表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
皇女リリィの結婚物語  作者: 緑みどり
和平の宴
87/123

スキャンダルの偽装

「あなたを傷つけるつもりはない。こうするしかなかったんだ」

 レネーは寝室の扉に鍵をかけると、リリィに向き直ってそう言った。冷静な口調だ。


 リリィは朦朧とした頭で、レネーを見た。寝台に寝かせられている。手足は縛られていなかった。服装にも乱れた様子はない。


 レネーはフランクの反対を押し切って結婚するために、リリィをさらってきたのだ。とはいえ彼も将来妻になる女性に乱暴を働くつもりはなかった。皇女とレネーが一夜を共にした信じさせ、エドマンドから妻を奪う計画である。


「怖いわ。帰らせて」

 リリィは恐怖で震えながら言った。


「それはできない。あなたを妻にしなければ。僕の愛と人生のためだ」

 レネーがそう言って、グラスの赤ワインを飲み干す。


 王子は蒼白な顔をしていた。瞳が奇妙な具合に光っている。


「愛ですって。人生ですって。よくも父の家で、こんな汚らわしいことをできたわね」

 リリィが怒って言った。


「あなたにも他に道はない。もう手遅れだ。噂が広がれば、あなたに名誉はない。僕と結婚するしかないんだ」

 レネーがリリィの手首をつかんで言う。


「父や兄があなたを殺すわ」

 皇女が低い声でおどしつけた。


「皇帝もあなたと僕との結婚を願っていた。どの父親がエドマンドやギーのような男に娘をやりたがる?リリィ、聞くんだ。僕は今日ここであなたに乱暴を加えたりしない。夜明けまで、城の使用人や兄が来るまで一緒の部屋にいるだけでいいんだ。結婚したら不自由はさせない。エドマンドにも危害を加えない。これはあなただって望んでいたことだ。

 一目見ただけでわかった。あなたはここでは不幸な娘だ。僕は不幸な運命から救うことができる。だいたい、あなたが先に求婚し、あなたがハンカチを渡してきた」


 リリィは泣きそうだった。メアリーのことを思う。彼女が今リリィがどんな目に遭っているか知っていたなら!メアリーならどんな時でもリリィを助け出してくれるだろう。


「じゃあ言うわ。あなたなんか愛していない。大っ嫌いよ」

 皇女がありったけの声で叫んだ。


 レネーの蒼白な顔がますます青くなる。だが、彼は激情に駆られて逆上することはなかった。まったく冷静に、顔にはなんの感情もたたえずに、リリィをベッドに押し倒したのだ。


 軽い悲鳴をあげる。レネーの蒼白な顔が近づいてくる。目を閉じた。うなじに冷たく、やわらかい唇があたる。


 リリィは息を押し殺し、待っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ