嫉妬~エミリア16歳~
また年が変わった。エミリアは高等部ニ年生になった。アルフォンスのことをどんどんエミリアは好きになっていく日々を送っていた。
恋をしているエミリアはどんどん美しくなっていった。男子生徒はエミリアをみかけると顔を赤くして見つめたし、女子生徒はエミリアの持ち物や洋服全てを真似をしていた。そんなことに一切気づかないエミリアは、最近思いつめた表情をしていた。
実は、高等部三年のアルフォンスのクラスに、フォスタ王国のリーリア第二王女が留学してきたのである。王族専用サロンに二人きりでいる(シャイルも実はいる。)とか、転びそうになったリーリア王女をアルフォンスが抱きとめたとか、実は二人は恋人なのでは?と学校中で噂になっていた。
―リーリア様は昔アルフォンス様と結婚したいっておっしゃっていたわ。それにリーリア様あんなにかわいらしいもの。アルフォンス様が好きになってしまったらどうしよう・・・。―
そんなことを悩み思いつめた表情はエミリアをより一層美しく見せていた。
リーリアは、天然だが明るく誰にも好かれるような性格をしていた。まだ入学して一週間なのに、すでに大勢の友達に囲まれていた。エミリアは羨ましかった。
昼食はカフェテリアでアルフォンス・シャイルと3人で食事をしていたが、アルフォンスと同じクラスのリーリアがそこに加わるのは遅くはなかった。
いつもはエミリアが先にカフェテリアで待っているのだが、授業が少し伸びたためその日は急いで向かっていた。先についていたアルフォンスとシャイルが、リーリア王女と楽しそうに笑い合ってるのを見たエミリアは、つい元来た道を引き返していた。
その時だった。突然クラスメートである男子生徒に、「お時間いいですか?」と声をかけられたのである。いつもなら「ごめんなさい。急いでいるの。」と断るエミリアだったが、その日は頷きついていった。二人で空き教室に入る。もちろん戸は開けっ放しだ。
「突然すいません。僕のこと分かりますか?」
「はい。ヘンリー様。」
「名前を覚えていてくださるなんて光栄です。突然すいません。実はエミリア様のことが初等部の頃から好きだったんです。もちろん立派な婚約者をお持ちでいらっしゃるのを理解しています。ですが、気持ちだけでもお伝えしたくて。」
「すごく光栄です。ありがとうございます。」頬赤らめながらお礼をいうエミリアに、ヘンリーも顔を真赤にする。
「いいえ。それではお時間取らせてしまい申し訳ありませんでした。」
そう言い出ていくヘンリーをエミリアは見送った。椅子に座り頬を抑える。初めて告白をされて、エミリアは嬉しい気持ちになった。
―私のこと好きだと言ってくれる人に初めて会ったわ。告白されるってこんなに嬉しいのね!―
「エミリア!」という鋭いシャイルの声にエミリアは慌てて立ち上がった。
「あ・・・。シャイル・・・。」
「お前何やってるんだよ。授業終了のチャイムから15分経ってるぞ。」
「あ・・・。そんなに?ごめんなさい。」
「殿下とリーリア様が待っている。早く行くぞ。」
そう言い出ていくシャイルの後ろを追いかける。
「シャイル、探してくれたの?」
「トイレのついでだよ。」そう言いつつも息をきらしているのを見ると、探しまわってくれたのであろう。
「シャイルありがとう。」―こんなに探してくれたのだもの。告白されてたなんて言えないわ。―
カフェテラスに着くと、リーリアとアルフォンスが笑い合っているのが目に入る。楽しそうな様子に胸が痛んだ。―アルフォンス様は探しに来てくれなかったのね―と思ったが、
「あ!エム!」と呼ぶリーリアに無理やり笑顔を作ったのであった。
「お待たせしてごめんなさい。」
「エム遅かったね。どうしたの?」心配そうに聞いてくるアルフォンスに、
「なんか空き教室に1人で頬抑えながら椅子に座ってたんだよな・・・。」とシャイルが答える。
「何でもないわ。さぁ食べましょう。」と言うと、ちょうどタイミングよくウェイターが料理を運んできたので、食べ始めたのである。
その後授業が終わった後、いつもどおりアルフォンスが迎えに来た。いつもどおりには見えるが、エミリアには機嫌が悪いことが読み取れた。馬車に乗った後、
「告白されてそんなに嬉しかった?」とアルフォンスが不機嫌そうに言う。
「え?え!!!!」
「どうして知っているのかって?学校で噂になっているよ。エミリアに告白した男がいるって。」
「あ・・・。ごめんなさい。」
「別に謝る必要はないけど。エムは僕の婚約者なんだから、簡単に男と二人きりになるのは避けてほしい。分かるよね?」
「ごめんなさい。今度からは気をつけるわ。」
―私のことを好きだから嫉妬しているわけではないのね。王子の婚約者として未熟だから怒ったのね・・・。自分はリーリア様と二人きりでよくいるのに。―
しょんぼりとしているエミリアに対して、アルフォンスは不機嫌そうに窓を見つめていた。




