採用試験と合わない帳面#6
翌朝、事務室に入ると、ベルナルドが待っていた。
机の上には、10枚の銀貨が並べられている。
「おはよう、レオン。今日は二つ目の試練だ」
「おはようございます」
「この10枚の銀貨の中に、偽物が3枚混ざっている。それを見分けろ」
「わかりました」
俺は銀貨を1枚ずつ手に取り、確認していった。
まず、色を見る。
次に、厚みを指で確かめる。
そして——音を聞く。
指で弾いて、音の違いを聞き分ける。
1枚目。澄んだ音。本物。
2枚目。少し鈍い音。偽物。
3枚目。澄んだ音。本物。
4枚目。澄んだ音。本物。
5枚目。鈍い音。偽物。
6枚目。澄んだ音。本物。
7枚目。澄んだ音。本物。
8枚目。鈍い音。偽物。
9枚目。澄んだ音。本物。
10枚目。澄んだ音。本物。
俺は3枚の銀貨を選び出した。
「これです。2枚目、5枚目、8枚目が偽物です」
ベルナルドは銀貨を確認した。
そして——頷いた。
「正解だ。よくやった」
「ありがとうございます」
「お前、音で判別したな?」
「はい。ダリウスさんに教わりました」
「ふむ。ダリウスは良い教師だな」
ベルナルドは満足そうに笑った。
「よろしい。二つ目の試練も合格だ」
「ありがとうございます」
「次は、三つ目——身元と約束だ。実務長が保証人になってくれるそうだな?」
「はい」
「では、誓約書にサインをしてもらおう」
ベルナルドは一枚の紙を取り出した。
紙には、誓約の文言が書かれていた。
----------------------------------------
【誓約書」
私、レオン・ミナトは、レギス・レジャーの行員として、以下を誓約します。
一、金銭を不正に扱わないこと
二、帳面を正確に記録すること
三、秘密を漏らさないこと
四、組織の名誉を傷つけないこと
違反した場合、全財産を没収され、追放されることに同意します。
署名:
保証人署名:
----------------------------------------
——厳しいな。
だが、これは当然のことだ。
金を扱う仕事には、それだけの責任が伴う。
俺はペンを取り、署名した。
そして、実務長も署名してくれた。
「よし、これで三つ目もクリアだ」
ベルナルドは紙を受け取り、大切そうに畳んだ。
「残るは、四つ目——帳面を合わせる、だ」
「はい」
「これは、三日間の実務を通して評価する。お前は窓口で実際に銀貨を受け取り、記録し、金庫に納める。そして、三日目の夕方に帳面を締める。1枚でも合わなければ、不合格だ」
「……わかりました」
「厳しいぞ。今まで、この試練を完璧にクリアした者は、ほとんどいない」
「それでも、やります」
俺はそう言った。
ベルナルドは俺を見て、小さく笑った。
「いい目をしている。では、明日から始めよう」
「はい」
俺は頭を下げた。
そして——心の中で、決意を新たにした。
絶対に、帳面を合わせてみせる。
そして、この組織を変える第一歩にする。




