第1話 俺が生徒会役員!?
『突然』という言葉は、今の状況の時などに一番合う言葉だと思う。
「竜也、生徒会に入る気はないか?」
「……………は?」
俺こと翠川竜也は、放課後にいきなり俺の父親であり、この学校の教師である翠川竜次に職員室に呼び出された。
なんだと不思議に思いながら職員室に行ってみたらさっきの言葉を言われ、今に至る。
念のために言っておくが、俺は特に何かが出来るわけでもなく、点数は平均点より少し高い位、運動も得意というわけでもなく、かといってそこまで出来ないというわけでもない。いわゆる普通の男子中学生だ。
そして生徒会はこの学校を代表すると言ってもいいほど優秀な人の集まりと噂されているほどすごい場所だ。
そんな生徒会にごく普通の俺が入ることを想像する。
………なんか、とても場違いな気がする。
「お断りします」
「そう言うと思った。だが残念、もう既に生徒会の一員になっている」
「じゃあ何で『入る気はないか?』って聞いたんだよ!?」
たまにこの父親の思考回路がわからなくなる。
しかし嘘をつくことはない。それは前の経験からわかっている。となると……俺、本当に生徒会役員にされたのか? 話すら聞いていないのに?
「何で勝手に入れるんだよ! つーか何で入るのが俺なんだ!? 他の人に頼むっていう選択肢はあっただろ!」
「お前なら勝手に入れてもいいかなと思った」
「この差別親父ぃ――――っ!!」
俺なら勝手に入れてもいいと思ったのかよ! それでも俺の父親か!? いや、それ以前に教師としてどうなんだよ!
だがこうなった以上、俺は生徒会に入るしかなくなる。こいつは一度決めたら絶対に揺るがないからな。
………ん? それじゃあ家事はどうなるんだ?
生徒会に入れば帰りは絶対に遅くなるだろう。そして家事をやっているのは俺で、父さんは全くと言っていいほど出来ない。つまり、俺は生徒会の仕事が終わり、疲れながらも家事をやらなければならない…ということになる。
「お前は実の息子を殺すきか!」
「何でだ!?」
あれ、俺の言ったことに驚いてる。じゃあもしかして、もしかしなくても父さんが俺の代わりに家事をやってくれるのか?
「勘違いしているなら言っておくが、俺は家事などやらん。というか出来ん。だが、お前が疲労で倒れるほど生徒会の仕事をやるわけでもない」
「は? 生徒会って、意外と仕事が少ないのか?」
それならさっきの言葉も納得がいく。
生徒会は俺達が想像するほど仕事がきているわけでもない。だから俺が学校から帰ってきて家事をやったとしても、倒れるほどでもないと言うことか。
そりゃ確かに生徒会に仕事を大量に押しつけて、一人でも生徒が倒れたら、学校の風評が悪くなるかもしれないしな。
「いや、うちの生徒会は仕事を全くしていない」
「生徒会の意味無いじゃねぇか!」
そんなんでよく『この学校を代表すると言ってもいいほど優秀な人の集まり』なんて噂が流れたな!
いや、そりゃ生徒会は仕事がたくさんあるとイメージが強いから、そんな噂が流れただけなのかもしれないが!
「ま、後はお前が直接本人達に会って、あの噂が本当か否かを確かめろ」
「ハァ、わかったよ……」
本当に生徒会に入ることになるのか……。面倒くさい……。
仕方ない、さっさと挨拶を済ませるか。今日はスーパーで大安売りしている日だからな。早く行かないとなくなっちまう。
そう思った俺は、父さんと一緒に生徒会室へと向かった。
………ちなみに余談だが、生徒会の顧問をしているのは父さんらしい。