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絶望

エミリアが目覚めてから数日間。エミリアは人が変わったように暴れた。目が覚めると点滴や身の回りにあるものは全て投げつけた。そしてベッドから落ちては立ち上がることも出来ない自分の状況に絶望して泣き叫んだ。常に医者が常時し、注射を打つことで無理矢理寝かせていた。


アルフォンスたちが来るとより一層暴れ狂うエミリアを見て、医者は家族以外との面会を禁止した。エミリアのベットには柵ができて、周りには何も置かれなくなった。


やがて、エミリアは抵抗するのをやめた。ただぼーっと窓の外を見つめ、ご飯も食べようとしないエミリアにディアンはどうしたらいいのか分からなかった。


そんなエミリアに辛抱強く優しく接したのは、意外にも義姉のナタリーだった。人に触れられると必死で抵抗するエミリアも、お腹の大きい義姉にだけは出来なかった。ナタリーはエミリアの体を優しく拭き綺麗にすると、食べようとしないご飯をゆっくり食べさせ、嫌な顔1つせず下の処理までした。


ナタリーの優しさに触れ、エミリアはナタリーだけとは少しずつ会話するようになった。少しずつ本来の優しさを取り戻し、妊婦である義姉の体調を労った。やがて、ディアンとナタリーと3人で生まれてくる赤ちゃんの名前を考える会話も出来るようになった。


しばらくすると、家族以外との面会禁止もとかれるようになった。面会禁止がとかれたアルフォンスとシャイルが会いに来た時だった。その時エミリアは、ナタリーと話しながらナタリーが作った野菜ジュースを飲んでいた。


2人の姿が見えると、エミリアは「来ないで!」と叫んだ。シャイルは戸口で立ちすくんだが、アルフォンスはそのまま部屋に少し足を踏み入れナタリーに席を外すよう頼んだ。心配そうなナタリーがシャイルに連れられ部屋を出て行くと、アルフォンスはエミリアのベッドの側に寄ってきた。


寄ってくるアルフォンスに、エミリアはまず枕を投げつけた。アルフォンスは避けようとせず、体にあたった。次にエミリアは布団を投げつけた。必死に「来ないで!」と叫んだ。それでもアルフォンスは近づいてきた。


最後に、エミリアは持っていたコップを床に投げつけた。だが、その割れた破片が床を跳ね返り、アルフォンスの腕に当たった。アルフォンスの腕から血が流れるのを見たエミリアは、我に返り言った。


「あ・・・。アル・・・。」


「エム。それですっきりするのなら、僕をどれだけ傷つけてもいいんだよ。」


「違うの・・・。そんなつもりじゃ・・・。」


「僕は大丈夫だよ?エム元気だった?ご飯食べてる?」


「あ・・。誰か来て!殿下の腕から『エム。』」


アルフォンスはエミリアの言葉を遮ると、柵の付いたベッドの近くの椅子に腰をおろした。


「エム。ごめん・・・。」


「どうして、アルが謝るの?」


「うん・・・。」


泣きそうなアルフォンスの顔を見て、エミリアは初めてアルフォンスがどれほど自分の事故に苦しんだのか理解した。目が覚めてから自分のことばかりだったが、自分が事故に突然あい4ヶ月目が覚まさないことで、どれほど周りを心配させたのかということにようやく気がついた。


「ごめんね?」と初めてエミリアは謝った。


「え?」


「心配かけて。今やっと分かったわ。目が覚めてから、自分のことばかりだったね私。」


「エムそれは違うよ。」


「ううん。ごめんね?アルすごくやつれた・・・。心配かけてごめんね?」


「エム・・・。」


「私は大丈夫よ。この前お医者さんに言われたの。『リハビリしてみないか?』って。誰がするもんかって思ってたけど、今アルの顔見たらやってみようって思ったわ。」


「エム。本当にごめん。守れなくてごめん・・・。エムは僕の婚約者じゃなかったら、こんな目にあってなかったかもしれない。」


「どうしてそんなこと言うの?アルがいたから、どんなことがあっても乗り越えられてきたもの。そんな事言わないで。」


「エム・・・。」


「そんな顔しないで。私頑張るわ。ねぇアル?」


「うん?」


「私事故のこと何も覚えてないの・・・。アルにクッキーを届けに行った日の翌日に合ったのよね?」


「うん。」


「どうして、暴漢にあったのかしら?次の日は、お義姉様と過ごすってアルに言ってたよね?」


「リーリアと僕に会いに来たみたいなんだ。」


「リーリア様?」


「うん。リーリアがエムに会いに公爵家に行ったみたいなんだ。それで、僕に会いに行こうってなったみたい。」


「何でアルに会いに行ったんだろう?次の日には会えるのに・・・。」


「・・・。」


「事故のこと何も思い出せない・・・。」


「エムが目が覚めただけで十分だよ。4ヶ月間寝たままで、体の栄養も足りてない。今はゆっくり休んで、いっぱい食べて?」


「うん・・・。ねぇ、アル?」


「うん?」


「なんでもない・・・。また会いに来てくれる?」


「また、明日来るよ。エム、生きててくれてありがとう。」


アルフォンスは、エミリアの手を握り頭をずっと撫でていた。しばらくすると、エミリアは眠りアルフォンスは帰っていった。


―アル・・・。私婚約者降ろされないの?―


エミリアはどうしても聞けなかった。

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