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王たちの機械  作者: 谷口由紀
断章
27/33

螺旋

 ――長い長い螺旋階段を、昇る。

 無心に。先を行くナイマの背中を見つめながら。


(案外、華奢なのね)


 目の前で揺れる、鮮やかな赤色のトーガ。砂漠の中では、目が覚めるようにはっきりと見えたその姿も、無機的な構造物のなかでは、まるで足下にわだかまる暗がりに溶けていくような、そんな不確かなものに見えた。


 ナイマは、敵か、否か。

 その真意は、トウカには測りかねた。彼女が語ったこと。つきつめれば、それはキリアへの執着がすべてだ。


「――ねえ」と、トウカ。


「なによ」と、ナイマは振り向きもせず答えた。


「この先にはなにがあるの? ざっとでいいから教えてくれない?」


「そうね……。まず、いま私たちが昇っているのが、わたしたち『地上の者』の、整備施設がある階層ね。で、この上には、第二の広間である「空中庭園」、そこから先には、わたしたちの素体を生産する施設がある」


「なるほどね。このあたりが整備施設だというのなら、まず、あなたの腕を治していけばいいじゃないの」


 そう持ちかけると、ナイマは、だめよ、と頭を振った。


「たしかに、ここにはスペアパーツもあるのだけれど、人工神経系の接続には、かなりの時間がかかってしまうの。それに、つながってからの調整も手間でね。だから、今は急ぎましょう」


「それはいいけど、もしもつらいようだったら、私だけで上に行くわ」


「……痛がりのあなたたち『人間』とは違う。私たちにとっての『痛み』とは、ただの破損箇所を示すためのシグナル。気にしないで」


 足を止めることなく、上へ、上へと向かう。

 さきほどの話によれば、次は「空中庭園」というところに着くのだろう。


 だが、ナイマの負傷について触れてしまったことは、余計だったのかもしれない。

 ナイマの独り言が、だんだんと敵への恨み言へと変化していった。


(ま、足を止めなければ、相槌くらいは打ってあげるわ)


 ――急がなければ。ユウリ。キリア。

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