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マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜  作者: 我島甲太郎
第二章 ティアラキングダムの秘宝

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第44話 新たなる力

 朝食を済ませた俺達は、タクシーに乗って魔導具工房バタフライまでやってきた。

 ついに俺の魔杖(まじょう)製作に必要な素材がすべて集まったのである。


 アイリスは腕輪から取り出したギルドカードを使って店の施錠を外すと、カランカランと音を立てて扉を開いた。

 店内の照明を点けたアイリスはすぐに魔杖(まじょう)製作の準備を始める。


「じゃあ早速、エンチャントを始めよっかー」

「アイリス、付与台とか使わなくていいのか?」


 アイリスが立っているカウンターの横の作業テーブルには三本のこん棒が並べられており、その隣に置かれた木箱の中には三色のエレメンタルコアが山積みにされていた。


「あんなの自転車の補助輪みたいなものじゃん。使っているやつなんて三流の魔導具職人(クラフター)しかいないよー」


 残念ながら俺が行ったマジックバッグ屋のローガン氏は三流のようだった。

 いや、ポーチの縫製自体は悪くないんだ。

 きっとあの店はそちらの方が売りなのだろう。


「まず一本目に行く前に、エレメンタルコアの属性を抜きまーす」


 アイリスは卵大の黄色いアースコアを適当に何個か取ると空中に浮かべ、その下に魔法陣を描いた。


 アースコアが魔法陣を通ると透き通るような透明な色に変わった。

 魔法陣を消したアイリスはその透明なエレメンタルコアを手に取って箱に戻した。


「土属性の魔杖(まじょう)はモノが残るから不人気なんだよねー」

「土属性スキル使いのハムマン職人としては実に遺憾(いかん)である」

「まあ工場なんかの大型魔導具では使われるけど、高くは売れないから無属性のクリアコアにするのが一番なんだよー」


 アイリスは横のテーブルから木製のこん棒を取ってカウンターに置いた。

 このこん棒は俺でも片手で持てる小サイズのようだ。


「じゃあ行くよー」


 クリアコアを空中に浮かべたアイリスが虚空に簡素な魔法陣と複雑な魔法陣を描くと、シュッとクリアコアに詰め込んだ。


 すぐにどろりと溶けたクリアコアがこん棒に吸い込まれていく。

 最後にこん棒が青く光って完成だ。

 アイリスがこん棒を手に取って魔杖(まじょう)の解説をする。


「スーパーマナバレットカスタムC(クラブ)、精霊樹製。クリアコアでエンチャントしたから、なんと消費据え置きで威力2倍!」 


 俺はアイリスからこん棒を受け取ると、人差し指の青い指輪型装具に登録して収納した。


「次はこれだねー」


 アイリスがカウンターに置いたのは、身長ほどの長さがある長杖だった。

 腕ほどの太さの(あか)い木材でできているが、なんとなくこん棒に見えるようなデザインをしている。


 空中に浮かべたファイアコアの周囲に複雑な魔法陣がいくつか広がる。

 魔法陣がシュルシュルとファイアコアに詰め込まれると、ファイアコアがどろりと溶けて杖に吸い込まれていく。

 杖が青く光って二本目の完成である。


「ブレイズノヴァ改C(クラブ)、ホムラケヤキ製。フレイムカノン改のワンランク上の高火力兵装だよー。魔杖(まじょう)のランクがCランクになったから消費は3倍になっているけど、今のハルトくんなら余裕余裕!」


 俺は受け取った魔杖(まじょう)を中指の赤い指輪型装具に登録して収納した。


「最後に大本命行くよー!」


 アイリスは俺の身長よりも大きく白い、どでかいこん棒をカウンターに置いた。


 空中に三つのフロストコアが浮かび上がると、それぞれの周囲にいくつもの緻密(ちみつ)な魔法陣が広がる。

 アイリスも集中しているようで、その褐色の額には大粒の汗が浮かんでいた。


 息を飲んで見守る俺とアンバー。


 ゆっくりと魔法陣がフロストコアに詰め込まれると、どろりと溶けた三つのフロストコアが螺旋(らせん)を描いて絡みつくようにこん棒に吸い込まれていく。

 白いこん棒が青く光ると、アイリスはほっと息を吐いた。


 倒れ込むように椅子に腰掛けたアイリスが魔杖(まじょう)の解説をする。


「アイシクルカノンC(クラブ)、セブンスポローニア製。アイシクルキャノンの術式を現代風にアレンジしたものだね。もちろんFCS(射撃管制システム)が組み込まれているから器用さEでも百発百中! 小型化する為に威力はBランクまで落ちているけど、その分魔力効率も上がって取り回しは良くなっているはずだよー」


 俺は白いこん棒をカウンターから手に取ったが、見た目と違って凄く軽い。


「これなら俺でも十分に扱えそうだな、ありがとうアイリス」

「壊れちゃうから鈍器としては使わないでねー」

「アンバーじゃないんだからそんな使い方はしないさ」

「お主はわしのことを一体何だと思っておるんじゃ」

「冗談だよ、冗談」


 俺は白いこん棒を薬指の緑色の指輪型装具に登録して収納した。


「Cランクから上は地下じゃ無理だから外で試し撃ちよろしくねー。わたしは汗かいちゃったからお風呂入ってくるよー」


 席を立ったアイリスは俺達に背を向けて手を振りながら階段を(のぼ)っていった。


「試し撃ちついでにゴーレム狩りにでも行くかのう」

「そうだなぁ、お金も必要だしな」


 1ヶ月掛けてマーブルゴーレム狩りで集めた魔石は全部エレメンタル狩りで消費してしまったからな。

 当然、その間はずっと無収入である。


 ちなみに今回手に入れたエレメンタルコアはすべてアイリスのものになった。

 元々そういう約束だったし、一流の魔導具職人(クラフター)に支払う技術料を考えたら安いものだろう。



 俺達は魔導具工房バタフライを後にすると、迷宮入口のゲートを潜ってアクアマリン迷宮三層の岩塊(がんかい)台地下層へ向かった。


 数日空けたので、マップの中心地にはリポップした10m近くのマーブルゴーレムが沢山うろついていた。


「じゃあブレイズノヴァから行ってみるか」


 ゴーレムの近くに移動した俺が、バイクの上から取り出した長杖を構えて魔力を込めると杖先に頭くらいの大きさをした青い火炎球が発生した。

 激しく燃え盛る炎が球体の中をぐるぐると渦巻いている。


「ブレイズノヴァ!」


 発射した火炎球が放物線を描いてマーブルゴーレムの胸に直撃すると、ズゴゴゴゴと音を立てて着弾点から青い炎の球体が広がった。


 その余りの熱にマーブルゴーレムがドロドロに溶けてマグマみたいになっている。

 そのドロドロに溶けたマーブルゴーレムの成れの果てに、ぷかりと魔石が浮かんでいた。


「えげつない威力じゃのう、これでCランクとは末恐ろしいわい」

「こりゃあ下手なところじゃ使えないな」


 フレンドリーファイアで味方が即死するぞ。

 いつも酒を飲むときは酔いすぎないように程よく解毒しながら飲んでいるんだが、これからはより注意をしなければならないだろう。


 ……いや、ちゃんと外して安全に保管した方が無難か。

 装具はマジックバッグには入らないから、今度指輪用の小物入れを買ってこよう。


 魔石を回収せずに移動した俺はバイクを降りると、次のマーブルゴーレムに向かって白くどでかいこん棒を構えた。


「アイシクルカノン!」


 魔力を込めるとチャージもなしに飛び出した青い弾丸がマーブルゴーレムの下半身に直撃して、発生した巨大な氷塊がその両足を地面に縫い留めた。

 どうやら馬力の高いゴーレムですらまったく身動きが取れなくなっているようだ。


「困った時はこれを使えば何とかなりそうじゃな」

「その分消費は大きいけどね、チャージが要らないのは大きいな」


 アンバーはジャンプをするといかずち丸でマーブルゴーレムの胸を打ち砕いた。

 そしてゴーレムの胸の中から魔石を掴み取って飛び降りてくる。


「試し撃ちはこれで十分じゃの。それではいつもの狩りを始めるとするかのう」

「そうだね、そうしよう」


 こうして俺達はアイリスの協力によって新たなる力を手に入れた。

 彼らの出番がくるのはもう少し先のことになるだろう。


 ちなみに、古い魔杖(まじょう)は俺のマジックバッグの奥底で眠ることになった。

 長いこと使っていたので、俺も愛着が湧いていたのである。

 大事にこん棒コレクションを抱え続けているアンバーのことを笑えないな。



 狩りを終えた俺達は、街に帰りながらこれからの予定を相談することにした。

 狭間はざま平原をバイクで走りながら、後ろのアンバーが俺に話し掛けてくる。


「4日後にはいよいよ四層に挑戦するわけじゃから、今週はオフにするかのう」


 なぜ4日後かというと、その日は魔道具職人(クラフター)組合の異界予約が入っているからだ。

 まとめ狩りの効率上、精霊樹海における全エリアのリポップが終わる5日に一度だけエレメンタル狩りは行われることになっているのである。


 ダンジョンの魔物のリポップ頻度は落とす魔石のランクに比例して遅くなる傾向にあるからな。


 低層ほどバカスカリポップするし(猿鬼(えんき)渓谷がいい例だ)五層ともなれば一度倒せば1ヵ月近くリポップしない魔物もいるくらいだ。


 まあ、ダンジョン内で魔石以外の素材が()ぎ取れないこの世界だと、エリアボスを倒したところであんまり意味はないんだけどね……。


 それはさておき、探索者の四層への移動はエレメンタル狩りが終わってエレメンタルのリポップが起こるまでの間に行うのが最も効率が良いと言われている。

 「竜牙の刃」の皆さんが俺達の狩りの最中にやってきたのもそれが理由だった。


 プロテクションがあれば精霊樹海を突破するのは容易だが、四層での狩りを考えると魔導士ウィザードの魔力はできるだけ温存したい。


 四層での狩りは4泊5日になるので、俺達も休みの間に色々と準備をしておかなければならないだろう。


「キャンプ用品と食料の買い出しは決定として、他には何をしようか」


 アンバーはうーんと悩んだ後、俺に一つの提案をした。


「お主、今日は少し特別な日にしないか?」

「特別な日?」


 恋人記念日にはまだ早いぞ。

 具体的には後9ヵ月くらい残っている。


「そうじゃ。お主の昇格試験もついでに行うとなると、しばらくの間お預けになるからのう」

「まあ、ギルドの職員さんが見ている前で夜の営みを行うのは流石に不味いもんな」

「お主がそうしたいならわしも考えなくもないが……ちょっと恥ずかしいのじゃ」

「俺だって恥ずかしいよ」


 そんなアブノーマルなプレイをするほど俺達はマンネリしてはいないのだ。


「それならええんじゃが……」

「それはいいとして、今日はこれから何をするんだ?」

「おめかししてレストランにディナーを食べに行くのじゃ。そしてその後は……」


 バイクの鏡越しにアンバーはポッとほっぺたを赤く染めた。


「……お高いホテルでお泊りじゃ」


 彼女はどうやら外泊がしたいようだった。

 なるほど、ラブラブなホテルでしっぽりムフフな展開ってわけだ。


「分かったよアンバー。今夜はいっぱい楽しませてやるから、期待しててくれよな」


 アンバーは俺の背中に顔を押し付けると、お腹に回した腕にぎゅーっと力を入れるのだった。

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