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資格

リベラルトと再会してから数日後、シンディーがエミリアに会いにやってきた。アンから来訪者を告げられたエミリアが応接室に行くと、緊張した面持ちのシンディーが椅子に座っていた。エミリアが部屋に入ってくると、立ち上がりかけよってきた。


「シンディーどうして・・・?」


「あぁエミリア様・・・。突然の来訪をお許しください。」


「いいえ。私もシンディーに会いたかったの。とりえあず座りましょう?」


そう言い、シンディーの両手を握りながらソファーの座る。


「シンディー元気だった?」


「私のことなどいいのです。エミリア様・・・。よくぞ目をお覚ましになられて・・・。」とシンディーは号泣する。


「シンディー・・・。会いに行けなくてごめんね?こんな足になってしまったから・・・。みんな私を見ると悲しそうな顔をするから・・・。あなたを悲しませたくなかったの・・・。」


「エミリア様・・・。」シンディーはただ泣き続ける。


「心配してくれたのね。ありがとうシンディー。」


「私、エミリア様が事故に遭われたと聞いたとき・・・。四か月もお目覚めにならず・・。お目覚めになられたと聞いたときは・・・。エミリア様・・・。」


「シンディー・・・。よくここが分かったわね?」


「それは・・・。申し訳ありません・・・。私のような身分の者が許されることではないのですが、どうしてもエミリア様にお会いしたくて・・・。公爵家に会いに行ったのです。」


「門番があなたに失礼な態度を取らなかったかしら?」


「偶然エミリア様の護衛の方が通りかかりまして。すぐに、エミリア様のお義姉様が私にお会いになってくださったのです。」


「そうだったの・・・。お義姉様元気だったかしら?」


「はい。お元気そうでした。エミリア様。殿下のことはどうなさるのですか?」


「破談になったのよ。」


「いいえ。殿下は毎日公爵家にお会いに行かれているようでして・・・。エミリア様がこちらにいらっしゃることもご存じないのです。今回もお義姉様からこちらに伺うことをきつく口止めされまして・・・。」


「そうだったのね・・・。」


「エミリア様。私なんかがさしでがましいですが・・・。殿下とお会いにならないのですか?」


「シンディー・・・。私大怪我をしてね・・・。体も以前よりずっと弱くなったし、二度と自由に動かせないの。そんな資格がなくなってしまったのよ。」


「そんなの関係ありません!」


「ううん。関係あるのよ?シンディー。王妃に一番必要な資格って何だと思う?」


「資格ですか?」


「そう。資格・・・。」


「エミリア様はすべてその資格が備わっていると思います。」


「シンディー。王妃にとって一番大切なことは、後継ぎを産むことよ。」


「エミリア様だって後継ぎを産むことはできます。」


「シンディー・・・。」


「お体が多少不自由だからといって妊娠出来ないとは限りません。」


「違うのシンディー・・・。」


「はい?」


「あの・・・ね。誰も知らないから秘密にしてくれる?」


「はい。」


「あの・・・。事故に遭って以来、月のものが来ないの・・・。」


「え・・・。」


「私、もう子供を産むことさえ出来ないの・・・。」そう言ってエミリアは泣き出す。


「エミリア様。それは事故からですか?」


「え?」


「事故に遭われる前は毎月来てたのでしょうか?」


「そうね・・・。たまに来ない月もあったけど・・・。それでも毎月来てたわ・・・。」


「前に医学書で読んだのですが、ストレスではないのでしょうか?」


「ストレス?」


「はい。事故に遭われたことで心に大きなストレスを受けたのではないでしょうか?」


「・・・。」


「エミリア様。早急に医師に診せることをお勧めします。手遅れになってからでは遅いです。まだ間に合うと思います。」


「シンディー・・・。」


「だから、どうか殿下のことはお諦めになられないようお願いします。」


優しくて頼りになるシンディーの言葉に、エミリアは初めて希望が見えた気がした。シンディーは学園での出来事や、孤児院の子供たちの近況などを楽しそうに語ると、最終の高速列車で王都に帰って行った。


その夜。エミリアはアルフォンスに手紙を書いた。感情任せに王都を出てきてしまったが、アルフォンスなら今の状況でも受けいれてくれる気がした。そして毎日公爵家に会いに来てくれるアルフォンスに、何が何でも会いたくて仕方なかった。


次の日。アルフォンスへ直接手紙を届けてくれる従者を探してエミリアは歩いていた。アンが『私が渡します。』と言ったが、どうしても直接頼みたかったのだ。そのとき門から馬車で誰かが入ってくるのが見えた。もしかして、アルフォンスかもしれない。なぜか不思議とそう思い、期待しながら目の前で馬車が止まるのを待つ。


馬車から降りてきた人は、エミリアにとって思いもよらぬ人だった。


「エミリア・・・。」向こうも、目の前に立ってるエミリアに驚いているようだった。


「王妃様・・・。」エミリアの手から、手紙がぽとりと落ちた。





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