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最終決戦

 2人の意見もろくに聞かず、俺は走って水槽の部屋に向かった。

 いざ、小さいモニターに向かった時、俺の手は止まった。

 誰にすればいい?

 ここには死んだ人たちのリストしかない。真実さんがいないってことは、まだ生きてる。まず真っ先に、連が思いついた。かなり頑張って探して見つけたが、そこに出ていた小さい写真に写っていたのは俺の知っている連ではなくて、黒髪黒目の普通そうな男子だった。ここで連を選んでもきっと俺との記憶は何一つ無いオリジナルの連になるんだろう。それでは意味が無い。

 幹人は?いや、自ら死を選んだのにまた生み出すなんて、1番いけないことなんじゃないのか。それはきっと、幹人への1番の冒涜だ。


 ついに最後に俺はある人を選んだ。

 ボタンを押してから、淡く光る水槽を見ていられなくて背を向けて座っていた。生き返った、といえば聞こえはいいが、無理やりこちらに呼び戻されたことを彼はどう思うだろうか。倫理に反した事をする俺を許してくれ。とずっとぐるぐる考えていた。


 こんなことするべきじゃなかったという後悔と、戻ったらあの少年がいる絶望と、本当に少年を倒して帰れるのかという不安に押し潰されそうになって、顔を覆い隠したその時、背中に誰かが触れた。


「純平」


 滲んできた涙も拭わぬまま、ゆっくりと振り返ると、


「海琉?」


 海琉は、最後に見たあの姿のまま、無傷でそこにいた。


「ねえ、何があったの?急に移動した……?」

「お前、どこまで記憶ある?」

「え?……そういえば、どうだったっけ、あれ、手痛くない」


 もし、死んだ時の記憶があったらあまり良くないだろう。俺からしたら想像もつかないけど、それを背負ってこれから生きていくのはあんまり良い事ではないことだけはわかる。

 こいつと最後まで生き残る、だとしたら、これだけは言っておこう。


「なあ、海琉、お前は実は1回死んだんだ。でもなんとかして、お前を、お前だけを生き返らせる事に成功した。この機械で」


 そう言ってから、バンとこの水槽を叩いた。

「あ……そう……だったんだ、でも、そうだよね、僕がそんな、最後まで生き残れるわけなかったもん。でも、わざわざ、僕のためにありがとうっ、純平と戦い抜けて、ほんとに良かったって思ってる、から……」


 そう言いながら海琉はしゃくりあげて泣き始めてしまった。俺は海琉を胸の方に押し込めてなんとか泣き止ませようとした。


「おい、泣いてんなよ、まだやること残ってんだぞ」


 暖が不満そうに腕を組みながら近づいてきた。愛子も一緒だ。気持ちは分かるが、あんまり海琉をいじめてやるなよとも思った。

「ちょっと考えたんだけど、あいつを倒すのに、僕が合図を出して4人で取り押さえるってのはどうだ」


 暖が自分の考えた作戦を説明し始めた。


「上手くいくかは正直怪しいけど、あの右手さえ封じこめれば割と勝機あると思うんだよな、取り押さえたら右手を動かせないようにしてタコ殴るとか……すればいい」


 正直暖の作戦は無理やりと言えば無理やりだが、特に道具も無く、他の方法も思いつかなかった。


「それにしてもさ……みんなほんとすごいや。僕なんか、第2ステージに行くことも叶わなかったのに、もう管理人を倒せるなんてさ」


 海琉がぼやき始めた。


「いや、海琉も十分頑張ってたよ、3人もクリアするなんてそれがまずそうそうない事なんだから」


 海琉を慰めながらさっきの部屋に戻るとかなり殺伐とした雰囲気になっていた。


「だから結局さ、ここで暮らしていく気もないんでしょ?もう無駄な抵抗しなくていいから」

「いや、もうちょっと待ってくれ……」


 さっきよりまた人数も減ってもう育ちのいい彼だけしかもういなかった。


「ほら、戻ってきたやついるし、もうお前との話は終わりだ」


 少年はそういって彼をとどめを刺してしまった。こういうシーンは何度も見たが、いつでも気分が悪い。彼はここまで場を繋いでくれていたのだ。俺たちのために。自分じゃない、他人の未来のために。


 そのまま後ろに倒れ込む彼。ゆっくりと血に染まっていく。結局、名前も聞かなかった。もしここでない所で会えていたなら、友達、いや、知り合いくらいにはなれたかな。


「ここにはさ、結局現実からはみ出して溢れた奴らばっかり集まるんだ。そんな現実から必要とされてないもの同士で殺し合う。当然だね! 僕にとっては滑稽で、最高に面白いよ」


 そう言って少年はケラケラと笑う。


「それは違う。まだその時が来てないだけだ。ちょっと学校に馴染めないとか、毎日が楽しくないとか、今の生活に不満があるだけで、俺達の価値を決めつけんなよ。まだ10何年しか生きてないのに、俺達は自分の事すらまだ分からないことだらけなのに。お前みたいな他人がそんなこと言える立場にないからな」


 声に出す気はなかった。でも、気づいたらもう響き渡るくらいに意見を言ってた。なんか、否定されたのが無性に許せなかった。


「いや、ほんと、その通りだよな」


 暖は同調すると共に、アイコンタクトと合図をそっと出した。俺達はその通りにじわじわと少年を中心に広がり始めた。

 俺は結局少年の真ん前くらいに立っていた。しかし、奴は指を向ければ一瞬で俺を殺せる。今口答えしてしまったのもあるし、ここは危ない位置だろう。

 だが、暖がこちらに近づいてきた。


「おい、そこ、変われ」

「暖、多分危ないぞここ」

「良いんだ。だいたい僕が言い始めた事だし。それに、さっき言ってたことすごい響いた。僕もそう思ってた。みんな落ちこぼれなんかじゃない。一人一人懸命に戦ってたじゃん。みんなここで死ぬには早すぎるんだよ。あとお前たち、僕が先輩なの忘れてるだろ? いいから変われ、な。」


 そう言って暖は俺を自分の今までいた方向へ追いやった。


「覚悟ができてないわけじゃないんだ」


 そう言った暖の唇は震えていた。


 これで俺達は4人で大体均等に少年を中心に囲む事ができた。といっても少年は壁を背に座っているから扇状に、だが。暖はそわそわしていたが少年の眼だけは真っ直ぐ捉えて離さなかった。少年が不思議そうに首を傾げ始めた。


 その時、暖は勢いよく腕を上げ、振り降ろした。それを見て俺達は一斉に少年に向かって走り始めた。


「お前らっ……!」


 それを見た少年は流石に逃げることは難しいと判断したのか、右手をそのまま真正面に上げた。1番に少年の元に辿り着いた愛子が彼の右手を取り押さえるよりも早く、その右手は真正面の暖を捉えて、撃った。

 暖がとっさに手を延ばしたのも虚しく、その手は少年の指を軽く引っ掻き、暖の身体はそのまま後ろへと吹き飛ばされた。


「暖……!!!!」


 俺は少年を全力で取り押さえる事が最優先ではあったが、暖を気にしないようにするなんて、とても出来なかった。暖は上を向くように倒れていて、じわじわと床に血が広がっていく。死んでしまったんだろう。少年の攻撃で生き残った者はいなかった。死んだ。そうか。もう許せなかった。許せるわけがない。殺し合いをしていた今までは自分が生きるために必死だったが、明確にこいつの手によって仲間が殺されたのを認識した瞬間、初めて強い怒りを覚えた。


「お前…ッ!」


 愛子が目に涙を溜めながらとんでもない力で少年の右手をへし折っている。関節がありえない方向に曲げられていて、俺達が殺される心配はもう無さそうだった。1番不気味なのは、一連の俺達の攻撃を受けても少年は痛がる素振りを全く見せなかった事だ。諦めたような顔で倒れているだけだった。


「僕、やっと死ぬんだな、お前らなんかに、素手で拘束されて」

「あんま喋んな、クソが」

「はは、酷い恨まれようだ。最後くらい、花持たせてくれよ。まあ確かに、いつかは終わると思ってたけど……」


 俺達は少年を拘束する力を1層強めた。


「あ、そうだ」


 しかし、少年は急にものすごい力で上体を起こし始めた。俺は咄嗟に掴んだが、ゆっくりと少年は起き上がっていく。

 すると、急に上の方で足音が聞こえた。

振り返って見ると、この部屋の上部にも金属製のギャラリーがついていて、そこに誰かいるようだった。

 暗闇の中で少しだけ眼鏡がキラリと反射したのが見えた。そうか、真実さんだ。あの靡く髪もきっとポニーテールだ。

 真実さんは大きなスナイパーライフルを構えていた。あの時のスナイパーは真実さんだったのか。

 真実さんはスッと手を上げて下ろした。そうか、伏せなきゃ。



 パァン



 俺が咄嗟に伏せて3秒ほど空けて、発砲音は鳴った。少年は後ろを向いていて気づいてすらなかった。しかし倒れ込んだ少年を見ると弾は綺麗に額を貫いていた。


「撃たれた!?」

「死んでる……?」


 2人が狼狽えている中、もう一度ギャラリーを見上げても、もう


 真実さんは見えなくなっていた。暗闇に隠れてしまったのか。



「なあ」


 心臓が止まりそうになった。だってこの声は、今死んだと思われたばかりの少年から聞こえたからだ。撃たれたのが嘘かのようにギョロリと目を開けて俺達を見つめている。


「どういつか終わるなら、これは必然だったんだろうな、僕はここで終われて良かっ「これ以上言わせるかよ!!!」


 海琉が遮るように叫んだ。そしておもむろに少年に愛子が近づいていく。


グシャッ


 愛子は少年の頭の上で片脚を上げ、そのままひねりを加えながら落とした。少年の頭はヒール付きローファーによっていとも簡単に潰されたのだ。


「……ありがとう」

「うん」

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