出会い~エミリア4歳~
アルフォンスとの出会いはエミリアが4歳の時だった。
今春、次兄のディアンが7歳になる。それで王都にある王立学園の初等部に入学するのだ。ウィズリー公爵領は王都から列車で約3時間かかるので王都の屋敷に住まなければならない。それならばと、母とエミリアも一緒に王都の屋敷に住むことになったのである。
宰相で王宮に勤めてる父と長男のデュークは王立学園の中等部に通っているため王都の屋敷に住んでいる。そのため家族みんなで過ごせるのは月に1回もない。仕事人間で厳しい父がエミリアはちょっぴり苦手なのだが、いつもエミリアに優しいデュークは大好きだ。
それもそのはずディアンとデュークは7歳離れている上に、デュークは体が弱かった。また厳しい父からの跡継ぎ教育で多忙を極めていたので、兄弟で一緒に遊ぶことがあまりなかった。そのため、少し寂しかったディアンは何かとエミリアを可愛がったのである。しかし、ディアンはエミリアが可愛すぎて虐めて泣かせることが多かったので、エミリアはディアンより優しいデュークが好きだった。
王都に来て1週間経った頃、初等部に通い始めたディアンの同級生のアリアンヌ第1王女が弟のアルフォンスを連れて遊びに来たことが、エミリアとアルフォンスの出会いだった。
領地ではいつも使用人たちや領民の子供達と外で遊ぶことが許されていたのに、王都では屋敷から外出も出来ない上に、教育熱心な父が手配した家庭教師にしごかれることしかない。日増しに元気が無くなっていくエミリアをディアンが心配したのだ。そしてアルフォンスも王宮以外から出ることもなく、極端な人見知りで泣き虫だった。未だに母親離れできない弟をアリアンヌ王女も心配していた。
そんなこんなで2人は出会ったのである。
その日は春の晴天で空が青く風が気持ち良かったので、エミリアは1人で庭で花冠を作っていた。出来たらお母様にあげようと思いながら作っていた。ふと、
「エミリア」
とディアンに呼ばれたので振り返ると、髪は鮮やかな黄金色で、日の光に当たりキラキラしていて、目は綺麗な青色をした可愛い子が2人立っていたのである。二人共そっくりなので姉妹とすぐに分かったのだが、妹のほうが姉に隠れるようにして立っている。
「あなたがディアンの妹のエミリア?」
「はい。」
「エミリア。こちらは第1王女のアリアンヌ王女だよ。僕の学友なんだ。そしてこちらが第1王子のアルフォンス殿下だよ。エミリアより1つ上の5歳だよ。」
「初めまして王女様。エミリア・ウェズリーです。」
「4歳なのにしっかりしてるのね。ほら、アルフォンスも挨拶しなさい。」
王女はアルフォンスを前に出す。アルフォンスは人見知りのせいか口を開かず、アリアンヌ王女のスカートを握りしめている。
「男の子だったのね。女の子だと思ったわ。でも今はなんか赤ちゃんみたいだね。」
エミリアが不思議そうに言うと、アルフォンスは遂に泣き出してしまったのである。
「アルフォンス殿下申し訳ありません。」
ディアンが顔色を変え慌てて謝ると、アリアンヌ王女が
「いいのよ全然。ほら2人で庭で遊んでなさい。私たちは宿題やりましょう。」
そう言って強引にディアンを連れていってしまったのだ。