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味方~エミリア17歳~

エミリアが倒れてから5日目を迎えた。3日間意識が戻らずにディアンを心配させたが、4日目からは少しずつ回復し、5日目には起き上がれるようになっていた。まだ熱が続いているが、数日もすれば回復するだろうとのことだった。


アルフォンスに感染ると大変なので、アルフォンスがお見舞いに来るのをディアンは固辞していた。4日目にシャイルが来たようだったが、エミリアは寝ていた。


そして5日目を迎えたお昼ごろ、突然オースティンが訪ねてきた。エミリアは寝ていると伝えるようにアンに頼んだが、エミリアをよく知っているオースティンはずかずかと部屋に上がり込んできた。


国軍第一兵団に配属になったオースティンと財務省に配属になったディアンは多忙だったが、一緒に飲みに出かけたりと相変わらず仲が良かった。


「エミリア~。俺をお前は騙せないぞ!」


「オースティン感染るよ?」


「ちなみに俺に風邪はうつらない。風邪ならここ10年は引いてない。」


「さすがオースティン・・・。」


「ははははは。」


エミリアの顔にも笑顔が浮かぶ。オースティンはエミリアのベッドの近くに腰を掛けると、


「お前またやつれたな?もっと食べないと。女は少し太ってるぐらいがいいんだよ。」と心配そうに言う。


「オースティンの好みでしょそれは。」


「それもそうだな。」


「ふふふ。」


「それを抜きにしても、お前はもっと肉をつけないと。」


「動いていないのに私結構食べているのよ?ディアンお兄様がね、私の好きなりんごの皮を剥いてくれるのだけどね?1個剥くのに30分かかるのよ。何でも出来るお兄様も苦手のことがあると思うとなんか嬉しくて。ふふ。」


「なぁエミリア。今回は何があったんだ?ディアンが心配しているぞ?」


「・・・・・。」


「ほら。ディアンには言わないから、オースティンお兄様に相談してごらんなさい。」


「・・・・・。」


何も言わないエミリアをオースティンがじっと見つめている。


「エミリア。お前は大切な妹だ。お前が頑張りやでどれほど優しい女の子かもよく分かっている。だからこそもっと、ディアンにも俺にも甘えていいんだぞ?」


「オースティン・・・。私甘えてるよ・・・。」


「お前はもっとワガママになっていいんだぞ?思ったことをもっと口に出したりしてごらん?」


「オースティン。私の心はねすごく汚いの・・・。」


「人間皆そうだぞ?俺だって汚いぞ?」


「ううん。私ひどいことばかり考えるの・・・。」


「例えば?」


「言えないわ・・・。」


「今更お前の何を見たって聞いたって変わらんって。お前がおねしょを7歳までしてたのも知ってるし、それに『オースティン!』」


「悪い悪い。だから話してみな。ディアンには絶対言わないから。」


エミリアは、オースティンの昔から変わらない優しい目を見てつい話し始めてしまった。


「私ね・・・。殿下の事好きなの。」


「おう。知ってるぞ。お前は俺と出会った時にはすでに殿下が好きだっただろう?」


「え?」


「え?違うのか?」


「小さい頃は好きってよく分からなかったもの。」


「俺から見たら、殿下とお前の関係は特別に見えたけどな。」


「大切な幼なじみだったわ。でも殿下と結婚するなんて考えたことも望んだこともなかったわ。シャイルと殿下が結婚する相手は、私なんかよりももっと素敵な人だと思ってたもの。」


「エミリアより良い女なんて中々いないぞ?」


「ふふふありがとう。でも、それはオースティンが妹馬鹿なのよ。私結婚なんてしたくないと思ってたの。お兄様の幸せを見届けたら、修道女になろうと思ってたわ。」


「また、極端な事を考えてたんだなお前・・・。」


「でも・・・。殿下の婚約者になってしまったわ。殿下は優しいから・・・。私って、いろんな人を心配させる才能があるでしょ?良かれと思ってしたことも、いつも裏目に出て心配かけてしまうもの。家の役に立ちたいと思って受けようとした婚約が、こんな形で殿下に迷惑かけてしまうなんて・・・。」


「お前のことがみんな心配でたまらないのは、お前のことが好きだからなのは分かるだろう?」


「分かってるわ。ほっとけないのは、私がこんなんだからよね・・・。両親と兄を亡くし・・・。その上しょっちゅう倒れたり・・・。だからみんな憐憫を抱いているのよ。」


「エミリア・・・。」


「だから優しすぎる殿下は私との婚約を断れなかったのよ。」


「それはあくまでもお前の見解だろ?」


「ううん。私には分かるわ。あのね?リーリア様と殿下を見ていると分かるの。」


「リーリア王女?」


「リーリア王女を見る殿下は純粋に楽しそうに笑っているの。私にはいつも哀しそうに笑うのに。」


「リーリア王女か・・・。」


「あのね・・・。クロが死んでから、心にぽっかりと穴が開いたの。正直死んでしまいたいと思ったわ。そんな私を殿下は支えてくれた・・・。クロにだけ見せてきた不安定な私を、初めて見せたのが殿下だったの。情緒不安定で、突然泣き出す私を殿下はいつも大きな心で受け止めてくれたわ・・・。」


「うん。」


「私はそれから殿下に依存するようになったの。殿下が私の心の支えになったの。」


「それじゃ駄目なのか?お前と殿下は俺から見ると互いに想い合っているように見えたぞ。」


「私もリーリア様が来るまでそう思ってたの。憐憫ではなく私の事を大切に思ってくれてるからこそ、婚約も引き受けてくれたのだと・・・。いつか私のことを愛してくれるようになると思ってたわ。何年かかっても私は待てるもの。」


「それで、リーリア王女がどうしたんだ?」


「殿下と想い合ってるみたいなの・・・。」


「お前の勘違いじゃなくて?」


「うん・・・。殿下は優しいから、私の婚約破棄を言い出せないみたいなの・・・。」


「うーん・・・・。」


「オースティン・・・。私それでも殿下のことが好きなの・・・。」


「そうか・・・。俺がどんなに殿下がリーリア王女のこと好きじゃないって言っても、お前は信じないだろう?だから、お前の正直な気持ちを殿下に話してみろ。」


「オースティン、私怖いわ。もしそれで殿下に嫌われてしまったら・・・・。」


「大丈夫だよ。そんなことでエミリアを嫌いになる殿下じゃない。エミリアだって分かるだろ?」


「うん・・・・。」


「もしそれで・・・。万が一だけど・・・。殿下が婚約破棄したいって言うのならば、お前は俺がもらってやる。な?お前となら兄妹仲良く暮らしていけそうだし。」


「オースティン・・・。ありがとう!頑張るね!」


「おうよ!お前は手のかかる妹だ全く。」


二人の間には一切恋愛感情は存在しなく、一般の実の兄妹よりも仲の良い兄妹の関係だった。



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