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甘言と現実~リーリア目線~

アリアンヌから話を聞いたリーリアは、ある考えを期待するようになった。また、エミリアの誕生日のために計画を練るリーリアを見るアルフォンスの目はいつもより優しかった。


誕生日会の二日前、リーリアは特に仲の良いメアリー、エリザ、ローラとスイーツを食べに出かけた。3人とは短期留学した時からの仲だった。


年頃の女の子の話はもっぱら婚約者のことだった。メアリーとエリザにはいないようだったが、一番おとなしいローラは幼き頃から決まってる相手がいるようだった。それから自然とアルフォンスとエミリアの話になった。メアリーはエミリアのことが何故か好きではないようだった。


「エミリア様は殿下にお似合いではありませんわ。」そういうメアリーに、


「どうして?」とリーリアは聞く。


「殿下はこの国で一番魅力的な殿方で将来の国王陛下ですわ。エミリア様はただ美しいだけで王妃にふさわしくありませんわ。」と憮然と答えるメアリーに、エリザとローラも『そうですわ。』と同調する。


「あら。そんなこと言ってはいけないわ。エムはとても魅力的だわ。私よりもずっと・・・。」そう悲しそうにリーリアは言う。


「そんなことありません。リーリア様こそが殿下にふさわしいと思います。」とメアリーが強く言う。


「冗談でも嬉しいわ。ありがとう。」


「いいえ。冗談ではありません。殿下がエミリア様を気にかけるのも、ご両親をなくされたからに過ぎません。」


「あ・・・。」とっさに戸惑うリーリアに更にたたみかけてくる。


「アルフォンス様は唯一リーリア様だけに愛称を許しているのが、その証拠です。」


「そうなのかしら?」悲しそうに呟くリーリアを見たローラが言った。


「やはりリーリア様は殿下がお好きでしたのね。」


「誰にも言わないでくれるかしら?」


そう言うと、リーリアは3人にアリアンヌの話を語り始めた。リーリアは誰かに聞いて欲しくてたまらなかったのである。3人はリーリアの話を聞き終わると次々と言った。


「やはり、そのような理由があったのですね。全てエミリア様と殿下が婚約破棄なさればうまくいくわ。アリアンヌ様はディアン様と。リーリア様は殿下と。」


「そうなのかしら?でも、アルはエムが特別だわ・・・。」


「それは決して恋心ではありません。同情ですわ。」


「そうですわ。お優しい殿下は、エミリア様が25歳もの上の男に嫁ぐと思うと断れなかったのですわ。」


そう告げる3人にリーリアは、もしかしたら・・・と期待するようになった。


エミリアの誕生日は蒸し暑い日だった。多くの人が王宮に押し寄せ、エミリアをお祝いした。エミリアは、多くの女生徒に囲まれ次々と質問ぜめされていた。そんなエミリアを横目に見ながら、リーリアはワインを飲みながらクラスメートに囲まれていた。


アルフォンスがエミリアの元に行きたがっているのは分かったが、『女性の話に割って入ってはいけないわ。』と言い行かせないよう繋ぎ止めていた。本来リーリアはお酒に強くない。だがいつになく次々とお酒を飲んでしまっていた。


姿の見えないエミリアをアルフォンスが探しに行こうとした時だった。思わず引き留めようとしたリーリアがついふらついてしまったのだ。隣にいたアルフォンスがとっさに抱える。抱きしめられる形となりリーリアはうっとりした。だが、『エム。』と呟くアルフォンスは、すぐにリーリアを起こすと見向きもせず走って戸から出て行った。


そんなリーリアに、メアリーたちが寄ってきた。


「大丈夫ですか?」


「うん。大丈夫よ。なんだか酔ってしまったみたいだわ。夜風にあたろうかしら・・・。」


「お付き合いします。」と言いメアリーたちが付いてきてくれる。


廊下を歩いていると、窓から門でアルフォンスとエミリアが揉めているのが目に入った。アルフォンスが心配になり、リーリアも外に出る。その時エミリアと目があったような気がした。


エミリアが行ってしまい、アルフォンスが戻ってくる。


「リーリア大丈夫?」何かをこらえながらも優しくアルフォンスが聞く。


「大丈夫よ。さっきはありがとう!」


「いや。僕がたまたま側に居たからね。」


「エミリアとどうかしたの?」


「ちょっとね・・・。」と苦しそうにアルフォンスが言う。


2人に気を使ったメアリーたちが会場に戻っていく。


「じゃあ。僕らも戻ろう。エムが帰ってしまったし、お開きにしよう。」


「あ・・・。。アル!話したいことがあるの。」


「何?」とアルフォンスは優しく聞いてくる。


いつものように優しい目を見たリーリアは、期待を胸に自分の考えを口にした。


「アルは、エムのこと本当に好きなの?」


「え?」


「婚約することになった理由を聞いたの。」


「理由って?」


「エムが王弟と婚約するのを嫌がったエムの兄がアルに頼んだって。」


「それで?」ぞっとするくらいアルフォンスが冷たく言う。


「アルはエムに同情して婚約したんじゃないの?」


「はぁ・・・。何を聞いたのか知らないけど。憶測で僕の気持ちをとやかく言うのはやめてほしい。リーリアらしくないよ。」


「あ・・・。そんなつもりじゃ・・・。」


「僕にとってエム以上に大切なのは何も存在しない。同情?好き?僕のエムに対する気持ちはそんな単純じゃない。僕はエムを愛している。その愛の中にもちろん同情も含まれるし好きという気持ちも含まれる。そして言葉には表せない気持ちも含まれる。僕にとってエムが全てで、それが僕の愛だ。だから、リーリアにも他人にもとやかく言われたくない。」


「・・・。」


「リーリア。僕は君が考えもしないくらいずるい男だよ。エムの弱みに漬け込み、どこにも行かないように婚約という鎖で縛り付けているんだよ。」


そう言うとアルフォンスは去っていった。リーリアの甘い期待はがらがらと崩れ去っていった。


その夜、窓をたたきつける雨をリーリアは夜通し泣きながら見つめていた。

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