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第1ゲーム2日目

 この日はみんな部屋に入って、出てくることは無かった。モニターには10時を回るとそのまま施錠と書いてあるので、そのまま寝るのだろう。また、人狼は12時から襲撃ができるとも書いてあった。


 3人で誰か1人、殺さなきゃならない。

 俺にとっては覚悟できているのでさほど苦では無かったが、海琉なんかができるとは思えない。負担は人狼同士分け合うべきだが、ここは自分が引き受けるべきだ。


 静まり返った会議室を出て、キッチンに入る。何かしら武器があるはずだった。包丁とか……

 引き出しを引くと、刃渡りが両手くらいあるサバイバルナイフがあった。十分だろう。


「何探してるの?」


 真実に声をかけられた。


「武器だよ、君は素手で人を殺せるの?」


 振り返らずに答える。


「あの…襲撃って何したらいいのかな」


 海琉もやって来た。


「よし、揃ったな?」

「うわ!何そのでかいナイフ、怖いよ、何するの」


 ナイフを見ただけで海琉が狼狽えている。


「お前には任せられなそうだ」

「あなたがやってくれるの?」


 真実が首を傾げる。


「まあいいよ」

「問題は誰をやるかって話だ」

「会議するのに手強そうな人をやればいいと思うわ」

「例えば?」

「宇佐美とか……もう死んだけど」

「じゃあ仲良さそうにしてた奈緒にしよう」

「ちょっと、何をしようとしてるのさ……ほんとに殺すの? 殺さなきゃいけないの?」

「いいからお前は着いてきたらいい」


 3人で決めた奈緒の部屋の前に立つ。


「ていうか、あなたどうしてそんなに余裕なの?もしかして何か知ってた?ゲームについてとか」


 真実に聞かれる。


「俺はこのゲームに望んで参加したんだ。中学生の時、すごい仲良くしてた奴が居たんだ、俺はいっつもちょっと浮いてたけどそいつとだけは不思議と気が合った。同じ様に浮いてる奴だった。でもある日突然、急に連絡取れなくなって……でも会えないままじゃ悔しくて、なんとか手がかりを探して、ここまで辿り着いたんだ」

「それでその人がここにいるって信じて来たの?無謀ね」

「そう言われても無理ないね。でも都市伝説レベルのやり方でここに来れちゃったんだからさ」

「でも純平ならやれる気がする。掴んであげてよ、その友達がここに来たって証拠。生きてたとしても死んでたとしても」


 意外にも海琉が応援してくれる。


「まあそれには、まずやることやらなきゃいけないな」


 ついにドアノブに手を伸ばす。


 カチッ


「は?」


 カチッカチッ


 開かない。鍵が閉まっている。


「てことは……?」

「騎士が守ったんだ……!有り得るかよそんなん」

「僕達そんなに運が無かったのかな」

「明日、結構頑張らなきゃまずいかも」


 誰もやれなくてモヤモヤしたけど俺は眠りにつくしか無かった。大丈夫、まだいくらでも巻き返せると自分に言い聞かせて。



「昨日あたしのとこに人狼来てたけど扉開けれてなかったよ、これって騎士が守ってくれてたってこと?ありがと〜」


 朝食時、最初に喋り始めたのは奈緒だった。


「てか、騎士いたんだ。占いと人狼と市民だけの基本的なやつかと思ったよ」

と、暖。


「んね、でも良かった人が死ななくてさ」

「そうだね!騎士ナイスー……」


 玲央奈にかいるが答えるが、声の震えが隠せていない。無理に発言しなくてもいいのに。


「てか暖わざとらしーわ。やっぱ怪しい。普通わざわざ言い直さないって。」


 奈緒はどうしても暖を怪しみたいようだ。


「僕は違うからな」


 暖はキッと奈緒を睨んだ。



「どうする」


 朝食も終わって次は俺が海琉の部屋に入っていった。


「どうするって何をさ」

「今日の襲撃」

「そんなの僕に相談しなくたって純平は分かってるじゃないか」

「うん、まあ…」


 海琉も流石にだんだん荒んできているようだった。


「いや、ちょっと相談したいこともあったんだよ、次、玲央奈にしてもいいかって」


 海琉の顔色が変わったのがわかった。

 玲央奈。海琉が特に気に入ってそうにしてた奴だ。どうせこの空間内での友情や愛情なんてたかが知れているが。


「なんで…玲央奈ちゃんを」

「やっぱ嫌?」

「いや、そういう訳じゃないけど…とりあえず理由だけ聞くよ、純平がそう言うならなんか理由があるんだろ」

「うん、奈緒は騎士がまたとりあえずで守る可能性もある。占い師が名乗り出なかったらな。暖は残しときたい。ヘイトは俺達にはなるべく向けたくない。弘美も暖が怪しいって最初に言ってたから残しとこう。友里と康行はどっちでもいいけど、仲良さそうにしてた玲央奈を襲撃すればお前は守れる。」

「うん…うん」


 海琉は下を向いたまま話を聞いていた。


「そうだよね…所詮優しく話しかけてくれただけでさ。それだけで、たったそれだけで自分が勝てる道を捨てるなんて、自分が死ぬかもしれないのに」

「……」

「いいよ、でも僕、ちょっと取り乱すかもしれないけど」

「うん」


 俺は自分でも思った。薄情だなと。



 今日の会議では自分達がやられなきゃいいと思った。


「あたし純平とかも怪しいと思うんだ。」


 ああ。来たか。奈緒め。


「どうして?」

「だってあんたずっと黙ってるしさ、なんか企んでそうだよ?」


 仲良さそうにしていた宇佐美が死んだからか、彼女は焦っているようにも見えた。


「黙ってるってだけで疑うのはあまりにもじゃないか」

「やましいことがあるんでしょ、てか占い、そろそろ出た方がいいんじゃないの」


 弘美が占いが出ることを推奨する。


「確かに、議論が疑惑だけで進んでるのはまずいぞ」


 康行が言う。


「せーのって言ったら挙げて。せーの」


 まずい、人狼サイドは誰が騙るかまるで決めてないぞ。自分が出るかとも思ったが疑われはじめているので悩む。

 暖と奈緒が挙げた。純平は少し動いた肩を引っ込めた。対抗がいるなら出る幕はない。ややこしくするだけだ。


「あたしが占い師だよ」「僕が本物だ」

「じゃあ2人とも結果を言ってみて」

と、弘美。


「暖は白だった。だからあたしは純平じゃないかって、海琉とかも怪しいと思った。」


 海琉とのライン切りもしなきゃだと俺は思った。


「ふふ。奈緒、君が黒だ。僕の結果ではそう出た。」


 暖は狂人だろう。俺達は奈緒が人狼では無いということはわかりきっている。人狼が俺達だと知らない暖からすると万が一本物が潜伏していた場合など考えるとこれはかなり思い切った行動である。しかし彼は結果的には狂人として成果をあげてくれたのだ。


「じゃあ奈緒ってことか、暖は白なんだよな?」


 よく分かってなさそうな康行だ。


「違う!あたし目線で白なのにあたしに黒塗ってくるってことは狂人でしょこいつ、あたし本物だし」

「占う相手を間違ったね?」


 暖は不敵そうだ。


「どっちの可能性も有り得る。ちょっと待った方がいいよ。」


 弘美はいつも的確だ。


「私は奈緒をやっちゃってもいいと思ったけど…時間あんまりないし」

と、真実。


「あたしじゃないから!!」


 やや取り乱し気味な奈緒。

 場の状況もだんだん混乱してきた。


「そこはややこしいから一旦置いとくとしてさ、あんまり喋ってない人も怪しいと思うな」


 海琉の鶴の一声が響いた。必殺話してない人殺しだ。この場で話してない人と言えば……


「……え、私……?」


 全員の視線が川田友里に集まる。刻々と8時は近づく。人狼以外処刑出来たら何でもいい人狼。疑われていて一刻も早く自分以外の処刑者を決めたい市民。全てのヘイトが一斉に向いた。


「確かにね」


 真実が同意する。俺も頷く。このような進行は少々心苦しいが進めるにはこれしかなかったようだ。

 海琉はまっすぐに彼女を見ていた。自分なりに出来ることをしたんだろう。その瞳からは明確に殺意を感じた。


「私、確かに話せてなかったけど…違うから…信じて…」

「まあでも、処刑されても文句ないよね、意見がないってことはね」


 その奈緒の顔は今まで見た中で1番恐ろしいと思った。

 立ち上がって抵抗したが友里は今にも泣きそうだった。ごめん、俺達全員自分が生きるのに必死だから。


「8時になる!」


 暖が叫ぶ。みんな一斉に指を指す。その殆どは友里に向いていた。


「ああ…なんで……」


 今にも消え入りそうな声で友里が涙を流した。その表情はどこか最初から諦めていたようにも見えた。


 悲鳴を上げることもなく、友里は真っ赤になった。昨日ほどの衝撃はもうなかった。奇妙な落ち着きを取り戻していた。

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