心が折れそうになったが、帰る場所がないと自分自身に何度も言い聞かせ必死に努力したのだ。そのかいあって半年で学園を卒業すると、官吏試験に合格し昨年から文部省で働き始めたのである。
エミリアは五か国語話すことが出来るのもあって、外務省に希望を出すことを考えていた。でも、後ろ盾になってくれてるリベラルトは外務大臣として君臨していたし、万が一でも外交官としてエドガー王国に行くことになるのを避けたいと考え文部省に希望を出した。
コリン王国は優秀なものならば誰でも受け入れていた。もちろん官吏は幼少期から英才教育を受けている貴族が大部分を占めていたが、エミリアの目には貴族令嬢が男性と対等に仕事をするのを許されることが何よりも新鮮に映った。
文部省で働き始めて二年目に突入するエミリアに与えられる仕事はまだ雑用だったが、それでも忙しくて毎日充実していた。
そして、侯爵令嬢であるターニャという親友も出来た。ターニャはエミリアよりも一つ年上で、一年先に文部省で働き始めていた。リベラルトに憧れているターニャは、最初エミリアに何かと張り合ってきたのだが、エミリアの事情を偶然知ると本来の面倒見の良い性格を思う存分に発揮し始めたのである。
またコリン王国とエドガー王国は、王族同士の交流がないらしく、エミリアがエドガー王国の王太子の婚約者であったことを知るものは、リベラルトとターニャしかいない。それが何よりもエミリアにとってありがたかった。
そして今年20歳になり、結婚適齢期を迎えるエミリアに多くの縁談が舞い込んだ。仕事ばかりしているエミリアを心配したリベラルトが、何度もお見合いをセッティングしてはエミリアを困らせていた。エミリアは結婚する気にはどうしてもなれなかったのである。
コリン王国に来てからも、エミリアは一日足りとアルフォンスを忘れたことはなかった。最後に見た自分が傷つけたアルフォンスを思い浮かべてると、強い罪悪感にさいなまれた。もうすでに自分など忘れ、結婚し幸せであることを毎晩一人でただ祈ることしか出来なかった。




