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婚約~エミリア15歳~

エミリアはこの春高等部に入学した。少しずつ食欲も回復し、通常の女子の半分は食べれるようになっていた。ディアンは王宮に出仕するようになった。


あれから兄妹の仲は緩やかに回復し、公爵領の経営も黒字になり未来は明るかった。


そんな時だった。領地にいるはずの叔父が、エミリアが学校から帰宅すると来ていた。久しぶりの再会をエミリアは喜んだが、叔父の表情は暗かった。ディアンは王宮の仕事が忙しく、まだ帰宅してなかった。


「叔父様。暗い顔してどうしたの?」


「エミリア・・・。」


「何かあったの?」


「エミリアすまない・・・。俺が考えた事業が失敗して・・・。」


「え・・・。損害は?」


「一億ペイ・・・・・。」


エミリアは絶句した。ペイはお金の単位で、10ペイでりんごやパンが1つ買える金額だ。一億ペイとなると、公爵領の二年間の財源だった。


「どうしよう・・・・・・。」


三年間かけやっと黒字に戻したのだ。そこにつぎ込んだディアンの犠牲を考えると叔父をなじりたくなった。また最愛の兄デュークもそれが原因で失ったようなものだ。エミリアは良く思うのだ。もっと自分がしっかりしていて、デュークを無理させなければ失うことはなかっただろうと。


だからと言って叔父を責めることも出来るわけがなかった。父が死ぬまでは世界中を旅行し経営とは無縁に生きていたのだ。父の代わりに兄妹を、文句も言わず支え続けていてくれた。朗らかで優しい叔父がエミリアは好きだった。


「叔父さん・・・。どうしよう・・・。ディアンお兄様に伝えなきゃ・・・。」


「エミリア・・・。実はな、借金の肩代わりをしてくれる人がいるんだ。」


「え?」


「無償で肩代わりをしてくれるそうなんだ。ただ条件があるんだ・・・。」


「条件?」


「それは、エミリアとの結婚だ・・・。」


「結婚?私との?」


「エミリア本当に申し訳ない。俺のせいで・・・。でも助けてほしい・・・。」


「それは誰なの?」


「コリン王国の王弟だ。エミリアより25歳年上になるが・・・。」


「25歳・・・?40歳なのね・・・。」


「エミリア、本当にすまない・・・。」


目に涙がにじんでいる叔父にエミリアは優しく笑う。


「いいのよ叔父様。叔父様は私達のために人生を犠牲にしてくれたわ。私の結婚との引き換えに1億ペイ支援してくれるなんて安いものじゃない!私も公爵家のために役立てて嬉しいわ!」


「エミリア・・・・。」叔父は泣き出す。


「叔父さん大丈夫よ。泣かないで!ね?高等部卒業まではきっと結婚待ってくれるはずだわ!まだ三年間もあるもの。もうすぐお兄様も帰ってくるわ。さぁご飯にしましょう!」


その後ディアンが帰ってきて、叔父との再会を喜んだ。しかし、夕食後に事情を聞くと顔色を変え反対した。


「エミリア。お金との引き換えに君が行く必要はない。また叔父さんと力を合わせれば取り戻せるよ。それに以前のように経営に不慣れな僕じゃないよ。」


「それでも何年かかるかわからないわ。私が役立てるのなら私は行くわ。」


「エミリア。俺は絶対許さない。」


「お兄様が許さなくてもいいわ。私は行くわ!」


「エミリア!」ディアンが怒鳴る。


「お兄様お願い!行かせて!」負けじとエミリアも言い返す。


「絶対に許さない。25歳も年上だなんて・・・・。エミリアが行く必要がない!」


「叔父様、お兄様のこと気にしなくていいわ。王弟様に返事して。」


そう言いエミリアは部屋から出ていき自室に鍵をかけ閉じこもる。追いかけてきたディアンが、


「エミリア開けてくれ。話をしよう。」


と扉を叩きながらずっと言っていたが、返事のないエミリアにディアンはどこか出かけたみたいだった。


次の日、エミリアが朝食を食べに階段を降りて行くと情況が一変していた。先に朝食を食べていたディアンが、


「エミリア。いいか?よく聞け。婚約者が決まった。アルフォンス殿下だ。」


と言ったのだ。


「え?お兄様何を言ってるの?」


「お前の婚約者は、アルフォンス殿下だ。」


「お兄様!どうして?何故?何をしたのよ!」


「昨夜、俺が陛下に殿下との婚約を申し込みに行った。」


「お兄様一体何てことを・・・。なんて無礼なことを・・・。」


「陛下も王妃様も喜んで応じてくれた。一億ペイも支援してくれるそうだ。」


「お兄様・・・。殿下は?殿下の気持ちは?ねぇ・・・。」


「安心しろ。殿下も承知してくれた。」


エミリアは力なく床に座り込む。


「いいかエミリア。お前をそれだけコリン王国の王弟に嫁がせたくないんだ。」


「不敬罪になってもおかしくないのよ・・・。陛下に事前の御目通りもせず、ましてや夜に押しかけるなんて・・・。」


「とにかく決まったことだ。アルフォンス殿下は将来国王となる。お前は未来の王妃だ。これからより一層勉学に励むように。すぐに王妃教育もはじまるだろう。」


そう言いディアンは部屋から出て行ったのだった。









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