金庫の穴#5
午前四ベル、俺と実務長はセブン・ヴォルトの事務所に向かった。
事務所は、レギス・レジャーから三つ通りを隔てた場所にある。
立派な石造りの建物で、入口には七つ星の印章が掲げられている。
中に入ると、受付の女性が出迎えた。
「いらっしゃいませ。ご用件は?」
「セラド殿にお会いしたいのですが」
実務長が言った。
「セラド様ですね。少々お待ちください」
受付の女性は、奥に引っ込んだ。
しばらくして、セラドが現れた。
「やあ、実務長。それに……レオンも一緒か」
セラドは、皮肉めいた笑みを浮かべた。
「どうした?何か用か?」
「ええ。実は、金庫の点検をしたいのです」
「金庫の点検?」
「はい。最近、金庫の実数が帳面と合わないことがありまして……念のため、壁や床に異常がないか確認したいのです」
「ふむ……」
セラドは、少し考えた。
「それは結構だが、なぜ俺のところに来た?」
「貴方の倉庫が、金庫と隣接しています。壁を確認する際に、倉庫側も見せていただきたいのです」
「倉庫側、ねえ……」
セラドは、腕を組んだ。
「それは困るな」
「困る?」
「ああ。倉庫には、お客様の大切な品が保管されている。部外者を入れるわけにはいかん」
「ですが、金庫の安全に関わることです」
「それは、お前たちの問題だろう?俺たちには関係ない」
セラドは、冷たく言った。
「悪いが、断る」
「……そうですか」
実務長は、少し残念そうな顔をした。
だが——俺は、予想通りだと思った。
セラドは、倉庫を見せたくない。
それは——何か隠してるからだ。
「わかりました。では、評議会に相談してみます」
俺が言った。
「評議会?」
セラドの顔が、一瞬険しくなった。
「何を相談するんだ?」
「金庫の安全管理についてです。隣接する倉庫の確認を拒否された、ということも報告します」
「……ふん」
セラドは、鼻で笑った。
「好きにしろ。だが、評議会は俺たちの味方だぞ」
「それは、どうでしょうね」
俺は、セラドを真っ直ぐ見た。
「不正があれば、評議会も動かざるを得ません」
「不正、だと?」
セラドの目が、鋭くなった。
「お前、何か証拠でもあるのか?」
「……それは、調査次第です」
「ふん……」
セラドは、俺を睨んだ。
「面白い奴だな、お前は。だが、調子に乗るなよ」
「気をつけます」
俺はそう言って、実務長と一緒に事務所を出た。
外に出ると、実務長が言った。
「レオン、大丈夫か?セラドを怒らせたぞ」
「大丈夫です。むしろ、倉庫を見せたがらない反応が、証拠になります」
「証拠……」
「ええ。もし何もやましいことがなければ、堂々と見せるはずです。拒否したということは、何か隠してる証拠です」
「なるほど……」
実務長は、少し納得したように頷いた。
「では、次はどうする?」
「評議会に報告します。そして、正式に調査を依頼します」
「評議会か……」
実務長は、少し不安そうな顔をした。
「だが、評議会の中にも、セブン・ヴォルトと繋がってる者がいるかもしれん」
「だから、証拠を持って行きます」
「証拠?」
「ええ。金庫の穴、銀の粉、セラドの拒否反応——これらを全部まとめて、報告書を作ります」
「報告書、か……」
「はい。そして、評議会の中でも、まともな人間に渡します」
「まともな人間……誰だ?」
「それは、これから調べます」
俺はそう言って、レギス・レジャーに戻った。




