表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界金融帳実務録 ~転生銀行員が金融知識で成り上がる~  作者: しじむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/60

金庫の穴#2

実務長の部屋をノックすると、中から声がした。


「入れ」


俺は扉を開けて入った。

実務長は、書類を読んでいた。


「レオンか。どうした?」


「実務長、金庫の鍵は誰が持っているんですか?」


「金庫の鍵?」


実務長は顔を上げた。


「俺とグレアムだ。なぜだ?」


「金庫の実数が、帳面より23枚少ないんです」


「23枚?」


実務長の顔が、一気に険しくなった。


「本当か?」


「はい。ミラと一緒に数え直しましたが、間違いありません」


「……そうか」


実務長は立ち上がった。


「すぐに確認する。案内してくれ」


俺は実務長を金庫まで案内した。

実務長は金庫の中を確認し、帳面を見た。

そして——しばらく黙っていた。


「……確かに、合わないな」


「はい」


「グレアムには聞いたのか?」


「聞きましたが、覚えてないと言われました」


「覚えてない、か……」


実務長は、腕を組んだ。


「だが、グレアムは長年この仕事をしてる。不正をするような男じゃない」


「では、他に誰が金庫を開けた可能性がありますか?」


「……俺は、今日は開けてない」


「では、鍵を誰かに貸しましたか?」


「いや、貸してない」


「グレアムさんは?」


「それは……わからんな」


実務長は、少し困った顔をした。


「グレアムに聞いてみるしかない」


「わかりました」


俺は、再びグレアムのところに向かった。

だが——休憩室に行くと、グレアムはいなかった。


「グレアムさん、どこに行ったか知りませんか?」


俺は、休憩室にいた別の行員に聞いた。


「ああ、グレアムなら、さっき外に出ていったぞ」


「外?」


「ああ。『ちょっと用事がある』って」


「……そうですか」


俺は、嫌な予感がした。

金庫の不一致が発覚した直後に、外出?

それは——逃げたのか?

いや、まだ決めつけるのは早い。

だが——このタイミングは、怪しい。

俺は、実務長のところに戻った。


「実務長、グレアムさんが外出したそうです」


「外出?」


「はい。『用事がある』と言って」


実務長の顔が、さらに険しくなった。


「……まずいな」


「まずい、ですか?」


「ああ。もし本当にグレアムが不正をしていたとしたら——今、証拠を隠してる可能性がある」


「証拠……」


「ああ。盗んだ銀貨を、どこかに隠すとか」


「なるほど……」


俺は、少し考えた。


「実務長、グレアムさんの私物を確認してもいいですか?」


「私物?」


「はい。もし銀貨を隠しているなら、保管箱や机の中にあるかもしれません」


「……それは、不当な詮索になりかねんぞ」


「ですが、金庫の不一致は重大な問題です。確認する必要があります」


実務長は、しばらく悩んだ。

そして——頷いた。


「わかった。だが、俺も立ち会う。勝手に調べるな」


「はい」


俺と実務長は、グレアムの保管箱に向かった。

保管箱は、事務室の片隅にある。

実務長が鍵を開け、中を確認した。

中には、着替えや私物が入っている。

だが——銀貨は見当たらない。


「ないな……」


実務長が呟いた。


「机も確認しましょう」


俺は、グレアムの机に向かった。

机の引き出しを開ける。

中には、帳面や筆記用具が入っている。

だが——やはり、銀貨はない。


「……ここにもないですね」


「そうか……」


実務長は、少しほっとしたような顔をした。


「じゃあ、グレアムは無実か」


「いえ、まだわかりません」


「まだわからない?」


「ええ。銀貨がここにないだけで、無実とは限りません。どこか別の場所に隠してる可能性もあります」


「……そうだな」


実務長は、再び険しい顔になった。


「では、どうする?」


「金庫への出入りを、もっと詳しく記録する仕組みを作ります」


「仕組み?」


「はい。誰が、いつ、何のために金庫を開けたか——そして、何枚取り出して、何枚戻したか。それを全部記録します」


「それは……面倒じゃないか?」


「面倒ですが、必要です。そうしないと、今回のような問題が再発します」


実務長は、少し考えた。


「……わかった。やってみろ」


「ありがとうございます」


俺は頭を下げた。

そして——事務室に戻り、新しい帳面を作り始めた。


----------------------------------------

【金庫出入記録帳】

日付 | 時刻 | 開錠者 | 目的 | 取り出し枚数 | 戻し枚数 | 差引 | 署名 | 立会人

----------------------------------------


「この形式で記録します」


俺はミラに説明した。


「金庫を開けるたびに、この帳面に記録する。そして、必ず立会人を置く」


「立会人、ですか?」


「ええ。一人で金庫を開けるのではなく、必ず誰かが見ている状態にする。そうすれば、不正ができなくなります」


「なるほど……」


ミラは頷いた。


「でも、グレアムさんが納得するでしょうか?」


「納得しなくても、やります。これは、組織のためです」


俺はそう言って、帳面を棚に置いた。

そして——窓の外を見た。

午後三ベルの鐘が鳴った。

窓口の締め時間だ。

だが——グレアムは、まだ戻ってこない。


——どこに行ったんだ?


俺は、少し不安になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ