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事故~エミリア17歳~

冬休みが終わる前日、リーリアが突然公爵家にやってきた。驚くエミリアに、「一緒に展望台に行かない?」と誘った。どこか思いつめた表情のリーリアを見ると、なんだか心配になりエミリアは付き添うことにした。


宮殿は王都の小高い丘の上にある。坂道を登ると二手の道に別れる。右に行くと最難関の官吏試験を突破した者たちが務める医学研究所、財務省、外務省などがある。更に進むと図書館と迎賓館があり、一番上に宮殿と神殿があった。


左手は険しい崖になっていて見晴らしがよく、軍の訓練所となっていた。そして訓練所の近くに、エミリア達が展望台と呼ぶ小さな開けた場所があった。


展望台に着いても、リーリアは何も言わなかった。具合でも悪いのか?と聞くエミリアに静かに首を振った。リーリアは、どこか不安そうな顔で登ってきた道の先に見える街の景色を眺めていた。


しばらくすると、後ろが騒がしくなりエミリアは振り返った。エミリアが連れて来た1人だけの護衛が地面に倒れていて、リーリアが連れてきた2人の護衛が暴漢たちと戦っていた。


戦い終わった暴漢のうちの1人の男が、エミリアたちの方にゆっくりと歩いてきていた。エミリアはリーリアの腕を引き逃げようとしたが、後ろは崖になっていて挟まれてしまっていた。


ニヤニヤ笑いながら近づいてくる男の顔に、エミリアは見覚えがあった。男は震えるエミリアの腕を掴むと、「久しぶりですね?」と言った。


「あなたの目的は何なの?」と言うエミリアに、「殺しはしません。ただ、王子と結婚出来ない体にするよう命令を受けまして。俺としても、あんたみたいな美人とやれるのなら、願ってもないことでして。」と言い腕を引っ張っり抱き寄せた。


「いや!私はアルと絶対結婚する!」とエミリアは強く抵抗した。男は「そんな抵抗無駄ですよ。」と言いエミリアを肩に担ぎあげようとした。エミリアは男の肩に全力で噛み付いた。驚いた男は思わずエミリアを下ろすと、本能的だったのだろう、「いってぇ!この野郎!」と言いエミリアを殴り飛ばしたのである。


低い柵を越え、エミリアは空中に投げ出された。エミリアが最後に見たのは、泣きそうな顔をしたリーリアだった。




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