三人の冒険者
遅くなりすみませんでした。
歩き出したはいいが、いかんせん何も決まっていない。どこへ行くべきか、いやどこに何があるかすらわからない。
当たり前だ。つい先程ここに、この世界に来たばかりなのだから。
さてどうしたものかと、考えながら歩いていると賑やかで一際大きな建物が現れた。
[冒険者ギルド]
見上げると看板にそう書かれていた。いや、どちらかと言えば彫られている。そういった方が正しいかもしれない。
なるほど、本当に来てしまったみたいだ。異世界に。
だが俺が探している建物はここではなさそうだ。
しかしせっかくだから、中に入ることはせず窓から中の様子を少しうかがってみた。
「冒険者ギルドに何かようか?」
後ろから声をかけられた。姿は見えないが声の低さ的にまぁまぁガタイのいい所謂中堅冒険者であろうと、思いながら振り返ってみると、俺は驚いて少し固まってしまった。
「いきなり声掛けるから驚いちゃってるじゃん!!おにいさん大丈夫?」
「まったくだから俺が声を掛けるといったんだ」
そんなことを話しているのは、見た目的にここに所属しているであろう、三人の冒険者だ。
俺が固まったのは筋骨粒々の大男に声をかけられたからじゃない。
「ね、ねこみみ...?」
そう、唯一俺の事を心配してくれた女の子に猫耳がはえているからだ。
よく見てみると尻尾もちゃんとあった。
「なにお兄さん、獣人見るの初めて?」
「あ、あぁ最近田舎から出てきたばかりで、魔物や人間以外の種族を生で見るのは初めてなんだ。気分を悪くしてしまったなら申し訳ない」
「いいよいいよ、気にしないで、いくらここが[ジスト王国]とはいっても、ここも領主様の屋敷があって他よりも少し貿易が盛んとはいっても、まだまだこの辺も田舎みたいなものだからね」
なるほど、俺が今居るのは[ジスト王国]の少し外れにある場所と言うことか。聞かずに済んだのはありがたい。
国の外れと言うことは、不足品が多そうだな。
「そんなことより、いい加減自己紹介となんで中を覗いていたのか。この二つ聞いていいか?」
そういうのは、「THE爽やかイケメン」といった感じの青年だった。
「そうね、私は猫人族のヘスティーよ。この二人とパーティーを組んでいて、主に索敵等をしているわ」
真っ先に自己紹介してくれたのは猫耳の生えた女性、猫人族のヘスティー。
「さっきは急に声かけて悪かったな。俺はこのパーティーのタンクをしているゲイルだ。ちなみに俺は人間だ。よろしくな」
二人目は最初に俺に声をかけてきた、筋骨粒々の男。ゲイル。
普通の人間がそんな筋肉だるまになるのに、いったいどれ程のトレーニングをしているのか。
考えるだけでも疲れそうだ。
「最後になってしまったな。俺はこのパーティーのリーダーをやっている、ライチだ。よろしく」
THE爽やかイケメンの名前はライチ。名前まで爽やかとか、まじか。
「俺も怪しまれるような事をしていたのは事実だ。悪かった。俺は...」
そこで俺は止まってしまった。この三人の名前を聞く限り前の世界の名前は言わない方がいいだろう。
そうなると、名前を位置から考える必要がある。適当にちょうどいい名前はないだろうか。
「どうしたの?」
ヘスティーが不思議そうに問いかける。
当たり前だ。名前を言おうとしていきなり止まったのだから。
「いや、なんでもない。俺はリンだ。よろしくな。ここを覗いていたのは商人になりたいんだが、その場所がここであってるか確認していたんだ」
俺は、この世界で「リン」そう名乗ることにした。まぁ、いい名前があまり思い浮かばなくて、ゲームで良く使っていた名前をそのまま使っただけだが。
「リンは商人になりたいのか。なら商人ギルドだな」
ライチはそう教えてくれた。冒険者ギルドがあるからもしかして、とは思っていたがまさか本当にあるとは。
「あたしたち今日はもう依頼ないし、良かったらリンのこと商人ギルドまで送っていこうよ!そのついでに、この町の事も色々教えてあげる!!」
「それは願ってもないことだがいいのか?」
「勿論だよ。ここで会えたのも何かの縁だ。案内するよ」
三人の好意にあまえ案内されることに。こうも幸運なことが続くと、このあと、何かとんでもない悪いことが起きるんじゃないかと思ってしまう。
しかし、今はその思いも頭の片隅に追いやり三人の後を追う。
やっと物語を動かせそうです。