採用試験と合わない帳面#10
初日の業務が終わり、俺は帳面を締めた。
ミラと一緒に、金庫の中身を数える。
「シルバが……321枚」
「クラウンが……7枚」
「カッパが……150枚」
そして、引き継ぎ簿の記録と照合する。
シルバ: 記録321枚、実数321枚——一致。
クラウン: 記録7枚、実数7枚——一致。
カッパ: 記録150枚、実数150枚——一致。
「……合ってます!」
ミラが嬉しそうに叫んだ。
「完璧です、レオンさん!」
「よかった」
俺はほっと息をついた。
実務長とベルナルドが、事務室に入ってきた。
「どうだった?」
「完璧に合いました」
実務長は目を見開いた。
「本当か?」
「はい。一枚も狂ってません」
実務長は帳面を確認し、それから俺を見た。
「……すごいな、お前」
「いえ、引き継ぎ簿のおかげです」
「引き継ぎ簿?」
実務長は、机の上の引き継ぎ簿を見た。
「これ……昔使ってたやつか」
「はい。ミラさんが見つけてくれました。俺が少し改良しましたけど」
実務長は引き継ぎ簿を手に取り、内容を読んだ。
そして——しばらく黙っていた。
「……そうか」
「実務長?」
「いや……俺が間違ってたのかもしれん」
実務長は、少し寂しそうな顔をした。
「効率化って言って、いろんなものを削ぎ落としてきた。だが——削ぎ落としすぎたのかもな」
「実務長……」
「レオン、これからもこの引き継ぎ簿を使ってくれ。そして、他の担当者にも使わせる」
「本当ですか?」
「ああ。お前が証明してくれたからな。これが必要だって」
実務長はそう言って、俺の肩を叩いた。
「ありがとう、レオン」
「いえ……」
ベルナルドも、満足そうに頷いた。
「レオン、初日は完璧だった。この調子で、残り二日も頑張れ」
「はい」
俺は頭を下げた。
そして——その夜、宿に戻りながら、考えた。
初日は成功した。
だが、これで終わりじゃない。
残り二日——そこで何が起きるか、わからない。
特に、グレン。
彼は、記録を嫌うタイプだ。
引き継ぎ簿を拒否するかもしれない。
そうなったら——どうやって説得するか。
俺は、その対策を考え始めた。




