第2話
「すみません。ここは亡くなることが決まっている方しか連れてくることができない決まりになっているんです。なので生き返らせることは出来ないかと思います」
ゼクスさんが下げていた頭を上げ、申しわけなさそうにそう言った。
「他にもいくつかの理由はあるのですが……。取りあえず、説明をさせてもらってもよろしいですか?」
ゼクスさんの説明によると、ゼクスさんたちは地球とは違う世界を管理する神様の部下らしい。その神様が管理する世界のうち1つに魔法が存在する王道なファンタジー世界がある。その世界で魔法を使うために必要なマナと呼ばれる物質が不足し、世界が危機に陥りかけている。そこで、魔法が存在しないため、マナが世界に有り余っている地球からマナを譲ってもらおうということになったそうだ。地球からゼクスさんたちの世界へマナを移すには通り道となるものが必要で、地球で亡くなってしまう人をゼクスさんたちのいる世界へ転移させることで通り道として固定しようと思ったそうだ。そこで、年齢などを考慮したうえで、もう少しで亡くなるはずだった間宮鈴音さんを選んだそうだ。
「いざ間宮鈴音さんをこちらへ連れてこようとなったとき、どうしても外せない仕事が入りまして。他の天使も手が空いているものがいなかったので、新人のリュークが1人で行くことになったのです。いくら新人といっても、資料に書いてある方をお連れするくらいはできるだろうと思ったのと、間宮鈴音さんがお亡くなりになるまでに時間が無かったのとで送り出したのです。それをこの馬鹿は……っ」
「だ、だって近くに似たような名前の方がいるなんて思わないじゃないですか!しかも、髪型や身長だって同じ感じですしっ」
「だってじゃない。名前や髪型や身長が似た感じだったのは分かった。だが、そもそも年齢が違うだろ。この方は19歳だが間宮鈴音さんは20歳だ。年齢を確認するくらい、地球でもできるだろう。……すみません、話がずれました。それでこの馬鹿に貴方は間宮鈴音さんと間違って連れてこられ、貴方と間宮さんの運命が入れ替わってしまった、というわけです」
ゼクスさんは説明を終えるとまた、私に頭を下げてきた。
「申し訳ありません」
「え、あのなんでゼクスさんが謝るんですか。ゼクスさんは悪くないじゃないですか。悪いのはそこの金髪の馬鹿天使だけなんですし。頭を上げてください」
「いえ、私はこの馬鹿の教育係をしてるのです。だから私にも罪はあります」
うわ、ゼクスさん、こんな馬鹿の教育係なんて可哀想……。
「とりあえず、はっきりしたことを聞くために、私たちの上司の神様をお呼びしますね。……おい、リューク。ちょっとお前、大急ぎで神様呼んで来い。その間に必要な説明は私がしておくから」
「はいっ!……本当にすみませんでした、雨宮さん。では失礼します」
そう言うとリュークはもの凄いスピードで飛んで行った。
神様とか、やっぱりテンプレだ……。
「それでは、リュークが行っている間に残りの説明をさせてもらいますね。とりあえず、生き返れるかどうかは置いといて、貴方に私たちの世界に来ていただくことは変わらないと思います。地球の神様に連れて行くのは1人だけだと言われているので、貴方がここに来てしまったからには変えられないのです」
「あの、ゼクスさん……でいいんですよね?ひとまず異世界に行くことは嫌ですけど、納得はしました。神様の言うことに逆らうのもどうかと思いますし、私が行かなきゃならないのであれば、行きます」
いや、納得したとか言ったけど本当は嫌だからね?そこ、勘違いしないでくださいよ?死亡するとかいう話じゃなければ異世界に行くとかちょっと楽しm……げふん、いえ、嫌なんですよ?
「ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。……そういえば自己紹介していませんでしたね。ゼクスといいます。よろしくお願いします、雨宮さん」
「あ、こちらこそよろしくお願いします。ところで、魔法があるってことは魔物とかいるんですか?あ、あと戦争とかしていたら困りますね。私、そういうのに太刀打ちできるような力持ってないですし」
「確かに魔物は存在していますね。戦争は今のところ起こっていません。さすがにこれからのことは分かりませんが、今は戦争になりそうな国はありませんので、しばらくは大丈夫かと思います。力に関しては、こちらもマナの通り道になっていただく方に早い段階で死なれては困るので、貴方の現在の能力を元にし、貴方の魂が許容できる範囲であちらの世界の能力を授けますので、安心してください」
マジで!?ってことは、私も憧れの魔法が使えるようになるってことかなっ?それはすごい楽しみ!!
「そうですね、リュークたちが来るまで、どんな世界か説明しておきますか」
「あ、ありがとうございます」
え、そんな微笑ましいって顔で見ないでほしいです……。ゼクスさんもリュークとはまた違った超絶美形なんです。微笑とか見てしまうと心臓がやられかけたではないですか。ええ、ええ、嫌だとか言ってたくせに魔法使えるかも、と聞いてテンションはとっっても上がりましたよ。それは認めますよ。でもそんなに顔に出てましたかね?出したつもりは全くないんですけどね。
私の中では、リューク→わんこ系イケメン ゼクス→クール系イケメン のイメージがありますね。