第2話 生徒会の人達
無間光闇さん、タマザラシさん、ご感想ありがとうございます!
※1部修正しました
俺は今、父さんに連れられて、生徒会室の前まで来ていた。
「ここが、生徒会室……」
「あんまり緊張するなよ」
緊張するなと言われてもなぁ…。
だがここで立ち止まってても仕方ない、中を見てみるか。
そう思った俺は扉に手をかけて、ゆっくり開けた。
「失礼します…」
「あ、いらっしゃい。翠川竜也君」
そこで見た光景は、書類の山と向かい合わせになりながらきちんと仕事をしている、生徒会役員である四人の姿だった。
………あれぇ? 仕事してないんじゃなかったんでしたっけ?
父さんから聞いた話と全く違ったので戸惑っていると、いきなり手を叩いて言った。
「お前らが仕事をしてないことは既に話してあるから、誤魔化しても無駄だぞー」
「「「えぇ!!??」」」
父さんの言葉に四人中三人が揃って驚くと、そのうちの一人がため息をついた。
それをまるで合図かのように聞くと、それぞれだらけたり携帯を弄り始めたりしていた。
「え? え? え?」
「ああ、すみません。慣れていなければ驚きますよね」
慣れていても驚くと思うんだが…と言う言葉は無理矢理呑み込み、こっちに歩いてきた、目の前にいる人をジッと見る。
顔に眼鏡をかけていて、どちらかと言うと女の子のようだ。しかしそれに反するように背が高い。おそらく三年生だろう。いかにも女子にモテそうだ。
その視線に今更気がついたのか、こっちを見て微笑んだ。
………前言撤回。これは嫌な意味で男子にもモテているだろう。一回でも女子だと思い込んだら、頭でわかっていても男子として接するのはほぼ不可能だろうからな。
しかし一応確認しておくか。もしかしたら女子かもしれないしな。たとえ男子の制服を着ていてもだ。
「あの…男子、でいいんですよね?」
「っ!!」
俺がそう言うと目を見開き、両手で俺の右手を包み込んだ。
「僕と初対面で男子だとわかってくれたのは、あなたが初めてです!」
「へ?」
今、『初めて』って言ったか……?
じゃあ、なんだ? 今までは初対面だと女子だと思われていたのか?
いや、いくらなんでもそれはないだろう。どんなに女子のような顔だったとしても初対面で男子だとわかったのが俺だけ、だなんて。
そんな考えを覆すかのように、彼は言葉をどんどん紡いで言った。
「いやー、まさか本当に優奈の占い通りになるなんて! 今までこれっぽっちも信じていませんでしたが、優奈の占いは信じるようにしておきましょう! なんたって、こんな素晴らしい人に会えたんですから!」
所々に毒舌が混ざっていたが、いきなりことすぎて一瞬意識が飛びかけた。
話の内容からして、さっきの考えはおそらく当たっているだろう。それがわかった以上、これは考えても仕方がない。それよりも……
「今、『優奈』って言ったか…?」
占いが得意で優奈と言う名前。そんな人、一人しか思い出せない。いや、一人しかいない。
「もしかして、高橋優奈のことか?」
俺が小声でそう言ったら、いきなり生徒会室の扉が開いた。
驚いて振り向くと、さっき話題に出ていた張本人、高橋優奈がいた。
彼女は『この学校にいる高橋優奈と言ったら?』と聞いたら、十人中十人が『占いが当たる確率が百発百中な人』と返してくると予想できる位の有名人だ。それに明るくて人付き合いがいいため、友達もたくさんいる。
だが、俺は彼女が苦手だ。
学校に登校してきて「おはよう」と声をかけても睨まれて終了。プリントを渡す時も睨まれて終了。「また明日」と声をかけても睨まれて終了。何をしても最後は必ず睨まれて終了する。
嫌われてるのかな? と思い始めたら、いつの間にか俺は彼女が苦手になっていた。いつからだろう?
しばらく静寂に包まれたが、それを破るかのように高橋が話しかけてきた。
「……生徒会」
「へ?」
「翠川君、生徒会に入ったんだ」
「あ、ああ……。よろしく……」
もしかして好機じゃないか? そう思って言ってみたが、いつも通り睨まれて終了した。
……………なるほど。挨拶は求めていなかった、というわけか。
よく皆が「女子の考えていることがわからない」と溢していたが、今回ばかりはその気持ちがよくわかった。俺の場合、高橋に限定されているが。
すると肩に手が乗ったので振り返ってみると、そこには残りの…というか、初めに父さんの言葉に驚いていた三人と、手を握ってきた人がいた。
「えっと、あの?」
「はじめまして。生徒会長、月宮薫よ。よろしくね」
「あたしは多田出彩花! よろしくね、翠川竜也君!」
「俺は宮野東真だ。よろしくな!」
「僕は宮野風真。東真の双子の弟です」
「あ、はい。よろしくお願いします」
俺はお辞儀をした。それと同時にある疑問が出てきたので、言っていた張本人である父さんに聞いた。
「別に変わってないじゃん」
「フッ……わかっていないなぁ、竜也は」
まるで子供をからかうようなその顔、今すぐにやめろ。すっごくムカつくから。
そんな俺の心情に気づかずに、父さんは話を続けた。さっきの顔のままで。
「俺が言った『変わってる』っていうのは、見た目じゃなくて中身だよ」
「中身……?」
父さんは俺の言葉に頷くと、多田出さんを指した。
つーか人を指すな。一応アンタ、教師だろうが。
「まず、多田出は英語が得意だ。テストでは100点以外はとらない」
「すごっ!」
「そうだろう、そうだろう!」
後ろに『エッヘン』と言う言葉がついてもおかしくないような顔で腰に手を当てた。
「だが、それ以外の教科は30点をギリギリとれる位」
「………………………………へ?」
「ちょっ、それは言わなくてもよくないですか!?」
「何を言っている。じゃなきゃ何処が変わってるのかがわからないじゃないか」
「それは……そう、だけど……」
二人が何か言い合っているが、俺はただ思考回路が停止していた。
今、ナンテ言ッタ? 他ノ教科ハ30点以下……?
「………や、も……こい………や、竜也!」
「ハッ!?」
父さんの声が聞こえたと思ったら、それと同時に意識が現実に戻ってきた。
「竜也、大丈夫か?」
「あ、ああ……。なんとか……」
「もうっ、先生が余計なこと言うから〜!」
また二人が言い合っているがそれを無視し、後ろで必死に顔をそらしている四人のうち、近くにいた会長に声をかけた。
「会長、もしかして……」
「………仕方ないわ。こうなった以上、全部話すしかないわね」
どうやら腹を括ったらしく、会長は皆のことを話してくれた。
会長の話によると、どうやら五人全員が、一教科と四教科に分かれているらしい。
得意…というか、100点の教科を挙げていくと、会長は理科。高橋は数学。多田出先輩は英語。東真先輩は社会。風真先輩は国語らしい。
なんか、仕組まれたみたいだな……。いや、実際は本当に偶然なんだが。
そんな感じで話していると、いつの間にか六時半になっていた。って、スーパーに寄れなかった…。今日は久しぶりに大安売りしてたに……。
「そろそろ帰るか。竜也、俺と一緒に車で帰るか?」
「うん、そーするわ……」
「んじゃ、ちょっと待ってろ」
父さんはそう言うと、俺以外の五人を呼んで、何かを言った。それを聞いた五人は、目を見開いて俺を見た。なんだ?
「よしっ、帰るぞー」
「え、あ、わかった……」
俺は父さんが生徒会室を出ていったのを見て、慌ててついていった。
「竜也!」
すると誰かにに呼ばれたので振り向くと、さっきのような笑顔ではなく、真剣な表情をしている東真先輩がいた。
「先輩、どうしましたか?」
「あ、いや……明日の放課後、生徒会以外になんか用事あるか?」
明日? 明日は特にスーパーの安売りとか無かったはず。
「特にありませんけど……」
「なら明日、HRが終わったら屋上に来てくれ。話したいことがある」
「? わかりました」
話って……何だろう?
よくわからずに、俺は先輩の言葉に頷いた。
この時、父さんがニヤリと笑ったのに、誰も気がつかなかった――――。