保証人の壁―担保という武器#5
「不正?」
俺は、鐘楼で見たことを実務長に説明した。
誰かからの報酬。
締め時刻の操作。
実務長は、顔を険しくした。
「本当か?」
「はい。帳面に記録されていました」
「帳面……それは、証拠になるか?」
「なります。ただ、俺が勝手に見たので、正式な証拠としては弱いかもしれません。それに、依頼者の名前が書かれていませんでした」
「ふむ……」
実務長は腕を組んで考え込んだ。
「だが、これは重大な問題だ。評議会に報告しなければ」
「評議会に?」
「ああ。ヴィクターは評議会の任命だからな。評議会が動かなければ、どうにもならん」
「でも……評議会の中にも、不正に関わってる人がいるかもしれません」
「……それもそうだな」
実務長は、ため息をついた。
「難しいな。下手に動けば、逆に俺たちが潰される」
「じゃあ、どうすれば……」
「まずは、証拠を固めることだ。ヴィクターの帳面を、もう一度確認する。できれば、写しを取る」
「わかりました」
「それから、他に不正の証拠がないか調べろ。誰が、どうやって市場を操作しているか——その全体像を掴む」
「はい」
「レオン、お前は良い目をしてる。これからも、しっかり見るんだ」
「ありがとうございます」
俺は頭を下げた。
そして——部屋を出た。
廊下で、ミラが待っていた。
「レオンさん、大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫」
「さっき、すごい顔で実務長の部屋に入っていったから……」
「ちょっと、重要な話をしてただけだよ」
「そうですか……」
ミラは、少し不安そうな顔をした。
「レオンさん、無理しないでくださいね」
「大丈夫。俺は、仕組みを作るのが好きなだけだから」
「仕組み……」
「ええ。正しい仕組みがあれば、誰も不正をできなくなる。それが、俺の目標です」
ミラは、少し笑った。
「レオンさんらしいです」
「そうかな」
俺も笑った。
そして——窓口に戻った。
その夜、俺は宿で担保品目録を見直していた。
目録には、三十点以上の品物が記録されている。
その中に、リシャールの約束札があった。
誰かが、どうやって土地を奪ったか——その証拠だ。
そして、ヴィクターの帳面。
鐘の時刻を操作して、商人を誘導した証拠。
これらを組み合わせれば——不正の手口が見えてくる。
高利での貸し付け。
返済不能に追い込む。
担保を奪う。
そして、市場を支配する。
——これを止めなければ。
俺は、ペンを取り、紙に書き出した。
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【対策」
1. 担保制度を確立し、低利で貸し出す
2. 返済実績を記録し、信用を見える化する
3. 鐘の時刻操作を暴き、評議会に報告する
4. 不正の証拠を固める
5. 商人たちに、選択肢を提供する
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——これが、俺の戦い方だ。
まずは、仕組みを作る。
そして——この街の金融を、まともなものにする。
俺は、紙を畳んで机の引き出しにしまった。
窓の外では、鐘が鳴っていた。
ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン。
六回。
夜の六ベル。
だが——今夜の鐘も、早く感じた。
たぶん、ヴィクターが操作したんだろう。
——いつまでも勝手は許さない。
俺はそう呟いて、ベッドに横になった。




