時間代という名#1
セラドの不正が発覚してから五日後——レギス・レジャーの窓口は、いつも以上に混雑していた。
セブン・ヴォルトの信用失墜により、多くの商人がレギス・レジャーに流れてきたのだ。
「セブン・ヴォルトは、もう信用できない」
「金庫から盗むなんて、ありえない」
「これからは、レギスに預ける」
商人たちは、口々にそう言った。
俺とミラは、預かり札と約束札の発行に追われていた。
だが——その忙しさの中で、新しい問題が浮上していた。
「レオン殿、ちょっといいか?」
窓口に、商人ルートヴィヒが現れた。
彼は、三ヶ月前にシルバ百枚を借りた商人だ。
「はい、何でしょう」
「利息の計算なんだが……よくわからないんだ」
「利息の計算?」
「ああ。お前たちは『月に一パーセント』って言ったよな?」
「はい、そうです」
「じゃあ、三ヶ月借りたら、利息は三パーセントか?」
「いえ、違います」
「違う?」
ルートヴィヒは、困惑した顔をした。
「じゃあ、いくらなんだ?」
「三ヶ月なら……」
俺は、計算を始めた。
「元金が百枚で、月利一パーセントなら——」
「一ヶ月目:百枚×一パーセント=一枚。残高百一枚」
「二ヶ月目:百一枚×一パーセント=一・〇一枚。残高百二・〇一枚」
「三ヶ月目:百二・〇一枚×一パーセント=一・〇二〇一枚。残高百三・〇三〇一枚」
「つまり、三ヶ月後には百三・〇三枚——利息は三・〇三枚です」
「三・〇三枚……?」
ルートヴィヒは、眉をひそめた。
「なんで三枚じゃないんだ?」
「それは、複利だからです」
「複利?」
「はい。利息にも、さらに利息がつく——という計算方法です」
「……わからん」
ルートヴィヒは、頭を掻いた。
「もっと簡単にならないのか?」
「簡単に……」
俺は、少し考えた。
確かに、複利の計算は複雑だ。
商人たちの多くは、算術に慣れていない。
だから——もっとわかりやすい方法が必要だ。
「ルートヴィヒさん、少し待ってください。わかりやすい表を作ります」
「表?」
「はい。借りた金額と期間を見れば、利息がすぐにわかる——そういう表です」
「それは……助かる」
ルートヴィヒは、安心したように頷いた。
俺は、事務室に戻り、利息計算表を作り始めた。
だが——その前に、実務長に相談する必要があった。




