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故郷

エミリアが朝早く高速列車から降り立つと、駅には叔父が迎えに来ていた。目が覚めてからすぐに会った以来だったので、久しぶりの再会を抱き合って喜んだ。叔父はエミリアの回復を自分のことのように喜ぶと、エミリアを抱きえ上げ馬車に乗せた。


領地の屋敷というより城は、城下町の中心部を抜けて高台にある。周りは城壁で覆われ、大きさも宮殿とまではいかないがエドガー王国でも三本の指に入る大きさだ。


それもそのはず、200年前まではウェズリー公爵領は一つの国だった。当時まだ建国して新しかったエドガー王国の国王に感銘を受けた先代の公主が、臣下にくだり今に至る。そのためエドガー王国の中でも広大な敷地面積を持っていて、代々国王の信頼も厚く、エミリアの父も宰相を勤めていた。


父の死後一時的に領地経営が傾いたが、それもわずか数年で回復し、今ではディアンの腕のおかげで各国から人が訪れ、経営も十分すぎるくらい潤っていた。


王都は紅葉で賑わっていたが、領地では既に秋に終わりをつげていた。


戻ってきてからは、普通の人なら徒歩10分の距離を、毎日30分かけて両親と兄の墓参りに出かけた。叔父も付き添おうとしてくれたが、一人で行きたいとエミリアは言い断った。領地は王都よりもずっと安全なので、エミリアが一人で出かけても誰も何も言わなかった。


お墓は城の裏門から出て坂を上ると、見晴らしのいい丘にある。代々の当主たちが眠っていて、警備も厳しくそもそも誰も立ち寄れない場所である。


エミリアは両親と兄が眠る場所に来ると、涙を流さずにはいられなかった。「私も、そっちに行きたい・・・。」そう言いながら、一日の大半をそこで過ごした。


―どう生きていけばいいのだろう・・・。このような体では、嫁ぎ先など、どこもないわ・・・。一生公爵家にいるわけにもいかないのに・・・。―


―修道女になろうかしら。アンがいないと何も出来ないこのような体でどうすればいいの?一人で出来ないことの方が多くなってしまったのに・・・。―


―私に出来ることなど何もなくなってしまったわ・・・。お兄様はきっと喜んで一生面倒を見てくれるわ・・・。でも、そんな生き方どうしても耐えられない・・・。―


―本当は分かってるの。なぜ家でのリハビリが許可されたのか。自分の体のことだもの。私が一番よくわかってるわ。これ以上足がよくならないのよね・・・。きっと、一生杖なしじゃ歩けない・・・。もう、走ることもできない。―


そう考え、一人でずっと泣き続けた。


エミリアが戻ってきて、一週間が経った。エミリアは懐かしい人と再会した。


その日エミリアはお墓からの帰り道で、一人で坂を下っていた。思わずバランスを崩し、しりもちをついて転んでしまったのである。あまりの痛みに起き上がれないエミリアに、ふと手が差し出された。


「大丈夫お嬢さん?」


「あなたは!」


白銀の髪が日に当たり反射していた。 





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