表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界金融帳実務録 ~転生銀行員が金融知識で成り上がる~  作者: しじむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/60

時間代という名#2

実務長の部屋をノックすると、中から声がした。


「入れ」


俺は扉を開けて入った。

実務長は、机に向かって書類を読んでいた。


「レオンか。どうした?」


「実務長、利息の計算について相談があります」


「利息の計算?」


「はい。商人たちが、計算方法を理解できていません」


「……ああ、そうだろうな」


実務長は、苦い顔をした。


「複利は、わかりにくい」


「ですから、わかりやすい表を作りたいんです」


「表?」


「はい。借入額と期間を見れば、利息がすぐにわかる——そういう表です」


「なるほど……」


実務長は、少し考えた。


「だが、このまま複利で計算するのか?それとも単利か?」


「それを、相談したかったんです」


「ふむ……」


実務長は、腕を組んだ。


「複利の方が、商人たちには難しい」


「はい」


「単利なら、簡単だが……うちの利益が減る」


「そうですね……」


俺は、紙に計算を書いた。


「たとえば、100枚を一年間借りた場合——」

「複利(月利1パーセント):100枚×(1.01)の12乗=約112.7枚」

「単利(月利1パーセント):100枚+(100枚×1パーセント×12ヶ月)=112枚」

「差額:0.7枚」

「0.7枚……」


実務長は、計算を見た。


「確かに、差は小さいな」


「はい。短期の借入なら、複利と単利の差はほとんどありません」


「なるほど……」



「ですから、提案があります」


「提案?」


「短期(一年以内)は単利、長期(一年以上)は複利——こう分けてはどうでしょう」


「短期と長期で分ける、か……」


実務長は、少し考えた。


「それは、いい案だな」


「ありがとうございます」


「それとだが、一つ問題が起こりそうだ」


「問題?」


「ああ。利息を取ることに、反対する者がいる」


「反対……?」


「ああ。宗教勢力だ」


実務長は、声を低めた。


「街には、『聖なる光の教会』という宗教組織がある」


「聖なる光の教会……」


「ああ。彼らは、『利を取るのは罪だ』と主張している」


「利を取るのは罪……」


俺は、少し驚いた。

現代でも、イスラム教には利息禁止の教えがある。

この世界にも、似たような宗教があるのか。


「ですが、利息がなければ、貸し出しができません」


「そうだ。だから、俺たちは利息を取っている」


「教会は、それを知っているんですか?」


「知っている。だが、今まではセブン・ヴォルトが主なターゲットだった。セブン・ヴォルトは高利だからな」


「なるほど……」


「だが、お前たちが約束札や預かり札で市場を広げたことで——教会の目が、こちらにも向き始めている」


「それは……まずいですね」


「ああ。だから、気をつけろ」


実務長は、俺を真っ直ぐ見た。


「利息を『利息』と呼ぶな」


「利息と呼ぶな……?」


「ああ。別の言葉を使え。たとえば——『時間代』とか」


「時間代……」


俺は、その言葉を反芻した。


「金を借りる時間に対する対価——という意味ですね」


「そうだ。それなら、教会も文句を言いにくい」


「なるほど……」


「そして、時間代の計算を、できるだけ透明にしろ」


「透明?」


「ああ。誰が見ても、計算方法がわかるようにする。そうすれば、『不当に高い利を取っている』と言われにくい」


「わかりました」


俺は頭を下げた。


「時間代の表を作ります。そして、計算方法も公開します」


「頼んだぞ」


実務長は、再び書類に目を戻した。

俺は、部屋を出た。

そして——事務室に戻り、時間代の表を作り始めた。


----------------------------------------

【時間代計算表(短期・単利方式)】

借入額 | 1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | 6ヶ月 | 12ヶ月

シルバ50枚 | 0.5枚 | 1枚 | 1.5枚 | 3枚 | 6枚

シルバ100枚 | 1枚 | 2枚 | 3枚 | 6枚 | 12枚

シルバ150枚 | 1.5枚 | 3枚 | 4.5枚 | 9枚 | 18枚

シルバ200枚 | 2枚 | 4枚 | 6枚 | 12枚 | 24枚

シルバ500枚 | 5枚 | 10枚 | 15枚 | 30枚 | 60枚

----------------------------------------

計算方法:

時間代 = 借入額 × 月利1% × 借入月数

例:

シルバ100枚を3ヶ月借りた場合

時間代 = 100枚 × 1% × 3ヶ月 = 3枚

----------------------------------------


「これなら、わかりやすいですね」


ミラが、表を見て言った。


「ええ。商人たちも、すぐに理解できるはずです」


「でも、レオンさん」


「はい?」


「『時間代』って、何ですか?」


「利息の別名です」


「なぜ、利息と呼ばないんですか?」


「……宗教上の理由です」


俺は、実務長から聞いたことを説明した。

ミラは、少し不安そうな顔をした。


「教会が、反対してくるんですか……」


「かもしれません。だから、できるだけ透明にして、文句を言われないようにします」


「わかりました……」


ミラは、頷いた。

俺は、表を窓口に貼り出した。

そして——商人たちに説明した。


「皆さん、これから利息のことを『時間代』と呼びます」


商人たちが、ざわついた。


「時間代?」


「何だそれ?」


「ええ。金を借りる時間に対する対価です」


俺は、表を指差した。


「この表を見てください。借りた金額と期間を見れば、時間代がすぐにわかります」


「おお……わかりやすいな」


「計算方法も公開しています。誰でも確認できます」


「それなら、安心だ」


商人たちは、納得したように頷いた。

ルートヴィヒも、表を見て満足そうだった。


「これなら、わかる。ありがとう、レオン殿」


「どういたしまして」


俺は、微笑んだ。

だが——その日の午後、問題が起きた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ