相場の掲示板#5
侯爵は、厳粛な顔で言った。
「セブン・ヴォルト代表者セラド、およびハインリヒ——お前たちの不正が確認された」
「……」
「金庫からの窃盗、相場操作——これらは、街の秩序を乱す重大な犯罪だ」
「はい……」
「よって、以下の処罰を命じる」
侯爵は、紙を読み上げた。
「一、セラドは、シルバ500枚の罰金を支払うこと」
「二、ハインリヒは、シルバ1,000枚の罰金を支払うこと」
「三、セブン・ヴォルトは、三ヶ月間の営業停止を命じる」
「四、セブン・ヴォルトは、レギス・レジャーの金庫から盗んだ銀貨——223枚——を全額返還すること」
「五、今後、セブン・ヴォルトの両替業務は、評議会の監督下に置く」
民衆は、拍手をした。
「よくやった!」
「侯爵様、万歳!」
「レギス・レジャー、万歳!」
俺は、ほっとした。
勝った。
公開裁判で、セブン・ヴォルトを裁いた。
そして——この街の金融を、正しい方向に導いた。
実務長が、俺の肩を叩いた。
「よくやった、レオン」
「ありがとうございます」
侯爵は、続けた。
「そして——レギス・レジャーの行員、レオン・ミナト」
「はい」
俺は、立ち上がった。
「お前の働きを称える。市場の透明性を高め、不正を暴いた。これは、街全体への貢献だ」
「ありがとうございます」
「今後も、街の金融を正しく導いてくれ」
「必ず、やり遂げます」
俺は、深く頭を下げた。
民衆は、再び拍手をした。
公開裁判が、終わった。
だが——その後、ある人物が俺に近づいてきた。
神父マティアスだ。
「レオン・ミナト」
「マティアス神父……」
「お前の勝利を、祝おう」
「ありがとうございます」
「だが、忘れるな」
マティアスは、厳しい顔をした。
「透明性は、良いことだ。だが、利を取ること——それ自体は、罪だ」
「……」
「今は、月利1パーセントだから、許容している。だが、もしこれ以上上げれば——教会は動く」
「わかっています」
「よろしい」
マティアスは、そう言って去っていった。
俺は、その背中を見送った。
そして——思った。
教会との戦い——それは、まだ始まったばかりだ。
だが、今日はセブン・ヴォルトに勝った。
そして——この街の金融を、一歩前に進めた。
その日の午後——午後一ベル——『レギス・レジャー』に、たくさんの商人が訪れた。
「レオン殿、おめでとう!」
「よくやった!」
「これからも、頼むぞ!」
商人たちは、口々に祝福の言葉をかけてくれた。
俺は、一人一人に頭を下げた。
「ありがとうございます。これからも、頑張ります」
ミラも、嬉しそうだった。
「レオンさん、すごかったですね」
「ミラさんのおかげでもあります」
「わたしは、何もしてないですよ」
「いいえ。あなたがいなければ、ここまで来られませんでした」
「……ありがとうございます」
ミラは、少し照れたように笑った。
実務長も、満足そうだった。
「レオン、今日からお前を正式に昇格させる」
「昇格……?」
「ああ。帳方主任だ。ミラを含む帳方全員を統括してくれ」
「本当ですか!」
「ああ。お前なら、できる」
「ありがとうございます!」
俺は、深く頭を下げた。
そして——心の中で、思った。
帳方主任——責任は重い。
だが、やりがいもある。
これで——もっと大きな仕組みを作れる。
約束札、預かり札、時間代、輸送保険、相場の透明化——
これらを、さらに発展させる。
そして——いつか、この街の金融を完全に掌握する。
俺は、拳を握りしめた。
その日の夕方、俺は中央広場に戻った。
掲示板を見ると、すでに新しい紙が貼られていた。
誰かが、公開裁判の結果を掲示板に書いていたのだ。
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【公開裁判 判決結果】
銀章暦三二年コナト月三〇日
[セブン・ヴォルト不正事件]
判決: 有罪
処罰:
セラド: 罰金シルバ500枚
ハインリヒ: 罰金シルバ1,000枚
セブン・ヴォルト: 営業停止3ヶ月
盗難銀貨: 全額返還(223枚)
今後の監督: 評議会による
民衆の声:
「セブン・ヴォルトは、泥棒だ」
「レギス・レジャーを支持する」
「透明性こそが、正義だ」
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俺は、その掲示を見て、微笑んだ。
——これで、街全体に広まった。
セブン・ヴォルトの不正と、レギス・レジャーの正しさが。
だが——その時、背後から声がした。
「レオン・ミナト」
振り向くと、評議会の一人——商人ヴォルフガング——が立っていた。
「ヴォルフガング様……」
「お前の勝利を、祝おう」
「ありがとうございます」
「だが、気をつけろ」
ヴォルフガングは、声を低めた。
「評議会の中には、お前を快く思わない者もいる」
「それは……」
「お前は、あまりにも急速に力をつけた。それを恐れる者がいる」
「なるほど……」
「特に、宗教勢力だ」
「教会……」
「ああ。マティアス神父は、まだお前を容認している。だが、教会の上層部は違う」
「上層部……?」
「ああ。大司教——ベルンハルト——は、利を取ることを強く非難している」
「大司教……」
「もし彼が動けば、お前の時間代の仕組みは潰される」
「……」
俺は、拳を握りしめた。
「わかりました。気をつけます」
「頼む」
ヴォルフガングは、そう言って去っていった。
俺は、夕日を見上げた。
戦いは、まだ続く。
セブン・ヴォルトは倒した。
だが——次の敵が、もう見えている。
宗教勢力。
評議会の反対派。
そして——もっと大きな力。
だが——俺は負けない。
仕組みで、勝つ。
透明性で、勝つ。
それが、俺のやり方だ。
俺は、レギス・レジャーに戻った。
明日から、新しい戦いが始まる。
だが、今日は——仲間たちと一緒に勝利を祝おう。




