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四つ葉のクローバー~エミリア5歳~

そうしてアルフォンスは頻繁に屋敷に遊びに来るようになったのである。二人は二人だけのあだ名を作り互いをアル、エムと呼ぶようになるのも遅くはなかった。出会いから1年の月日が流れていた。


当初父であるウェズリー公爵は、娘が王子を呼び捨てにして友達と言ってのけるので何事かと驚き慌た。しかし、泣いてばかりだった息子が次第に明るく成長していくのを見た王や王妃が、まだ子供なのだからと臣下の礼を取らずにと特別に許可していることに、エミリアは気づく由もなかった。


今日は、アルフォンスから王宮に招待されていた。隣国であるフォスタ王国から国王一家が我が国を訪問しているらしい。どうやらフォスタ王国の第二王女であるリーリア王女とアルフォンスが同じ年で仲良くなり、アルフォンスがエミリアの話をしたら会いたがったみたいだった。


王宮に着き庭に案内される。テラスで待っていると、アルフォンスとリーリア王女と思われる子が手をつなぎながら駆けてきた。


「エム!久しぶり!」


「アル、一週間前にも会ったわよ。」


なんて言いながら、実は久しぶりにアルフォンスに会えたことをエミリアは喜んでいた。帝王学を学ぶアルフォンスは多忙だが、いつもは3日と開けずにエミリアに会いに来てくれる。それが今回はフォスタ国王一家の訪問で一週間も会えなかったのだ。アルフォンスだけが唯一の友達であるエミリアは、仲良く手を繋いでいる二人に少しむっともしていた。


「エム!こちらはフォスタ王国第二王女のリーリア王女だよ。僕と同じ年の六歳なんだ。」


「はじめまして。エミリア・ウェズリーです。五歳です。」


「わぁ!かわいい!でも私より身長が高いのね。私よりも1つ下なのに。」


しょんぼりとリーリア王女が言う。


「リーリアは小さくてかわいいと思うよ。僕はエムになかなか追いつけなくて悔しいんだ。」


そう言いながら、リーリア王女に笑いかけるアルフォンスにエミリアは少し悲しくなった。エミリアは同年代よりも発育がよくアルフォンスよりも頭一つ分高かった。身長が高いことはコンプレックスではなく嬉しかったのだが、小さくてかわいらしいリーリア王女を見て初めて羨ましく思った。


「アルが小さいんだもん。私は普通よ。」


「えー!エムが大きいんだよ!」


と言い争う二人にリーリアが楽しそうに笑う。


「二人共仲良いのね。私もエミリアと仲良くなりたい!ねぇ。私もエムとアルって呼んでもいい?」


とエミリアに笑いかけて来た。


エミリアは、外で遊ぶことが大好きなため日焼けしていて怪我だらけだ。それに比べて、艶のある黒髪に肌が真っ白で傷一つなくエミリアの大好きな絵本に出てくる主人公そっくりなリーリア王女。そんな人に仲良くなりたいと言われてすっかり舞い上がった。


「もちろんです!エムって呼んでください!嬉しいです!」


「私のことはどうかリーリアと呼んで!」


王都に来て1年、きっちり教育を受けていたエミリアは、さすがに王族を呼び捨てにすることは出来なかった。


「リーリア様。」


顔を赤くしてうつむくエミリアにアルフォンスは目を丸くする。


「えー!僕と態度違う!」


「うるさいアル。リーリア様、一緒に散歩しましょう!」


「そうねエム。あちらの薔薇園でも見に行きましょう!」


そう言って仲良く歩き出す二人に、ぶつぶつ文句を言いながらもアルフォンスも続く。


その日は、三人でたくさんのことを話した。家族のこと。好きな物語の話。将来のこと。幼い三人は話が尽きることがなかった。


「そうだ!四葉のクローバー探しに行きましょう。見つけると願いが叶うのよ。」


「そうなのですか?リーリア様は何か願いがあるのですか?」


「うん。エムはないの?」


「うーん。アルは?」


「僕は四葉のクローバにあまり興味が無いな。」


「これだから男の子は。あなたはここにいて。エム一緒に探しに行きましょう。」


そう言って手を引かれる。


「じゃあ僕はここで本を読んでいるよ。」


そんなアルフォンスを背に、エミリアとリーリアが四葉のクローバを探して30分。


「見つけた!」


リーリア王女の手を覗き込むと四葉のクローバがあった。


「わぁ!初めて見た!何を願うんですか?」


「あのね。アルと結婚できますように。って願うの。」


「えぇぇぇぇぇぇ!!!」


「声が大きいわエム。私ねアルが好きなの!内緒よ。」


「好きなんですか?えぇぇぇ!」


「エムは好きな人いないの?アルのこと好きじゃないの?」


「アルのことは好きですけど・・・。うーん。好きってよくわからないです。」


「えっとね。胸がきゅーってなったり、ドキドキしたりするの。」


「うーん。その感覚は分からないです。」


「いつか分かるよ。その時は教えてね!」


「はい!私リーリア様とアル応援しますね!」


「えへへ。ありがとう!嬉しい!エム大好き!」


「おーい!エム!見つけた?」


ちょうどアルが近くに寄ってきた。


「エム、内緒だからね?」


そう言われ、エミリアは頷く。


「アルー!リーリア様見つけたの!でも私は見つからないよ!」


「もう、ちゃんと探しなよ!」


気づくとアルフォンスが後ろに来て探すのを手伝ってくれる。


結局、その日エミリアは四葉のクローバを見つけることが出来なかった。


その後、公爵家から迎えが来てしまい、明日帰国してしまうリーリアと再会を約束して別れたのである。







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