距離~エミリア16歳~
季節は夏になった。リーリアとアルフォンスがどんどん仲良くなっていくのに対して、エミリアとアルフォンスの距離は離れていった。
二人きりになれる大切な時間である送迎の馬車には、王宮に滞在しているリーリアがいつの間にかアルフォンスと共に迎えにきて一緒に帰るようになっていた。リーリアに決して悪気があるわけではなく、「せっかくだから一緒に行きましょうよ!エムとアルと登下校したいわ!ね?」と頼まれ、エミリアは頷くしかなかったのだ。
二人は政治学の授業で課題のグループが一緒らしく、馬車の中でもずっと討論していた。窓の外を見つめるエミリアの顔は暗かった。
あの告白以来、何故かエミリアの下駄箱には大量に多くのラブレターとファンレターが入っているようになった。毎朝手紙をかかえ嬉しそうに歩くエミリアを、アルフォンスは不機嫌そうに見ていた。
エミリアは、二人一緒の姿を見るのが日に日に辛くなった。シャイルもいるし、二人はあくまでも仲の良い友人なのは分かるが、いつかアルフォンスに婚約破棄されるのではないかとビクビクしていた。
そんなエミリアは以前のようにアルフォンスに甘える事がなくなった。しょっちゅう泣いているエミリアは、面倒くさくて嫌われると思ったのである。
最近となっては、昼食を食べ終わるとすぐに『用事がある』と言って図書館に入り浸っていた。そんなエミリアをアルフォンスは引きとめようともしなかった。
エミリアと婚約破棄をし、リーリア王女と婚約するのでは?というのが最近の学校中の噂だった。
アルフォンスとの婚約がなくなったら、何を心の支えに生きればいいのかエミリアには分からなかった。




