ステータス閲覧・魔力無限・魅了スキル。あぁ、前世で頑張ってた自分って本当に馬鹿みたい。
「前世の自分に教えてやりたいよ。『努力』なんてコスパの悪いドーピングだぞってね」
暗い部屋で、勇者(元・社畜)の勇者は、指先一つで魔王軍の幹部を「魅了」しながら溜息をついた。
「おい、勇者。また魔力を無尽蔵に放出して……街一つ消す気か?」
仲間の戦士が呆れて声をかけるが、勇者は虚空に浮かぶステータス画面を眺めたまま動かない。
「……ねえ、知ってる? 前世の俺、この『魔力無限』の1億分の1のエネルギーを得るために、毎日安コーヒーを飲んで、終電までオンゲしてたんだぜ」
勇者は、かつて自分が必死に守っていた「締め切り」や「マナー」がいかに滑稽だったかを思い出す。
「今じゃ指を鳴らすだけで、この国の王様すら俺の足にキスをしたがる(魅了スキル)。なのに、あっちの世界じゃ、部長の機嫌一つ取るのに30分もネクタイの結び目を気にしてた。…笑えるだろ? あの時の俺の市場価値、この世界のゴブリンの右耳より低かったんだぜ」
「ステータス閲覧を使えば、相手の弱点も、隠し持ってる裏金も、浮気相手の名前まで全部見える。……ああ、前世でこれがあれば、あのクソ上司の『家庭内でのカースト最下位』というステータスを突きつけて、全社員の前で土下座させられたのになぁ。」
勇者は冷めた目で、手元の魔法杖を弄ぶ。
「頑張るって何なんだろうな。必死に階段を登ってたつもりが、実は壊れたエスカレーターを逆走してただけだった気分だよ。……ま、今の俺に唯一足りないステータスがあるとするなら、『死んだ後の虚無感』への耐性くらいかな」
彼はそう言って、無尽蔵の魔力で夜空に巨大なファックスサインを作った。




