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扉の先には

「勝った…」

「やっぱり、狂人は人間として数えられてる。つまり、君たち2人以外の誰が死んでも人狼が勝ってた。君たちに裏切られなくてよかったよ」


 暖は内心不安だったことを明かした。


「わざわざそんなことしないよ」

「私、何もしてないかも、純平は本当に凄かったけど。」


 確かに真実さんは何もしてない。何かしたとしたら俺を煽ってきたことくらいだ。


「いいんだよ、最後まで真実さんは疑われてなかった。それもこのゲームでは重要な活躍と言える。」

「さあ、僕達をお家に返してくれるんだろうな??」


 暖が見えない運営陣に呼びかける。しかしここは窓もない、外がどんな場所かも全くわからない所だ。簡単に外に出してくれるとは考えづらかった。


「……このドアが開くようになっているかもしれない」


 この会議部屋には分厚い金属の重そうな扉があった。初日に何人かで開くかどうか奮闘したがびくともしなかった。意味ありげに佇む扉は参加者の希望を僅かに纏っていた。


 暖が手をかけると、凄く重かったがドアはついに開いた。


「おいおい……」


 扉の向こうは明かりも何も無く、こちらの部屋の明かりが届かない所の様子は全くわからない。


「……もしかしたらまた次のゲームが始まるかもしれないな」

「は?まじかよ」


 俺の目的はゲームに勝つことが全てではなかった。あいつを取り込んだこのゲームの運営を叩く。戻ってきていないということは、死んだ可能性が高いが、どこか諦めきれない所が俺にはあった。

 実はあいつとの唯一の写真を胸ポケットに入れてきていたが、ゲームがひとたび始まれば普通に取られて無くなっていた。


「またゲームは…したくないわね普通に」


 それはそうだ。


「別に次のゲームの場所に行かなくても、こっそり別の場所から脱出とか出来ないんだろうか」

「……やってみる価値はありそうだな」


 俺達は真っ暗な中で他のドアなどを探してみる。


「なんか…でっかい通気口みたいなのがある」

「でかした純平!きっとこの部屋の掃除とかに使うやつだろ」


 通気口の蓋は案外すぐ外れた。暗い中頭をぶつけそうになりながらも3人で中に入る。


「1回こういう所入ってみたかったんだよな……」


 しばらく進むと明かりが見えた。


「出られそうだな」


 誰かいるかもしれないのでそっと外側の蓋を外そうとするがあまり上手くいかず、音を立ててしまう。


「やべ……」


 3人で外に出て息を潜めていると、沢山のモニターのある部屋があり、人の気配もある事がわかる。


「やぁ。よくここが分かったね」


 その声は聞き覚えのない、大人の男の声だった。

 堪忍して俺達は出ていく。


「お前が、主催者なのか?」


 回転する椅子に座っていた男が椅子ごと振り返る。


「うーん、ちょっと違うかなあ」


 緊迫した空気にも関わらずどこかほんわかした男の雰囲気がマッチしていない。

 その男は20代くらいで薄ピンクの髪が特徴的だった。黒いライダースジャケットを着ている。

 違う?じゃあなんなんだよこいつは。


「でも、いつかはここに誰か辿り着くだろうなとは思ってたよ。流石だね」


「……」


 俺達は警戒を顕にする。急に攻撃などしてこないとも限らない。


「ってことは、俺の役目ももう終わりだけどね。この領域の存続も、もう危ぶまれるねえ」


この領域……? 何らかの施設という程には収まらないくらい広いのだろうか。


「だからお前は、何者なんだよ……」

「第1ステージの人狼ゲームを管理している者だよ。俺に力はないからこんなとこに居るけど、先に行けば行くほど、凄い奴らがいる」


 この言い草じゃまだゲームがたんまりあるって事だ。他にも管理人がいるのか? もしかしたら、あいつも……


「ほら、あんまり喋りすぎても、もうお別れの時間だよ。君たちの首のやつは、もう外していいからね。あと君にこれだけ、返しとくね、せっかくだからさ」


 そう言うと俺に何か差し出してきた。あいつとの唯一の写真だ。こいつが持ってたのか。


「ありがとう…」

「それじゃあね、俺の代わりって、いっぱい居るんだよね」


 それだけ言うと男は俺たちにも付いている首のシールを見せた。瞬間、今まで死んだ奴と同じように、大量出血した。座っていた椅子から力無く転げ落ちる。みるみるうちに広がっていく血潮を見ながら、この男もまた、この領域に支配されていたのだと理解した。


「結局、もっと上がいたって事だな……まあ純平も大切なものが返ってきて良かったじゃないか」


 暖はこんな光景に慣れてしまったのか、冷静に分析していた。真実さんは黙っていたが、この状況からは目を離さなかった。


 俺たちは今来たところの今や人為的に用意されたとしか思えない通路を戻っていった。


「次のゲームは一体なんだろうなあ」


 暖がつぶやく。


「……私はもう帰れるものだと思ってたけど」

「それが帰れそうになさそうって話なんだよなあ」

「……」


 そう俺が返しても一向に返事が無い。


「暖?」

「……」

「?真実さん?」

「あれ……」


 振り向こうにも通路が狭いので完全には振り向けないし、視界は真っ暗だがすぐ後ろに居たはずの2人の気配はない。


「ちょっと待てよ……」


 しかし真っ暗な通路を闇雲に戻る訳にもいかないので俺は前に進むしかなかった。その先が外に繋がっていようが次のゲームが始まろうが従おうと俺は決めた。ここに来てから妙に決断力は増したようだ。


 程なくして光は差し込んだ。


 外に出るとざっと普通の学校の校庭くらいはありそうな空間に人狼ゲームの時よりは多い人が点々と座ったり立ったりしていた。

 自分の出てきた四つん這いでしか通れない通路からしか入れないという訳ではなさそうに様々なドアが同じ壁にあった。

 この広い部屋には大きな土管や壁や、コンクリートのブロックなんかが視界を遮ったりするように置かれていた。サバゲーなんかするのに良さそうである。

 また指示があるだろうと俺は予測してその辺に座って待っていると1人、また一人と参加者は増えていった。


「ここが次のゲーム会場か」


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